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起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?
【その4】株式の譲渡禁止等、実際に創業者が退職した場合の対応

2025/01/24

弁護士の貝原です!

前回に引き続き、創業株主間契約(創業メンバー株主間契約、創業者間契約)について解説したいと思います。

1.創業株主間契約の主な内容(その4)

前回の「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その3】」の繰り返しとなりますが、創業株主間契約の主な内容としては、以下の内容が定められていることが多いです。

①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権

②当該株式譲渡請求権への手続協力義務

③会社がM&A等により買収される場合に、退任した創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)

④株式の譲渡禁止等

今回は、④株式の譲渡禁止等、実際に創業者が退職した場合の対応について解説します。

(①退任した創業者が保有する会社の株式に関する株式譲渡請求権につきましては、「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その1】」及び「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その2】」を、②当該株式譲渡請求権への手続協力義務、③会社がM&A等により買収される場合に、退任した創業者に対して買収に応じるべきことを請求できる権利(強制売却権)につきましては「起業家が最初にやるべき「創業株主間契約」とは?【その3】」をご覧下さい。)

(1)株式の譲渡禁止等

創業株主間契約の相手方は、創業メンバーや創業メンバーから株式を譲り受けた会社の主要メンバーであることが一般的です。これらの創業メンバー等が会社の株式を保有するに至った理由は、会社の価値が増加することについて株式を通じて享受することであると考えられるため、引き続き株式を保有し続けてもらう必要があります。無断で株式を譲渡されてしまうと(非公開会社であれば譲渡承認手続により譲渡を承認しない方法はあるものの)株式を保有するに至った理由が失われてしまいます。そのため、創業株主間契約においては、株式を無断で譲渡することを禁止する規定を定めることが一般的です。

また、株式を無断で譲渡した場合や、無断で譲渡するおそれがあった場合、もはや創業者間での信頼関係は失われているため、株式譲渡請求権の要件を満たす状態であるか(会社を退職しているか)否かにかかわらず、株式譲渡請求を認める規定を定めることもあります。

(2)創業者が退職した場合の対応

創業株主間契約を締結した後、他の創業者が退職し、株式譲渡請求権を行使することができる状況となった場合、①裁判外の方法、②裁判手続により株式譲渡の手続を進める方法が考えられます。

①裁判外の方法

裁判外で株式の譲渡を求めた場合、退任した創業者は基本的に創業株主間契約の内容に従って譲渡に応じることが多いと考えられます。

しかし、退任した創業者が株式譲渡に消極的である場合、創業株主間契約の内容を前提とし、会社に残る創業者と退任する創業者との間で交渉する必要があります。交渉がまとまらない場合には、契約とは異なる内容(例えば、譲渡する株式の数を変更することや、譲渡価額を変更すること等)により合意を目指すこともあります。

②裁判手続による方法

退任した創業者が創業株主間契約に基づく株式譲渡請求(会社に残る創業者に対する株式譲渡)に応じない場合、裁判手続による方法としては、会社に残る創業者は自己が株主であると主張して、退任した創業者に対し、株主であることの確認訴訟を提起する方法が考えられます。

2.まとめ

以上、創業株主間契約(その4)につきまして、いかがでしたでしょうか。前回からの繰り返しとなりますが、まずは創業株主間契約を締結することとし、専門家にも相談の上、創業者間でその内容についてしっかりと検討することをおすすめします。

AZXでは創業株主間契約についてのご相談を日常的に取り扱っておりますので、どうぞお気軽にお問い合わせください。

創業株主間契約のより詳しい解説につきましては、拙著「創業者株主間契約」(菅原稔,他『スタートアップの法律相談』(青林書院、2023)8頁)をご参照ください。

 

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執筆者
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