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自治体への営業が変わる?スタートアップが知っておきたい「4号随契」

自治体によるスタートアップの技術・サービスの活用を後押しするため、2026年8月、総務省・経済産業省から自治体に対して、「4号随契」の積極的な活用を促す「地方自治法施行令第167条の2第1項第4号に基づく随意契約によるスタートアップからの調達の拡大について(通知)」(以下「本件通知」)が発出されました。

「4号随契」は、自治体が競争入札によらずに新しい商品・サービスを調達できる制度として元々存在していましたが、本件通知は、「4号随契」を活用しやすくするための考え方を整理したもので、自治体営業を進めるスタートアップにとって重要な動きといえます。

本稿では、「4号随契」の概要と、スタートアップが活用する際のポイントを紹介します。

1.「4号随契」とは何か

(1)自治体の「随意契約」の一つ

自治体が契約を締結する場合、一般競争入札の方法をとることが原則とされています[1]。他方で、地方自治法は、政令で定める場合には、競争入札によらずに契約の相手方を選ぶ「随意契約」を認めています(同法第234条第2項)。

この「随意契約」にもいくつかの類型がありますが(地方自治法施行令第167条の2第1項各号)、その一つが、同項4号に定められた「4号随契」です。新商品の生産や新しい役務の提供によって新たな事業分野の開拓を図る事業者について、自治体がその新規性などを審査して認定し、その事業者から新商品・新サービスを随意契約で調達できるようにする制度です[2]。

既存の市場にはない商品やサービスを提供するスタートアップとは、もともと親和性の高い制度といえます。

では、今までも多くのスタートアップが4号随契を活用してきたのかというと、実はそんなことはなく、総務省の調査[3]によれば、2023年4月から2025年7月までに4号随契による契約実績があったのは、調査対象となった1788自治体のうち30自治体(2%)に留まりました[4]。

(2)今回の通知で何が変わったのか

4号随契が十分に活用されていない状況を受けて、国から自治体に対して発出されたのが本件通知です[5]。

本件通知によって、4号随契の制度そのものが変わったわけでは全くありません(※)。しかし、4号随契を活用するために必要となる認定手続を簡略化できることが明確化された点は、スタートアップにとって要注目です。

※スタートアップが4号随契を活用するために、自治体に実施計画を提出し、認定を受ける必要がある点や、新役務に係る実施計画の確認に当たっては、原則として2人以上の学識経験者から意見を聴く必要があるという点には、変更はありません。

 

具体的には、本件通知では、認定手続の簡略化や、自治体間での横展開を進めやすくするための考え方が、以下のように示されています。

①J-Startup選定企業についての手続の簡略化

経済産業省のJ-Startupに選定された企業については、本来学識経験者への意見聴取が必要となる場合でも、J-Startupの選定過程における審査をもってこれに代えることができます。

②他の自治体での認定実績を活用する方法の明確化

他の自治体がすでに実施計画を確認し、事業者を認定している場合には、その実施計画の写しを活用して認定のための確認を行い、学識経験者への意見聴取を省略することができます。

③広域調達・自治体間での横展開

本件通知では、自治体が4号随契で調達した新商品等を他自治体と共有し、都道府県が市町村等との広域的な調達の仕組みを積極的に検討することも求められています。

大きくまとめ直すと、スタートアップにとっては、一つの自治体で認定を受けた実績を別の自治体への営業にもつなげやすくなり、自治体向けのビジネスを横展開しやすくなるというメリットが期待できます。

2.スタートアップとしての留意点

これまでの運用では、自治体の担当者にとっても、4号随契を選ぶにはその必要性を庁内で説明しなくてはならず、結局は無難に一般的な調達方法が選ばれやすい面がありましたが、本件通知により、4号随契が活用されやすくなる傾向は期待できます。

しかし、4号随契を活用できるとしても、スタートアップの自治体営業における課題をすべて解決するものではなく、例えば以下の点について、留意が必要です。

(1)最初の認定のハードルは残る

4号随契を他の自治体に横展開するためには、最初の自治体で認定を受ける必要があります。認定に当たっては、実施計画を提出し、新役務については原則として学識経験者の意見聴取を経る必要があるため、最初の一歩には相応のハードルがあります。

※J-Startup選定企業であれば、新役務について必要となる意見聴取を省略できますが、J-Startupへの選定自体も容易ではありません(現行(2026年9月時点)のJ-Startupは、VCや大企業のイノベーション担当者等による推薦をもとに選定される制度で、スタートアップだけの事情で自由に応募できるものではありません。)。

そのため、特にシード・アーリー期のスタートアップでは、どの自治体で最初の認定を受けるかが重要です[6]。自社の商品・サービスへの理解や導入ニーズがある自治体を見極め、最初の実績を作ることが、その後の横展開の起点になります。

(2)横展開にはスピードが必要

4号随契は、対象となる商品・サービスが「新しい」ことが前提なので、競合の参入や技術の普及によって「新しさ」を失えば横展開をかけにくくなる可能性があります。最初の認定を起点に横展開を狙うのであれば、商品・サービスの新規性を説明しやすいうちに、次の自治体への営業を進めることが重要です。

(3)予算確保と契約条件の調整は別途必要

4号随契を利用できても、自治体に予算がなければ導入には至りません。自治体には予算編成のサイクルがあるため、導入時期から逆算して営業する必要があります。

また、契約条件の調整も別途必要です。自治体側が用意した契約書が使われることも多く、責任制限、知的財産権、個人情報の取扱いなどについて、スタートアップ側の標準条件がそのまま採用されるとは限りません。

3.4号随契を自治体営業の足掛かりに

本件通知により、4号随契を活用して自治体へのサービス導入のきっかけをつかむスタートアップは、今後増えていくことが期待されます。もっとも、最初の認定を得るための調整や、その実績を継続的な事業展開につなげるための工夫は欠かせません。

自治体へのサービス提供や4号随契の活用に関するご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。

【脚注】

[1] 地方自治法234条1項、2項。同条1項は、売買、貸借、請負その他の契約について、一般競争入札、指名競争入札、随意契約又はせり売りの方法により締結するものとし、同条2項は、指名競争入札、随意契約又はせり売りについて、政令で定める場合に該当するときに限りこれらの方法によることができる旨を定めています。

[2] 地方自治法施行令167条の2第1項4号。新商品の生産又は新役務の提供により新たな事業分野の開拓を図る者として自治体の長の認定を受けた者から、自治体の規則で定める手続により、新商品を買い入れ若しくは借り入れ、又は新役務の提供を受ける契約について、随意契約によることが認められています。認定については、地方自治法施行規則12条の3において、実施計画の提出・確認等の手続が定められています。

[3] 「地⽅⾃治法施⾏令第167条の2第1項第4号に基づく随意契約実績に関する調査」令和8年8⽉総務省⾃治⾏政局⾏政課

[4] 契約実績は191件あり、そのうちスタートアップからの調達は80件でした。

[5] 本件通知は、政府が進めてきたスタートアップからの公共調達拡大の流れに位置付けられます。2022年の「スタートアップ育成5か年計画」では、政府・自治体によるスタートアップからの公共調達を促進する方針が示されました。その後、内閣官房のデジタル行財政改革会議の下で、自治体における4号随契の活用を含む具体策の検討が進められてきました。さらに、2026年7月21日に閣議決定された「日本成長戦略」では、4号随契について、調達実態を毎年度調査するとともに、その積極的な活用を支援し、優れた調達事例の自治体間での横展開を進める方針が明記されました。本件通知は、こうした政策の流れを受けて、その翌月に総務省・経済産業省から自治体に対して発出されたものです。

[6] 東京都で実施されている「ファーストカスタマー・アライアンス」は、まさに4号随契の認定情報の相互活用を目指した取組みです。


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執筆者
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我有 隆司
Gau, Ryuji
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