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下請代金支払遅延等防止法(改正)

2004/06/11

~ AZX Coffee Break Vol.5 〜

下請代金支払遅延等防止法が改正された。本法は、大規模事業者の小規模事業者に対する製造業務及び修理業務の下請形態での委託について、下請業者保護のための規制を定めていたものであり、その適用範囲は限定的であったが、今回の改正によってプログラムの作成やサービス提供等に関する委託行為が規制対象に加えられ、多くのベンチャー企業に関係する重要法令となった。本法になじみの薄かった読者が多いと推測されるので、本稿では従前の規制内容に沿って本法の概要について触れ、その後今回の改正点を説明することとする。

(1)本法の概要(従前の規制内容)
① 規制対象  本法では、資本(又は出資。以下同じ。)の額が3億円超の法人が個人又は資本額3億円以下の法人に製造委託又は修理委託をする場合、並びに資本額1000万円超3億円以下の法人が個人又は資本額1000万円以下の法人に製造委託又は修理委託をする場合に、委託側を「親事業者」、受託側を「下請事業者」として本法を適用するものとされている(これに準じる場合として脱法的にトンネル会社を利用する場合も適用対象とされるが詳細は割愛する。)。なお、対象となる「製造委託」、「修理委託」とは、親事業者が業として販売を行う製品(その部品等を含む。以下同じ。)や親事業者が業として請け負う製造の目的物となる製品について、その製造や修理を下請事業者に委託すること(いわゆる下請的な形態での委託)を意味するものとされている。
② 親事業者の義務事項  親事業者に主として以下のような事項が義務づけられている。
i) 注文書面の交付義務:下請事業者への委託の際には直ちに注文内容等を記載した書面を交付しなければならない。書面に記載すべき事項は委託内容、代金の額、支払期日等、公正取引委員会規則(以下単に「規則」という。)において詳細に規定されている。書面に代え一定の電子的方法によることも認められる。なお、契約書が記載事項を網羅している場合には契約書をもってこの注文書面を兼ねることができると解されている。
ii) 書類作成・保存義務:下請事業者に委託した内容について、委託内容、代金の支払状況等を記載した書類を作成し保存しなければならない。記載事項は規則に詳細に規定されている。保存期間は2年間である。こちらも一定の電子的方法による作成・保存が可能である。
iii) 代金の支払期日:下請代金の支払期日は下請事業者から委託に基づく給付を受領した日から起算して60日の期間内において、できる限り短い期間内で定める必要がある。期日が定められなかった場合や60日以内という規制に違反する期日が定められた場合には、上記60日経過日の前日が支払期日とみなされる。
iv) 遅延利息:支払期日までに下請代金の支払を行わなかった場合には、上記60日の経過日以降、年14.6%の割合による遅延利息の支払義務を負う。
③ 親事業者の禁止事項  a)不当な受領拒否行為、b)代金の支払遅延、c)不当な代金減額、d)不当な返品、e)不当に低額な下請代金の設定、f)不当な購入強制、g)官庁への告発行為に対する報復行為、h)有償支給原材料等の対価の早期決済の要求、g)割引困難な手形の交付、の各行為が、下請事業者の利益を不当に害する行為として禁止されている。
④ 罰則等  注文書面交付義務の違反及び書類作成・保存義務の違反、並びに公正取引委員会に対する報告等の義務違反について、罰金が科せられる(罰金の額については後述)。また、親事業者の禁止事項について公正取引委員会の是正勧告に従わない場合には、違反内容及び事業社名が公表されるものと規定されている。

(2)規制対象の拡大  今回の改正の最も重要なポイントは、製品の製造及び修理の委託行為に加えて、情報成果物作成委託及び役務提供委託の各委託取引が規制対象となったことである。情報成果物とは、プログラム、映画や放送番組などの映像又は音響による成果物、文字、図形等から構成される成果物等を指すものであり、役務提供とは、建設業者が請け負う建設工事を除くサービス提供行為一般を指すものである(建設業者の建設工事については別途建設業法等による規制が適用される。)。なお、これらについても下請的な委託行為が規制対象となるものであり、情報成果物作成委託については、親事業者が業として提供する情報成果物、親事業者が業として請け負う作成の目的たる情報成果物、又は親事業者が自己使用する情報成果物を自ら業として作成する場合における当該情報成果物について、下請事業者に作成行為の全部又は一部を委託する場合が規制対象とされ、また役務提供委託についても、親事業者が業として提供するサービスの提供行為の全部又は一部を下請事業者に委託する場合が規制対象となっている。
 なお、上記改正に付随して、親事業者及び下請事業者の定義も若干改正されている。即ち、新たに追加された上記取引類型については、情報成果物作成委託についてはプログラムを対象とする作成委託の場合のみ、また役務提供委託については運送、物品の倉庫における保管、及び情報処理の各業務の委託の場合のみ、従前の基準(前述の資本金3億円及び1000万円の基準)により親事業者及び下請事業者の該当性が判断されるが、これ以外の情報成果物作成委託及び役務提供委託については、原則として下記の基準によって親事業者及び下請事業者に該当するか否かを判断すべきものとされた。即ち、資本額が5000万円超の法人が個人又は資本額5000万円以下の法人に情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合、並びに資本額1000万円超5000万円以下の法人が個人又は資本額1000万円以下の法人に情報成果物作成委託又は役務提供委託をする場合に、委託側は親事業者、受託側は下請事業者となり、本法の適用を受けることとなる。

(3)書面交付時期  親事業者の義務である注文書面の交付については、規則に定められる事項を網羅した書面を、委託の際直ちに下請事業者に交付する必要がある。改正法では、発注時に全ての委託内容が確定しない場合を想定して、記載すべき事項について内容を確定できない正当な理由があるものについては、内容確定後直ちに当該事項を記載した書面を補充的に下請事業者に交付すべきことが明確に定められた。

(4)親事業者の禁止行為の追加  ①下請事業者に対して自己の指定する役務の利用を強制すること、②不当に金銭、労務等の経済的利益を提供させること、③下請事業者の給付内容を不当に変更させ、又は給付完了後に不当にやり直しをさせること、の各行為が、禁止行為として新たに追加された。

(5)制裁関係  従前から規定されている注文書面交付義務の違反及び書類作成・保存義務の違反、並びに公正取引委員会に対する報告等の義務違反について、罰金額が3万円から50万円に引き上げられた。また、従前規定されていた公正取引委員会の是正勧告に従わない場合の公表措置については、必ずしも勧告違反の場合に限定せず、広く公正取引委員会が認知した本法違反の事実一般について公正取引委員会の裁量によって公表できるよう、法改正が行われた。

本改正法は、罰金額の引上げについては既に施行されており(平成15年7月18日から施行)、その他の改正事項については平成16年4月1日から施行される。今回の改正により、ソフトウェア開発の委託、デザイン制作の委託、販売促進業務の委託、保守管理業務の委託等々、ベンチャー企業で頻繁に起こる取引について、本法を遵守することが必要となり、また同時に規制の内容も厳格化された。取引の具体的態様、資本額の要件等を慎重に検討の上、個々の取引先への発注が本法の規制範囲に該当しないかどうか、慎重に検討すべきである。本法の適用対象となる場合の規制の概要は上記のとおりであり、違反が生じないよう内容をよく理解しておくべきであるが、特に注文書面の交付や書類の作成・保存義務については罰則も規定されており、また予め契約書の雛形等を用意する等により対応可能なものであることから、改正法の施行に先立ち、弁護士等に相談の上早めに適切な準備を行うことが望ましい。

(文責:弁護士 林 賢治)

 

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