種類株式の設計

ベンチャーキャピタルの方へ

ベンチャー企業への投資にあたっては、普通株式ではなく、種類株式により投資を実行する例が増えてきています。

種類株式の発行目的はいろいろありますが、主な目的としては、

①清算時のリスクヘッジ(残余財産の分配に関する優先権)
②稀薄化防止対策(取得請求権、取得条項における稀薄化防止の調整条項)
③特定事項についての拒否権(種類株主総会決議事項)
④役員選任権の確保(株式の種類ごとの役員選任権)
⑤優先配当

などがあります。

種類株式の設計については、取得請求権、取得条項における稀薄化防止の調整条項について複雑な計算式等を設定するものや、その後のファイナンスや決算の状況で適用計算式を変えるものなど、複雑な設計のものもあります。また、米国での投資手法にならって、Pay to Play条項やDeemed Liquidationの条項などを盛り込むことを検討することもあります。

特殊な条項については、

①会社法上有効であるかという点のみならず、
②設計に矛盾が生じていないか、抜けている想定外のケースがないかというビジネス的な観点
③法務局が登記を受け付けるか

という実務的な観点から慎重に検討する必要があります。

AZXでは、典型的な種類株式から、特殊な条項の設計まで数多くの種類株式の発行をサポートしてきた実績があります。具体的には、定款変更案の作成、種類株式の設計に関する契約交渉、特殊な条項についての法務局との折衝、種類株式の発行手続についての必要書類の作成及び登記手続などを行っております。

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  • 優先株式から普通株式に転換する際の転換比率について、希釈化防止のための調整条項とは、どのようなものなのでしょうか。
    転換比率については、当初、1:1や1:2となるよう定めることが通常ですが、実際に転換をするまでに、低額の払込金額での普通株式の発行や低額の行使価額で普通株式を取得できる新株予約権等が発行されてしまった場合、1株当たりの普通株式の価値が低下するため、当初の転換比率のままで普通株式に転換してしまうと、当初想定していた転換後の普通株式の価値を維持できないことになってしまいます。そこで、このような希釈化を避けるために、転換比率を変更できるよう予め調整式を定めておくことになります。代表的な調整式としては、フルラチェット方式とコンバージョンプライス方式があります。一般的に、転換比率の基準となる調整前の優先株式の取得価額を下回る払込金額での普通株式の発行等がある場合や当該取得価額を下回る金額での普通株式の取得を可能とする潜在株式の発行等がある場合に、その発行数量にかかわらず、当該下回る金額を調整後の優先株式の取得価額とする方式をフルラチェット方式といい、調整前の取得価額及び当該新規発行の株式の価額を、新規発行数量も考慮した一定の計算式に基づき加重平均して算出した値を調整後の優先株式の取得価額とする方式をコンバージョンプライス方式といいます。
  • 種類株式での拒否権と投資契約で定めた拒否権の違いは何でしょうか。
    種類株式での拒否権とは、一定の事項について種類株主総会の決議を要する旨を定款に定めることによって、当該事項の実施に種類株主の一定多数の同意が必要になること(その裏返しとしての種類株主の拒否権という意味)をいいます(会社法第108条第1項第8号)。この権利は会社法上の権利であるため、かかる種類株主総会の決議を経ずになされた会社の行為は原則として無効となります。他方、投資契約で定めた拒否権は、当該投資契約の当事者間での約束に過ぎないため、拒否権が無視された場合であっても、契約違反にとどまり、当該拒否権を無視してなされた会社の行為の効力には直接影響を及ぼさないことになります。
  • 優先株式の拒否権は、どのような事項でも対象とすることができるのでしょうか。
    優先株式の拒否権の対象とすることができる事項については、その内容、種類といった面からの制限は特にありません。但し、前提として、拒否権の対象となる事項は株主総会又は取締役会(取締役会設置会社の場合)の決議事項である必要があります(会社法第108条第1項第8号)。したがって、拒否権付の優先株式を発行する場合、拒否権の対象事項に株主総会や取締役会の決議事項でないものが含まれないか確認し、含まれる場合には定款変更により当該事項を予め取締役会の決議事項にしておくなどの対応をとる必要があります。
  • 取得請求権付の優先株式と取得条項付の優先株式は何が違うのでしょうか。
    取得請求権付の優先株式とは、当該優先株式について、株主が会社に対してその取得を請求することができる権利のある優先株式をいいます(会社法第108条第1項第5号)。他方、取得条項付の優先株式とは、当該優先株式について、会社が一定の事由が生じたことを条件としてこれを取得することができるものをいいます(会社法第108条第1項第6号)。両者は、いずれも会社が優先株式を取得することになるという意味で効果を共通にするものですが、取得請求権は株主の権利であることに対し、取得条項は会社による強制的な取得であって株主の権利ではないことに違いがあります。
  • 優先株式の取得請求権は、会社の財産状況と無関係に行使できるのでしょうか。
    取得請求権を行使した場合の対価の内容が普通株式の場合、優先株式の取得請求権について特段の制限はありません。しかし、対価の内容が金銭等の会社法第107条第2項第2号ロからホまでに規定する財産である場合、当該財産の帳簿価額が、当該取得請求の日における分配可能額を超えている場合は、取得請求権を行使することができません(会社法第166条第1項但書)。したがって、取得請求権があれば必ず全額行使して対価を取得できるというものではないことに注意が必要です。
  • みなし清算条項とは、どのような条項なのでしょうか。
    合併、株式交換等、支配権の異動に伴って株主に交付される財産について残余財産の優先分配条項と実質的に同じ優先順位に従って分配する処理を認める条項のことをいいます。その主な目的は、優先株式の優先残余財産分配権と同じ効果をM&A等の解散以外のExitの場合にも実質的に確保する点にあります。なお、みなし清算条項を定款に定める例もありますが、定款で定めた対価と異なる内容の合併等を行うと、定款違反として当該合併等が無効となる可能性も理論上はあるため、株主間での合意書によりみなし清算条項を定めておくケースも多いと考えられます。
  • ペイ・トゥー・プレイ(Pay to Play)条項とは、どのような条項なのでしょうか。
    主にダウンラウンドでの投資において既存の優先株式保有者が追加投資に参加しない場合に、当該優先株式保有者の希釈化防止条項の発動を停止したり、優先株式を普通株式に強制転換する条件を付す条項のことをいいます。その主な目的は、ダウンラウンドでの追加投資において、追加投資に応じない既存投資家の優先権を剥奪する条項を設けておくことにより、既存投資家と新規投資家の利害調整を行う点にあります。なお、ペイ・トゥー・プレイ(Pay to Play)条項はその発動前に予め種類株式の内容等として定款に定めておく必要があります。

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