誹謗中傷トラブルへの対応策!

投稿日:2015/03/20

ネットいじめimg_up_kt-2はじめまして、こんにちは。

AZXブログ初登場の弁護士の小鷹です。

まずは、簡単な自己紹介から。
好きなことは、お酒を飲むこと、サッカーを見ること、他には、ハリネズミ(ネズです!)を飼っています。1389594388217

近年、弁護士の人数は増加傾向にありますが、ハリネズミを飼っている弁護士はなかなかいないのではないでしょうか。

そういうわけで、ハリネズミの弁護士と覚えていただければと思います!

さて、近年、インターネット利用者が増加していくなかで、いろいろな書き込みがなされるケースが増えてきています。
その中には、個人のプライバシーや会社の信用を害するようなものも見受けられます。
インターネット上の情報は多くの人が閲覧するものです。
そのため、あっという間に被害が拡大してしまう可能性があります。
そこで、そのような書き込みを発見した場合、自分や会社を守るため、すみやかに適切な誹謗中傷対策を行うことが重要となります。

そこで、今回は、インターネット上の誹謗中傷への対応について説明したいと思います。

Aサイトに会社の信用を毀損する記事が記載されてしまったとします。

この場合、まずはその記事の削除を求めたいですよね。
さらに可能であれば、投稿者を特定して、その投稿者に損害賠償を求める、悪質な場合には、刑事告訴をするということも考えられるでしょう。
では、どうすれば記事の削除や投稿者の特定をすることができるのでしょうか。

PCやその他の端末から投稿を行う場合、携帯電話各社などのインターネット接続会社(以下では「アクセスプロバイダ」といいます。)を経由して、Aサイトのサーバーにアクセスすることになります。PC→アクセスプロバイダ→Aサイトサーバーという経緯をたどっています。
アクセスプロバイダは、PC等の端末にIPアドレス(コンピュータや通信機器1台1台に割り振られた識別番号です)を割り当てており、アクセスプロバイダはどの契約者に、どのIPアドレスを割り当てたのか記録しています。
書き込みが行われたサイトのサーバーには、投稿をした端末に割り振られたIPアドレスなどの記録が残っていますので、サーバーに残っているIPアドレスとアクセスプロバイダの記録を照らし合わせることにより、どの契約者が投稿を行ったのか特定できることになります。
Aサイト管理者(IPアドレスの確認)→アクセスプロバイダ(そのIPアドレスを持っている契約者はだれか)という順をたどることにより、だれが投稿を行ったのか確認することができるのです。

では、どのような場合に、記事の削除や投稿者に関する情報の開示を求めることができるのでしょうか。
以下では、削除の場合と投稿者に関する情報の開示を求める場合とに分けて、見ていきたいと思います。

1 削除請求の要件および方法

(1) 削除請求の要件

① 削除請求の要件

記事の削除を求めるためには、まず、情報の発信(その記事)によって、名誉権やプライバシー権などの何らかの権利が侵害されていることが必要となります。

② プロバイダ責任制限法との関係

さらに、削除請求を行うにあたっては、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(以下「プロバイダ責任制限法」といいます。)を意識する必要があります。
プロバイダ責任制限法とは、情報の流通によって権利の侵害があった場合における、サーバーの管理・運営者などの損害賠償責任を制限し、また、発信者情報の開示を請求する権利について定めた法律です。
今回のように、インターネット上に掲載された記事の削除や投稿者に関する情報の開示を求める際に、まさに問題となる法律です。

では、削除請求に関しては、どのような規定があるのでしょうか。

上で説明したとおり、プロバイダ責任制限法は、サーバーの管理・運営者などの特定電気通信役務提供者の損害賠償責任を制限することを目的の一つとしています(プロバイダ責任制限法第1条)。
このような目的のもと、プロバイダ責任制限法は、サーバーの管理者などは、その管理するサイト上に記事が掲載されていたとしても原則として責任を負わないものとし、ただ、例外的に以下のいずれかの要件を満たす場合に、責任を負う形にしています(プロバイダ責任制限法第3条第1項各号)。
ア 他人の権利が侵害されていることを知っていたとき
イ 情報の流通を知っていた場合で、それによって他人の権利が侵害されていることを知ることができたと認めるに足りる相当の理由があるとき

このように、プロバイダ責任制限法はサーバー管理者の責任を制限しています。
したがって、実際に削除を求める場合には、上記アまたはイを踏まえて、「削除しないならば、私(請求者)に対して責任を負ってしまいますよ」ということを主張して、サーバー管理者に適切な対応を促していく必要があります。

(2) 削除請求の方法

では、実際にどのようにすれば、記事の削除を求めることができるのでしょうか。
通常は、まずは、サイトの管理者に対して記事の削除を求めます(なお、投稿者がだれであるか判明しているようでしたら、その投稿者に直接削除を求めることも考えられます)。
記事の削除を求める方法は大きく分けて次の2つです。

① 任意請求

任意請求とは、文字通り、「削除してください」というお願いです。
任意請求は、次の②の方法と違って裁判(仮処分)を起こす必要がありませんので、コストや手間がそこまでかかりません。
サイトを良く見ると、お問い合わせフォームが設置されていたり、請求の方法が指示されていたりすることがあります。
したがって、まずは落ち着いてサイトを確認し、指定の方法に従って削除などを求めてみるのが良いでしょう。
ただし、あくまでもお願いベースのものとなりますので、請求に応じてくれるかどうかは不確実です。

② 裁判(仮処分)

任意請求を行ってみたけれども削除に応じてくれない場合も少なくありません。
そもそも任意請求には応じないというサイトも少なからず存在します。
このような場合には、削除を求める裁判を提起することになります。
(なお、この際にとるべき裁判は「仮処分」と呼ばれる、厳密には通常の裁判とは異なるものとなります。)。
裁判を起こすとなると、それなりにしっかりと書面を書いて、証拠を提出して・・・ということが必要となります。ですので、①に比べると手間がかかりますし、一度まとまったお金を裁判所におさめたりする必要もあります。
もっとも、裁判所が「これは権利侵害である」と判断した場合には、基本的にはサイト管理者もその判断に従った対応をとってくれますので、①任意請求に比べて実効性は高いといえるでしょう。

2 発信者情報開示請求の要件および方法

ここまで、削除の要件やその方法についてみてきました。
ただ、このようなインターネット上の投稿については、同一人物により、繰り返し書き込みがなされるケースが少なくありません。
この場合、削除を求めるだけでは、投稿を止めることはできません。
また、企業として、投稿者に対して、損害賠償請求や刑事告訴などの厳正な対応をとる必要もあるでしょう。
そこで、以下では、投稿者を特定するための、発信者情報開示請求の要件や方法についてみていきます。

(1) 発信者情報開示請求の要件

投稿者に関する情報の開示を求める要件については、プロバイダ責任制限法第4条に規定されています。プロバイダ責任制限法のもと、開示の対象となっている発信者情報には、投稿者の氏名、住所、メールアドレス、IPアドレスやタイムスタンプ(投稿がされた日時・日付・時刻などです)などがあります。そして、以下の要件を満たした場合には、サイトの管理者やアクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示を求めることが認められています。

① その情報の流通によって請求者の権利が侵害されたことが明らかであり、
② 発信者情報の開示を受けることについて正当な理由があるとき(ここでいう正当な理由とは、投稿者に対して損害賠償請求や刑事告訴を行うなどの法律上認められた目的があることを意味します。)

Aサイトの管理者やアクセスプロバイダに対して、投稿者に関する情報の開示を求める場合には、上記の要件にあたることを主張していく必要があります。

(2) 発信者情報開示請求の方法

では、実際にどのようにすれば、発信者情報の開示を求めることができるのでしょうか。
先ほど、Aサイト管理者(IPアドレスの確認)→アクセスプロバイダ(そのIPアドレスを持っている契約者はだれか)という順をたどることにより、だれが投稿を行ったのか確認できると説明しました。
そこで、この順序にしたがい、①Aサイト管理者に対してとるべき手段と②アクセスプロバイダに対してとるべき手段とに分けて見ていきましょう。

① サイト管理者に対してとるべき手段

まずは、サイト管理者に対して、IPアドレス等の開示を請求することになります。
IPアドレス等の開示の請求の方法も、削除の場合と同様大きく分けて次の2つです。

ア 任意請求

任意請求とは、「投稿者のIPアドレスを教えてください」というお願いです。
任意請求は、次の②の方法と違って裁判(仮処分)を起こす必要がありませんので、コストや手間がそこまでかかりません。
ただし、あくまでもお願いベースのものとなりますので、請求に応じてくれるかどうかは不確実です。実際のところ、削除には応じてくれるケースはありますが、発信者情報を開示してくれる例はあまりありません。
また、請求を受けたサイト管理者は、原則として、投稿者に対して情報開示の要請が来ている旨を伝え、この点に関する投稿者の意見を確認したうえで、請求者に対して開示の可否に関する正式な回答を行うことになっています(プロバイダ責任制限法第4条第2項)。
ですので、正式な回答を待っているよりは、最初から②の裁判(仮処分)を起こしてしまった方が手っ取り早いともいえます。
したがいまして、発信者情報の開示を求める場合には、最初から②の裁判(仮処分)を起こした方が良いケースが多いのではないかと思います。

イ 裁判(仮処分)

IPアドレスの開示を求める裁判(仮処分)の特徴は、削除請求の場合と同様に、手間や費用はかかってしまいますが、任意請求に比べて実効性が高い点にあります。

② アクセスプロバイダに対してとるべき手段

サイト管理者からIPアドレスを取得したのであれば、そこから投稿者の住所や氏名を特定するため、アクセスプロバイダに対して、発信者情報の開示請求を行うことになります。
具体的には、投稿者がどのアクセスプロバイダを使用したのかを特定したうえで(IPアドレスをwhois検索します)、発信者情報開示訴訟を提起することになります。

と、その前に、気を付けなければならないことがあります。
それは、アクセスプロバイダのもとに残る記録(ログ)は約3か月程度しか保存されないということです(この期間はアクセスプロバイダによって異なります)。
そうすると、発信者情報開示訴訟の判決の結果を悠長に待っていては、そのログが消えてしまい、結局、投稿者を特定できないということにもなりかねません。
そのため、発信者情報開示訴訟の前に、アクセスプロバイダに対して、「記録を消さないでください」というお願いをすることになります。基本は、お願いベースでの保存の協力要請です。これにより、保存に応じてくれることが多いのですが、アクセスプロバイダによっては任意のお願いでは応じてくれないところもあります。この場合には、発信者情報消去禁止の仮処分、つまり、裁判所を使って記録を消さないよう求めることになります。

これらの方法により記録が保存されましたら、発信者情報開示訴訟を提起することになります。
勝訴判決が出れば、契約者(投稿者)の氏名や住所などが開示されることになります。

3 投稿者に対してとるべき手段

以上の手続により投稿者が特定できましたら、その投稿者に対して、損害賠償を請求する、刑事告訴を行う、といったことが考えられます。

以上が、記事の削除や投稿者の特定を求める手段の概要となります。

執筆者によるコメント

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AZX Professionals Group
AZX総合法律事務所
弁護士 小鷹 龍哉

いかがだったでしょうか。
複雑でややこしいと思われるかもしれません。
けれども、削除だけを求めるのであれば、サイトの指示に従うことによって削除を実現できることがあります。ですので、まずは落ち着いて、サイト全体を確認するようにしましょう。
一方、投稿者の特定まで行うとなると、スピード勝負のところがあります(早くしないと、アクセスプロバイダが持っているログがなくなってしまうからです)。
また、サイトやアクセスプロバイダによって対応が異なることがありますので、それに応じてこちらがとるべき手段も変わってきます。
ですので、少しでも疑問点、ご不明な点等ありましたら、遠慮なく、弁護士などの専門家にお問い合わせください。


投稿日:2015/03/20