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利用規約(1)

2012/02/22

~ AZX Coffee Break Vol.24 〜

近年SNSをはじめとするソーシャル・メディアは急激な広まりを見せている。各種のサービス等の提供に当たっては、その諸条件を規定する利用規約を定めるのが一般的である。利用規約のサンプルは、検索サイトを利用して多数取得することができるが、各規定の法的な意味を理解していないと、自らのサービスに最適な利用規約を作成することは難しいと考えられる。そこで、今回は利用規約に関する留意事項について解説を行う。
(1)同意の取得 利用規約を策定する目的は、サービス運営者とユーザーの間に利用規約の内容に従って法的拘束力のある契約を成立させるところにある。民法上、契約成立の要件として意思表示の合致が必要とされているため、ユーザーが利用規約の内容を認識した上で「同意」する必要がある。そのため、一般的には、利用規約の内容を分かりやすい位置に表示した上で、ユーザーが「利用規約に同意した上で申込みを行う」などと表示されたボタンへのクリックを要求する形とすることが多い。この点、利用規約をサイト上にアップして「本サービスを利用した者は本利用規約に同意したものとみなします。」と規定しただけの形にしている例をたまに見かけるが、利用規約への明確な「同意」を取得していない以上、利用規約がサービス運営者とユーザーの間の契約として成立していないと判断される可能性がある。万一、訴訟となり、利用規約の規定によって自己の権利を守ろうとする場合には、利用規約がユーザーによって同意されたことを立証する必要があるため、この点は極めて重要である。この関係で、ユーザーが同意をしたことを立証できるためのログデータを取得するとともに、ユーザーが同意をした時点の利用規約の内容を立証できるよう、利用規約のバージョン管理をしておくことも重要である。
また、同意の前提として、利用規約の内容についてのユーザーの認識をどの程度確保するかは検討を要する。最も安全な方法は、利用規約を全文掲載して、その最後に同意ボタンを設置して、ユーザーが全文を読んだ可能性が高いという外形を整えることである。しかし、実務上は、画面の大きさの制約から、利用規約をスクロール形式で表示する場合や、利用規約へのリンクだけを表示する場合もある。これらの方法も無効であると断定できるものではないが、利用規約に基づいて成立する契約の有効性を争われるリスクは存在する。他方で、利用規約の関係で、サービス利用までのユーザー・インターフェースの快適さが悪化して、サービス利用が減少してしまうことはビジネス上問題であるため、利用規約の有効性の確保と登録完了までのユーザー・インターフェースの快適さの確保をどうバランスさせるかを検討する必要がある。
(2)登録手続及びID等の管理の規定 サービスの利用のためには、何らかのユーザー登録を要求するのが一般的である。ユーザーの拡大を優先して、実名ではなく匿名で利用できるサービスや、登録拒否をする想定がほとんどないサービスであっても、何らかの違反行為等を行った場合に、登録取消しを行い違反者に対するサービス提供の停止を行うことができるようにしておくためには、その前提として、「登録」という形式をとっておいた方が安全である。登録に関する規定には、登録に当たり提供するべき情報、本人自身が登録するべき旨、登録拒否事由等を定めることが多い。また、登録事項に変更が生じた場合には、ユーザーが自ら変更事項をサービス運営者に通知する義務を課す規定もあわせて設けるのが一般的である。
登録拒否事由の中でよく問題になるのは未成年者の登録の問題である。日本の民法上は、20歳未満は未成年者とされ(民法第4条)、未成年者の法律行為については親等の法定代理人の同意がない場合には原則として取消し可能となる(民法第5条)。法定代理人が目的を定めて許した財産の処分、営業を許可された未成年者がその営業に関して行った行為、未成年者が詐術を用いて成年者と信じさせて行った行為などは、取消し対象とならないが、多くのユーザーを抱えるソーシャル・メディア関連のサービスにおいて、このような例外要件への該当性を逐一チェックすることは通常困難であり、親等の法定代理人の同意がない場合には取消し可能となるという原則を前提に考えておいた方が安全である。その関係で、利用規約上は、未成年者で親等の法定代理人の同意がないことを登録拒否要件と定めておき、登録の際に年齢を入力させ、20歳未満の場合には、法定代理人の同意の有無も入力させることが考えられる。しかし、真実、法定代理人の同意があるか否かを確認することは実務上は困難であり、リスクが残らざるを得ない。ユーザー数の拡大を優先して、この点のリスクを受け入れて、未成年者へのサービス提供を積極的に進めているサービスもあり、それもビジネス上の選択としてはあり得ると考える。但し、利用料金の不払いがあったような場合には、利用規約に基づく契約の取消しが主張されるリスクもあるため、このようなリスクは考慮しておいた方がよいと考える。料金不払いのリスクについては、利用規約での対応だけではなく、適切な決済システム等で事実上のリスクを減らす等の対応も考えられるため、ビジネスのスキームを考える際にはこの点も考慮した方がよい。
なお、登録に際して、IDやパスワードを決める形にすることが多く、利用規約にIDやパスワードに関する規定も入れておくのが一般的である。具体的には、IDやパスワードを第三者に利用させることを禁止する規定、IDやパスワードの管理はユーザーの責任であり、第三者が利用したことについてサービス運営者は責任を負わない旨の規定、IDやパスワードが盗用された場合のユーザーの通知義務などを定めることが多い。
(3)利用料金の規定 広告収益モデル等の場合を除き、事業として行うサービスの場合には、いわゆるフリーミアム戦略のもと無料ユーザーを多く抱える場合であっても、何らかの有料サービスを提供するのが一般的である。従って、通常は利用規約に料金に関する規定も設けられる。利用料金は、利用規約に基づく契約の根幹的な内容の一つであり、ユーザーが利用料金を明確に認識したうえで、それに同意を行っている必要がある。この関係で、利用料金を利用規約において明記しておくのが最も安全であるが、利用料金を柔軟に変更していきたいという意図から、利用料金を利用規約に明記せず、サービス運営者が別途定める料金とするなどの形で規定する場合がある。この場合、かかる規定自体が直ちに無効となるものではないが、ユーザーが「別途定める料金」に同意したことを立証する必要があり、利用規約への同意だけでは、「別途定める料金」についてのユーザーの認識と同意としては不十分であると判断される可能性がある。この点は、課金が発生するたびに、料金の金額等を明確に表示して同意をさせるなどのステップを取り入れることで対応できる場合もある。但し、その同意についての立証ができるようにしておく必要がある点、留意が必要である。なお、特定商品取引法上の通信販売(特定商取引に関する法律第2条第2項)に該当する場合には、一定の事項を広告に表示することを要求される場合があり(同法第11条)、その場合には、サイト上において明確に記載しておく必要がある。
(4)禁止事項に関する規定 禁止事項を明確に定め、また、ユーザーが禁止事項に違反した場合の効果(損害賠償、ユーザーのデータの削除等)を利用規約に明記しておくことで、問題が発生した場合に適切な措置をとることができるようにしておく必要がある。他者の権利侵害の禁止、犯罪行為の禁止等、一般的な事項に加えて、サービス特有の禁止事項を出来る限り具体的に列挙して、明示しておくことが重要である。例えば、提供しているサービスがインターネット異性紹介事業に該当すると判断された場合、「インターネット異性紹介事業を利用して児童を誘引する行為の規制等に関する法律」の規制対象となってしまうため、ユーザー同士の交流が可能なサイトにおいては、「異性交際に関する情報を送信すること」を禁止事項として記載しておくことが考えられる。当初の利用規約制定の段階であらゆる禁止事項を網羅することは困難であることから、「その他当社が不適切と判断する行為」などのバスケット条項を規定しておいた方が安全であるが、訴訟になった場合に、このようなバスケット条項の有効性がどの程度認められるかは予測が難しいため、想定される禁止事項はできる限り列記して明示しておくことが望ましい。
(次号へ続く)

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