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【テック系スタートアップ必見】防衛省の宇宙作戦集団とは?公共調達の留意点

「新法からビジネスを考える」のシリーズでは、新たなルールの動向を分析し、そこからどのようなビジネスチャンスが生まれ得るのかを実験的に考察しています。

今回のテーマは、直接的には防衛省設置法の改正です。ただ、今回の法改正で本当に面白いのは、その背景にある日本の宇宙領域における防衛政策の転換です。防衛分野は、多くのスタートアップにとって新たな市場になり得ます。

本記事では、その可能性と、市場に参入する際に知っておきたい実務上のポイントについて、考えてみたいと思います。

1.データ利活用制度の法制化

今回の防衛省設置法等の改正[1]では、航空自衛隊が「航空宇宙自衛隊」に改編されるとともに、宇宙領域の専門部隊である「宇宙作戦集団」が新編されることになりました。

宇宙領域での防衛政策には長い積み重ねがあり、現時点でも宇宙作戦団は存在しているため、上記の法改正だけで宇宙領域の防衛政策で大きく舵を切られたと考えるのは大げさに見えるかもしれません。それでも、防衛省設置法上で初めて「宇宙作戦集団」が明記されたことは、今まで以上に、宇宙領域の防衛政策に行政資源が充てられる素地が整ったといえそうです。

「宇宙作戦集団」が具体的に何をするのかについて、「日本の優れた技術を活用しつつ、宇宙における防衛能力を強化する具体的な取組についても、三文書[2]の改定に向け、議論をしっかりと積み上げ」るという小泉防衛大臣の答弁[3]をふまえると、これからの政府の公表情報を待つ段階ではあります。

しかし、昨年公表されている「宇宙領域防衛指針[4]」の内容や、今国会の審議状況を見ると、以下のような流れがあるといえそうです。

①SDA(Space Domain Awareness:宇宙空間における物体や活動状況を把握すること)を中核とした宇宙状況把握能力の強化

宇宙空間の状況を正確に把握する能力が、宇宙作戦集団の中心的な任務として位置付けられているようです。

②AI、デジタルツイン、光通信、各種センサーなど、具体的な技術領域を示した上で、防衛能力への活用を推進

上記指針において、必要となる技術を具体的に例示し、官民の技術開発や研究成果を積極的に取り込む方向性を示しています。

③「商用サービス」の積極的な活用

防衛専用の技術開発だけでなく、商用サービスや民間技術の活用を前提とし、防衛力と国内の技術開発等を通した産業基盤の強化を両立させようとしています。

2.スタートアップにとっての可能性

上記のとおり、国は、防衛政策上の重要領域として宇宙領域を位置付け、民間技術の活用を重視しています。

ここでいう宇宙領域にかかわる民間事業は、衛星の打上げなどの典型的な宇宙ビジネスに限られません。センシング、通信、AI、データ解析、無人機、衛星運用支援など、宇宙環境の利用を支える要素技術も広く重要になります。そのため、宇宙専業のスタートアップに限らず、コア技術を持つ幅広いスタートアップにとって、防衛・安全保障分野は新たな市場になり得るのです。

この点は、内閣府が実施するK Program(経済安全保障重要技術育成プログラム)[5]においても表れています。同プログラムでは、「宇宙・航空領域」に関する支援対象技術として、例えば以下のような技術が掲げられています[6]

【センシング能力の抜本的な強化】

・高高度無人機を活用した高解像度かつ継続性のあるリモートセンシング技術

・超高分解能常時観測を実現する光学アンテナ技術

【機能保証のための能力強化】

・衛星の寿命延長に資する燃料補給技術

【無人航空機の利活用の拡大】

・長距離物資輸送用無人航空機技術

これらの技術は、既に民間側でも研究開発が進んでいる領域だからこそ支援対象になっているのですが、国がこうした技術を支援対象として掲げていることは、今後どのような技術領域が重視されるのかを考える上で重要な手掛かりになると考えます。

また、防衛装備庁においてもスタートアップ技術の取り込みを進めています。例えば、防衛装備庁では、スタートアップが有する優れた技術を防衛装備品に活用するための「ファストパス調達」や、「スタートアップ技術提案評価方式」での技術導入を進めています。また、「防衛産業へのスタートアップ活用に向けた合同推進会」等を通じて、スタートアップと防衛産業のマッチングの機会も設けられています。

以上のように、防衛・安全保障分野では、国が重要技術を見定め、民間の技術を取り込もうとする動きが具体化しています。スタートアップにとっては、自社技術が防衛・安全保障上のどの能力に接続し得るのかを見極めることが、今後の事業機会を考える上で重要になると思われます。

3.スタートアップにとっての留意点(公共調達で失敗しない方法)

スタートアップにとって、宇宙領域への事業展開の可能性は広がっていますが、多くのケースでは、国やその関係機関との契約を通じて技術やサービスを提供することになります。新たな研究開発を受託するケースもあれば、既存サービスをライセンス提供するケースもあり得ます。

行政機関との契約には、民間企業同士の契約とは異なる考え方も多く、例えば次のような点に注意が必要です。

①知的財産権やデータの取扱い

国としては、基幹システムや重要技術について、権利や利用権限を幅広く確保したいという発想を持つことがあります。一方で、スタートアップにとって知的財産権は事業の生命線です。どこまで利用を認めるのか、どの権利を保持するのかについては、慎重な整理が必要になります。

②ベンダーロックインを前提に事業計画を組まない

苦労して国に採用された以上、その後も継続的な取引につながることを期待したくなります。しかし、国としては競争性や公平性を確保する必要があり、特定事業者への依存を避けたい場面もあります。もちろん個別のケースによりますが、民間企業との取引と同じ感覚で事業計画を立てないことも重要です。

③交渉のタイミングを逃さない

公共調達では、仕様書や契約条件が固まった後では修正が難しいことも少なくありません。初期の情報提供や意見交換の機会を活用し、自社にとって重要な論点は早い段階から共有しておくことが大切です。

 

民間企業同士の契約交渉と同様、相手方の事情を理解しながら譲れない点はしっかり主張することは基本です。ただし、公共調達には独自のルールや進め方があり、それを踏まえて対応することが契約成立への近道になります。

宇宙領域をはじめ、防衛・安全保障分野ではスタートアップの活躍の場が広がっています。もっとも、契約条件や調達手続でつまずいてしまっては、せっかくの事業機会を十分に活かせません。官公庁との契約や公共調達についてお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。

【脚注】

[1]「防衛省設置法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第53号。令和8年7月3日公布)

[2] 「国家安全保障戦略」・「国家防衛戦略」・「防衛力整備計画」の3つの文書。2022年12月16日に策定。

[3] 第221回国会衆議院安全保障委員会第5号令和8年4月24日

[4] 令和7年7月防衛省

[5] 経済安全保障推進法(経済施策を一体的に講ずることによる安全保障の確保の推進に関する法律)に基づき、日本の安全保障上重要となる技術について、民生利用のみならず防衛・防災等の公的利用も見据えた研究開発を支援するプログラム。AI、量子、宇宙、サイバー、バイオなどの重要分野について、大学・企業・研究機関等が行う研究開発に対し、複数年度にわたる大型の研究開発費が措置されます。

[6] 経済安全保障重要技術育成プログラム研究開発ビジョン(第二次)(令和5年8月28日)。


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執筆者
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