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2026年10月から義務化!スタートアップが行うべき「求職活動等におけるセクハラ」対策

2026/08/13

AZXの横田です。

以前のブログでは、2026年10月施行予定の「カスタマーハラスメント(カスハラ)」対策の義務化について解説しました。

予告していた通り、今回は同タイミングで義務化される「求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの対策」について解説します。

優秀な人材を惹きつけることが重要な経営課題であるスタートアップにとって、採用選考プロセスにおけるハラスメント対策は、法的な義務対応というだけでなく、採用ブランディングの維持・強化や社会的信用の確保に直結する問題です。

今回は、改正男女雇用機会均等法(改正法第13条第1項及び第2項)及び厚生労働省から公表された「事業主が求職活動等における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「本指針」といいます。)を踏まえ、①スタートアップが知っておくべき「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」の内容、②具体的なハラスメント行為の例、③企業が必ず講ずべき措置(義務)、④行うことが望ましいとされている取組みについて、解説します。

1.求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの適用範囲に注意!

(1)求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの定義

本指針における「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」とは、以下のように定義されています。

① 事業主が雇用する労働者による

② 性的な言動により

③ 求職者等の求職活動等が阻害されるもの

(2)義務の対象となる「労働者」の範囲

ハラスメントの行為者(加害者)側となる「労働者」には、正規雇用の正社員だけでなく、パート、アルバイト、契約社員などのすべての非正規雇用労働者を含みます。

また、派遣労働者についても、派遣先企業(労働者派遣の役務の提供を受ける者)は、自社が雇用する労働者と同様にハラスメント防止措置を講ずる義務を負うこととされている点に注意が必要です。

(3)性的な言動とは

ここでいう「性的な言動」とは、以下のようなものが含まれるとされています。

【性的な内容の発言】

  • 性的な事実関係を尋ねること
  • 性的な内容の情報を意図的に流布すること 等

【性的な行動】

  • 性的な関係を強要すること
  • 必要なく身体に触ること
  • わいせつな図画を配布すること 等

なお、「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」には、男性も女性も加害者・被害者になり得ますし、同性に対するものも含まれます。また、被害を受けた方の性的指向やジェンダーアイデンティティにかかわらず対象となります。

(4)「求職者等」と「求職活動等」の範囲

「求職者」の「求職活動」と聞くと、単に企業の採用面接を現在受けている最中の応募者の求職活動だけをイメージするかもしれませんが、本指針においては、「求職者に類する者が行う職業の選択に資する活動」も含まれるとされています。

具体的には、以下の活動(求職活動等)を行う者も対象に含まれるとされています。

  • 企業の採用面接への参加
  • 企業の就職説明会への参加
  • 企業の雇用する労働者への訪問(いわゆる「OB・OG訪問」「社員訪問」)
  • インターンシップへの参加
  • 教育実習、看護実習等の実習の受講

さらに、これらの活動がオフィス内で行われるものに限らない点に注意が必要です。例えば、SNS等のオンラインを介したやり取りや、通常就業している場所以外で行われるもの(採用関連の会食等)も「求職活動等」に含まれると考えられます。

2.「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」に該当する言動の具体例

本指針では、「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」に該当する典型的な例として、以下のようなものが挙げられています。

  • 身体への不用意な接触
    少人数の説明会において、労働者が求職者等の腰、胸等に触ったため、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。
  • インターンシップ中の性的な冗談
    企業が実施するインターンシップにおいて、労働者が求職者等に対して性的な冗談やからかいを意図的かつ継続的に行ったため、当該求職者等が苦痛に感じてインターンシップ中の活動が手につかないこと。

  • 面接中の不適切な質問
    面接中、面接官を務める労働者から性的な事実に関する質問を受け、求職者が苦痛に感じてその求職活動の意欲が低下していること。

  • OB・OG訪問での不適切な要求
    求職者等が労働者への訪問を行った際、当該労働者に性的な関係を求められ、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

  • インターン中の執拗な食事の誘い
    インターンシップ中に労働者が求職者等を執拗に私的な食事に誘い、当該求職者等が苦痛に感じてその求職活動等の意欲が低下していること。

スタートアップでは、メンバーと候補者との距離感が近いフレンドリーな採用活動が行われることもあるかもしれませんが、「親しみやすさ」を勘違いしたメンバーが上記のような求職者等に対するセクハラに該当する行為に及んでしまわないよう注意が必要と考えます。

3.「必ず講ずべき」措置(11項目)

今回の法改正に伴い、すべての企業は、「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」を防止するため、以下の11項目(大きく4つの分類に分けられます)の措置を必ず講じなければならないこととされました(スタートアップなどの中小企業についても適用されます)。

特に、他のハラスメント(社内向けのパワハラやセクハラ)の防止措置と異なり、「求職者等」への周知が必要になる事項(下記③及び④)があり、まだこの点については対応をできていないスタートアップもあると思われるため、その場合は対応が必要になると考えられる点に注意が必要です。

(1)事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発

① 方針等の明確化とその周知・啓発

就業規則、社内報、パンフレット、社内ホームページ、研修などを通じて、全従業員に以下の事項を周知・啓発すること。

(a)求職活動等におけるセクシュアルハラスメントの内容

(b)性別役割分担意識に基づく言動がセクシュアルハラスメントの発生の原因や背景となり得ること

(c)求職活動等におけるセクシュアルハラスメントを行ってはならない旨の方針

② 行為者に対する厳正な対処方針の規定と周知

求職者等に対するセクハラを行った者に対しては厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を、就業規則等の規定(懲戒規定)に明確に定め、従業員に周知・啓発すること。

③ 求職活動等に関するルールの明確化と労働者と求職者等への周知・啓発

(a)従業員向け:面談時間及び場所の指定、実施体制並びにやり取りに用いるSNSの種類の指定その他の求職者等と面談等を行う際の規則を定め、周知・啓発するための研修、講習等を実施すること

※例えば、面談時間や場所の指定(夜間の密室を避ける等)、実施体制(原則として複数名で対応等)、連絡に用いるツールの指定(個人のLINE等の使用を厳禁とし、会社の公式アカウントや選考用メールのみでやり取りする等)などが考えられます。

(b)求職者向け:上記規則を踏まえ、面談等に関する留意事項をホームページやパンフレット等の広報手段を用いて周知等すること

※例えば、面談等に関する留意事項(「面談はオフィスで行います」「やり取りは弊社指定の連絡ツールでのみ行います」等)を、採用ホームページで周知することが考えられます。

(2)相談体制の整備

④ 求職者用の相談窓口の設定と周知

求職者等からの相談(苦情を含む)に適切に対応するため、相談窓口(担当者)や制度をあらかじめ定め、採用ホームページや採用案内パンフレットに明記する等の方法で、求職者等に対して周知すること。

※求職者が「人事部門の担当者」への相談を躊躇するケースも想定されるため、人事部門以外の者を担当者に指定したり、社外の外部窓口に委託するなどの体制も考えられます。

⑤ 相談窓口の適切な対応体制の確保

以下のような方法により、その内容や状況に応じ適切に、かつ相談者の心身の状況等にも配慮しながら、広く(発生のおそれがある場合やセクハラに該当するかどうか微妙な場合であっても)、求職者等の相談に対応できる体制を整備すること。

(a) 相談窓口担当者が人事部門や関係部門と連携できる仕組みを整えること

(b) あらかじめ作成した留意点に関するマニュアルに基づき対応すること

(c) 相談担当者向けの研修を実施すること 等

(3)事後の迅速かつ適切な対応

⑥ 事実関係の迅速かつ正確な確認

事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例として、以下のような場合が挙げられています。

(a) 双方からのヒアリング(必要に応じて第三者からもヒアリング)

相談があった場合、相談窓口や人事部門等が、相談者(求職者)と行為者とされる従業員の双方から事実関係を確認すること。また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。

※    相談者の心身の状況や当該言動が行われた際の受け止めなどその認識にも適切に配慮すること。

(b) 第三者機関での紛争処理

事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、労働局の調停等の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。

⑦ 被害者に対する配慮のための措置

セクハラの事実が確認できた場合、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪、又は人事担当者による被害者への相談対応等の措置を講ずること。

⑧ 行為者に対する適正な措置

セクハラの事実が確認できた場合、就業規則等の規定に基づき、行為者たる従業員に対して必要な懲戒処分等の措置を適正に行うこと。

あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者を引き離すための対応、行為者の謝罪等の措置を講ずること。

⑨ 再発防止措置の実施

改めて「求職活動等におけるセクシュアルハラスメント」の防止方針を社内に周知・啓発し、従業員へのハラスメント研修等を改めて実施すること。

※なお、調査の結果ハラスメントの事実が明確に確認できなかった場合であっても、同様の再発防止に向けた措置を講じる必要があります。

(4)そのほか併せて講ずべき措置

⑩ 相談者等のプライバシーの保護と労働者及び求職者等への周知

相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じることが必要とされており、具体的には、以下のような対応例が示されています。

(a) マニュアルの策定・運用

相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。

(b) 研修の実施

相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。

(c) 社内・社外への周知

相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、社内に配布及び社外に発信等すること。

⑪事実関係の確認等(調査協力)を理由とする不利益取扱いの禁止の規定と周知

従業員がハラスメント調査等に協力したこと、労働局等へ相談・調停申請等を行ったことを理由として、解雇等の不利益な取扱いを行わない旨を就業規則等に規定し、社内報、パンフレット、社内ホームページ等により労働者に周知・啓発すること。

4.「行うことが望ましい」とされる取組

本指針では、上記で解説した11項目の「義務(必ず講ずべき措置)」のほかに、企業としての社会的な責任を果たす観点から、以下の取組を行うことが「望ましい」とされています。

(1)学校等の関係機関との連携

求職者(特に大学生や専門学校生等)が所属する教育機関が設置する相談窓口(大学等のキャリアセンター等)から、その学生が自社従業員からセクハラ被害を受けたという情報提供があった場合、学校側と密に連携し、適切な対応を行うことが望ましいとされています。

(2)顧客や取引先による求職者へのハラスメント対応

インターンシップなどの場面において、求職者等(インターン生)が自社の顧客や取引先からセクハラに類する行為を受けたという相談を求職者等から受けた場合、上記3の措置を参考にしつつ、必要に応じて適切な対応に努めることが望ましいとされています。

(3)求職活動等におけるパワハラ、妊娠・出産・育児休業等ハラスメント、カスハラ等への対応

求職活動等における「パワーハラスメント(パワハラ)」や「妊娠、出産、育児休業等に関するハラスメント」に類する行為(性的指向・ジェンダーアイデンティティに関する侮辱的な言動や、アウティング(機微な個人情報を本人の同意なく暴露すること)などを含みます)についても、上記3の措置を参考にしつつ、必要に応じて適切な対応に努めることが望ましいとされています。

また、求職者等(インターン生など)から、顧客等による求職活動等におけるカスタマーハラスメントに類すると考えられる相談があった場合には、その内容を踏まえて、上記3の措置を参考にしつつ、必要に応じて適切な対応を行うように努めることが望ましいとされています。

5.まとめ

スタートアップにとって、適切に採用活動を行うことは事業の成長を支える重要事項と考えます。また、選考時のハラスメントについて、SNSや就職活動における口コミサイト等で広まってしまった場合、採用活動において重大な支障となってしまう可能性があります。

そのため、今回の法改正のタイミングで、求職者等へのセクハラが発生しないよう(また、発生してしまった場合に適切な対応をとれるよう)上記の所定の措置を講じ、周知・啓発等の運用を徹底することが重要であると考えます。

今回の法改正に対応し、求職者等へのセクハラを防止するための対策について、就業規則の具体的な規定や、マニュアル・ルール、求職者向けの広報の内容等についてご相談がありましたら、弊所では弁護士・社会保険労務士の双方によりサポートすることが可能ですので、お気軽にご相談ください。

 

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執筆者
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弁護士 パートナー
横田 隼
Yokota, Hayato
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