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代表取締役等住所非表示措置のポイント:誰が対象?いつから適用される?

2024/09/19

弁護士の貝原です!

今年5月に代表取締役等住所非表示措置に関するブログとして「代表取締役の住所はどこまで伏せられる?」を掲載しましたが、今回はその続きとなります。

上記ブログを掲載した当時の「代表取締役等住所非表示措置について」(法務省)は簡潔な内容が掲載されるに留まっておりましたが、本ブログ掲載時点においては代表取締役等住所非表示措置に関する通達(商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(令和6年7月26日付け法務省民商第116号法務省民事局長通達))を踏まえたものとして、以前よりも内容が充実しています。

今回は上記代表取締役等住所非表示措置に関する通達のポイントをお伝えします。

1.代表取締役等住所非表示措置の対象となる会社

代表取締役等住所非表示措置の対象となる会社は株式会社に限られています。そのため、合同会社の代表社員や投資事業有限責任組合(LPS)の無限責任組合員の住所を伏せることはできません。

2.代表取締役の住所はいつ伏せられるか

代表取締役等住所非表示措置の制度が施行されるのは、2024年10月1日からとなります。しかし、2024年10月1日以降いつでも代表取締役等住所非表示措置を利用して住所を伏せることができるわけではなく、以下の登記申請と同時に申し出る必要があります。

また、既に登記されている代表取締役等の住所から変更がない場合であっても、代表取締役等住所非表示措置を申し出ることができるとされています。

・設立の登記
・本店を他の登記所の管轄区域内に移転した場合の新所在地における登記
 (管轄外の本店移転)

・代表取締役等の就任や重任の登記
・代表取締役等の住所移転による変更の登記

3.代表取締役の住所はどのように伏せられるか

では、次回の重任のタイミングで代表取締役等住所非表示措置を申し出れば、住所を完全に伏せられるかというと、そうではありません。

代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合、登記事項証明書等において、代表取締役等の住所は最小行政区画(市区町村。東京都においては特別区)までは記載されます。

また、更に重要なのは、代表取締役が転居していないものの代表取締役等住所非表示措置の申し出を行うと、登記上は、以下の通り最小行政区画以降の部分についても単に下線が引かれるに留まり、住所の記載自体は残ってしまう点です。

 

「商業登記規則等の一部を改正する省令の施行に伴う商業登記事務の取扱いについて(通達)」11頁より引用 

 

代表取締役としては、代表取締役等住所非表示措置の申し出を行ったにもかかわらず、登記上に住所の記載が残る点に注意が必要です。もっとも、事情を知らない第三者からすれば、従前から住所の変更がないのか、それとも同一の市区町村(東京都であれば特別区)内において転居したのかは判別が付きません。そのため、一定程度意味はあると考えられます。

4.その他注意点

➀代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、登記の申請書には代表取締役等の住所を記載する必要があります。そのため、代表取締役等住所非表示措置を申し出た会社としては、登記上表示はされていないものの実際には登記されている代表取締役等の地番を含む正確な住所について失念することがないよう十分注意する必要があります。

②代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではありません。そのため、代表取締役が転居した場合等、住所に変更が生じた場合には、従前通り登記する必要があります。

③代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合には、登記事項証明書によって会社代表者の住所を証明することができないこととなります。そのため、金融機関から融資を受けるに当たって不都合が生じたり、不動産取引等に当たって必要な書類(会社の印鑑証明書等)が増えたりするなど、一定の影響が生じることが想定されます。

5.まとめ

以上、代表取締役等住所非表示措置について、今回は通達のポイントをまとめてみましたが、いかがでしたでしょうか。

代表取締役等住所非表示措置の申し出を行う場合には、実質的支配者リストの準備が必要となる場合もありますので、検討されているスタートアップ等の皆さまはお早めに専門家にご相談下さい。AZXでは代表取締役等住所非表示措置を始めとした商業登記も取り扱っておりますので、不明点等あればお気軽にお問い合わせ下さい。

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
貝原 怜太
Kaihara, Ryota
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後藤 勝也
Gotoh, Katsunari
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