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芸能人・ライバーとの契約の注意点!公取委「取引の適正化に関する指針」の重要ポイントを弁護士が解説

弁護士の貝原です。

前回の「公取委が指摘!競業避止義務の問題点と今後の対応」では、従来からマネジメント契約など、芸能人やライバーとの契約で定められてきた競業避止義務について、原則として規定しないことが求められており、今後マネジメント契約における競業避止義務の取扱いにはより慎重にならなければならない状況であることを見てきました。

そこで、今回は昨年9月に内閣官房及び公正取引委員会から公表された「実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針」(以下「本件指針」といいます。)について、スタートアップとして特に注意すべきポイントを解説したいと思います。

1.「期間延長請求権」の行使範囲とは?

マネジメント契約などにおいて、ライバーなどのタレントが所属事務所の退所を希望した場合、一定回数や一定期間、事務所側から契約の延長を求めることができる規定を定めることがあります(期間延長請求権)。
このような期間延長請求権について、本件指針では以下の通りまとめられています。

芸能事務所が採るべき行動

  • 期間延長請求権(芸能事務所からの請求により契約を更新できる権利)を契約上規定する場合には、育成等費用を合理的な範囲で回収し、かつ、合理的な範囲で収益の確保の必要性があると認められる場合において、1回に限る等合理的な範囲で行使できるものとし、契約締結の段階(又は更新の段階)において、実演家に対して、その必要性や行使できる範囲も含め、十分に説明し、実演家と協議すること
  • 期間延長請求権を行使する際は、金銭的補償による代替を検討した上で、合理的な範囲で育成等費用の未回収分を回収し、かつ、合理的な範囲で収益を確保するために必要な期間とし、その理由について実演家に対して十分に説明すること

【出典】実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針 9頁

期間延長請求権については定めること自体は可能であるものの、本件指針においても「実演家が被る不利益の程度は相当に大きい」と指摘されていることもあり、内容がかなり限定されています。特に、「育成等費用を合理的な範囲で回収し、かつ、合理的な範囲で収益の確保の必要性があると認められる場合において、1回に限る等合理的な範囲で行使できるものとし」と定められていることから、投下資本(育成等費用)の回収後の期間延長請求権の行使については、独占禁止法上の観点から問題となり得る行為となるため、相当慎重になる必要があると言えます。

2.退所後の動画・音声の利用許諾|成果物帰属に関する注意点

マネジメント契約などにおいて、ライバーなどのタレントが成果物を創作した場合、その権利は所属事務所に帰属すると定められていることが多いですが、本件指針では成果物のライセンスについて以下の通りまとめられています。

芸能事務所が採るべき行動

  • 放送事業者等の取引先等から利用の申出があった場合には、各種権利等の利用を許諾しないことに合理的な理由がなければ、各種権利等の利用を許諾すること
  • 各種権利等の利用を許諾しない場合にはその理由について許諾を求めた者に十分説明すること

【出典】実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針 19頁

成果物を所属事務所に帰属させること自体は問題ないものの、取引先等から所属事務所に対して、成果物の利用の申出があった場合には、基本的に許諾するべきであるとされています。そのため、ライバーなどのタレントが以前に出演した動画や音声などの成果物について、当該タレントの退所後であっても、許諾しないことの合理的な理由がなければ利用を許諾すべきであるとされています。

このような成果物の利用に関する申出を受けた場合は、独占禁止法上の観点から問題とならないよう本件指針に沿って検討する必要があると言えます。

3.芸名・グループ名の権利帰属と使用制限における注意点

マネジメント契約などにおいて、ライバーなどのタレントの芸名やグループ名の権利を所属事務所に帰属すると定められていることが多いですが、本件指針では芸名について以下の通りまとめられています。

芸能事務所が採るべき行動

  • 芸名又はグループ名(以下「芸名等」という。)に関する権利を芸能事務所に帰属させる場合には、あらかじめ契約上に明確に規定した上で、実演家に対して十分に説明し、実演家と協議すること
  • 合理的な理由が無い限り芸名等の使用の制限を行わず、制限する場合においてもその制限の方法は合理的な範囲の使用料の支払等の代替的な手段も含めて合理的なものとし、その理由について実演家に十分に説明し、実演家と協議すること

【出典】実演家等と芸能事務所、放送事業者等及びレコード会社との取引の適正化に関する指針 20-21頁

芸名を事務所側に帰属させること自体は可能であるものの、合理的な理由無く芸名等の使用制限を行うべきではないとされています。

また、本名を芸名とする場合や入所前から使用していた芸名を使用する場合には、「一般的には、芸能事務所にその「芸名」に関する権利が帰属するとはされていない」(本件指針21頁)とされており、これらが事務所側に帰属する場合は、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となると考えられると指摘されていることにも注意が必要です。

4.まとめ

以上、本件指針の注意すべきポイントについて、いかがでしたでしょうか。いずれもマネジメント契約など、タレントとの契約では一定見かける条項について、公正取引委員会から独占禁止法上問題となり得る点が指摘されており、今後の契約実務にも影響を与えるものであると考えます。

AZXではマネジメント契約等についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

次回はマネジメント契約に関する違約金やSNSに関する規定等についても解説したいと思います。

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執筆者
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貝原 怜太
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