【前編】「会社法」改正の概要(2021年3月施行予定)

投稿日:2021/01/27

弁護士の林です。

昨年は夏場に水泳を再開したとたんに風邪をひき、コロナは陰性でしたが、この状況で普通の診察を受けるのにも一苦労してしまったため、しばらく水泳は休止しています。その代わり、自宅で体幹トレーニングをできるだけ毎日やるようにしており、副産物でゴルフのスイングも安定すると良いな、と思っております。

今回解説する会社法改正は、平成26年改正法(2015年施行)以来の本格的な改正と言われています。AZXでは、資金調達、ストックオプション、株主総会対応、各種登記など、クライアントのコーポレートアクションを幅広くサポートしていますが、会社法はこれら全てにかかわる重要な法律です。改正法の施行は少し先であり、細部が未確定な部分もありますが、概要をご説明させていただきます。

なお今回の改正の全体像は、法務省の以下の資料に要約されていますので、あわせてご覧頂くと理解の促進になると思われます。
http://www.moj.go.jp/content/001310775.pdf

少しボリュームがあるので、前後半に記事を分けさせていただきます。

はじめに:改正の概要

改正事項の概要は、以下のとおりです。本ブログ読者層の便宜のため、法務省の資料とは少しカテゴリー付けを変え、適宜、上場会社及び非上場会社への関連度も示す形にしています。
前半の記事では、下記の1と2を対象にします。

 1.株主総会の規律
 1-1 株主総会資料の電子提供制度 株主総会参考資料等をウェブサイト掲載により提供できる 主に上場
 1-2 株主提案権の濫用制限 株主が株主総会招集通知に記載請求できる議案数を10までに制限 主に上場
 2.取締役の規律
 2-1 取締役の報酬関係
 (1)   報酬決定方針の開示 個人別の報酬を株主総会で決定しない場合、取締役会で決定方針を定め開示しなければならない 主に上場
 (2)   株主総会の報酬決議 株式及び新株予約権による報酬について、株主総会の報酬決議として決定すべき付与上限数等の事項が明確化/金銭報酬にも相当性の説明義務  
 (3)   報酬としての株式、新株予約権の特則 上場会社の取締役に対する報酬としての株式の発行価額、新株予約権の行使価額をゼロにできる 上場のみ
 (4)   事業報告記載充実 取締役の報酬に関する記載充実 主に上場
 2-2 役員責任の補償等の規律整備
 (1)   会社補償の規律整備 責任追及の訴えにおける費用や賠償金を会社が補償することについてのルールを明文化  
 (2)   賠償責任保険の規律整備 役員を被保険者とするD&O保険に加入する手続要件等を明文化  
 2-3 社外取締役関係
 (1)   社外取締役義務づけ 上場会社等に社外取締役の選任を義務づけ 主に上場
 (2)   社外取締役への業務執行委託 MBOなど利益相反事例等で社外取締役が取締役会の委託により(社外性を失わずに)会社業務を執行できることを明文化 主に上場
【ここから後半】
 3.株式交付制度
 株式交付制度の新設 他の株式会社を子会社化するために、自社株を対価に子会社となる会社の株主からその株式を取得できる制度(相対の株式交換のような制度)を新設  
 4.その他
 4-1 社債関係
 (1)   社債管理補助者 社債管理者の業務を補助する社債管理補助者を新設 主に上場
 (2)   社債権者集会 社債権者全員の同意により代替できる旨の明文化  
 4-2 責任追及の訴訟における和解 和解における監査役の同意の必要性を明文化  
 4-3 議決権行使書面の閲覧等の制限 個人情報保護の観点から閲覧拒否事由を新設  
 4-4 全部取得条項・株式併合の事前開示事項 端数株式処理に関する事前開示事項の記載充実  
 4-5 登記関係 新株予約権の登記事項の一部簡略化、支店所在地の登記廃止  
 4-6 成年被後見人等の取締役等欠格事由の廃止 成年後見人、被保佐人の欠格事由を廃止し、代わりに成年後見人等による就任承諾の代理等の規律を新設  
 4-7 代表者の登記住所の扱い 代表者住所の登記事項証明書等への開示を一部制限  

本改正の細かい解説は、文献やウェブサイトでも多く掲載されると思いますので、本稿ではメリハリをつけるため、上場会社のみに適用される、又は上場会社を主なターゲットにする項目など、非上場のベンチャー企業への関係が薄いものは軽めに説明する形にさせていただきます。

1.株主総会の規律

1-1 株主総会資料の電子提供制度

書面で株主に送付することが原則になっている株主総会の参考書類等を、ウェブ開示で代用できるようにする制度(電子提供制度)が新設されます。株式会社は、定款で電子提供制度の採用を定めることができ(改正法第325条の2)、その場合は株主総会の招集に際して株主総会参考書類や定時総会の対象事項である計算書類等をウェブ開示することとなり(改正法第325条の3)、書面で送付する招集通知にはこれらを添付せず、掲載しているウェブサイトURL等の情報を掲載すれば良いこととなります(改正法第325条の4第2項、第3項。詳細は改正施行規則第95条の2以下)。

電子提供の主な対象となる「株主総会参考書類」は、会社が書面又は電磁的方法による議決権行使を認める場合に、法定の記載事項を網羅する形で作成することが必要となる議案説明の書類であり、一般的には上場会社が使用するものです(非上場会社でも、書面等による議決権行使の許容を義務づけられる株主1000名以上の会社や、任意的に書面等による議決権行使を採用する場合は必要になりますが、例は少ないと思われます 。)。参考書類の作成が法律上義務づけられない非上場会社でも、形式上「参考書類」の題名で法定記載事項を充足しない議案書類を作成するケースがありますが、これは法律上の「株主総会参考書類」には該当しません。このため、電子提供制度は、上場会社を主なターゲットとする制度になると考えられます(後述のとおり、上場会社にはこの制度が強制されます。)。但し、定時総会の承認等の対象となる事業報告や計算書類も対象にできるため、非上場会社が定時総会でそれらをウェブ開示するという制度活用も可能と思われます。

電子提供する場合、株主総会の3週間前の日又は招集通知発送日のいずれか早い日に掲載を開始し、株主総会日から3ヶ月経過する日まで掲載を継続する必要があります(改正法第325条の3第1項)。また、招集通知については、非公開会社は通常の場合は株主総会の1週間前でよい(取締役会非設置会社では定款で更に短縮可能 )ところ、電子提供する場合は2週間前の発送が必要となります(改正法第325条の4第1項)。

電子提供は、電子公告と異なり、株主が閲覧できる態様であれば足ります。このため、株主に提供したパスワードで認証するページでの掲載も可能と考えられます。電子提供制度を採用している旨は、定款及び登記(改正法第911条第3項第12号の2)の記載事項となりますが、具体的なURL情報まではこれらに記載する必要はありません。

上場会社は、電子提供制度の採用を義務づけられることになっており、改正法の施行日時点における上場会社は、施行日と同時に、電子提供制度を採用する定款変更をしたものとみなされることになります(会社法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下「整備法」)第10条第2項)。

その他、各株主のネット環境に配慮した電子提供書類の書面交付請求の制度(改正法第325条の5)や、ウェブ掲載が中断してしまった場合の取扱(同第325条の6)などの規定が設けられています。

なお、上記の改正は、株式振替機関などのシステム対応の準備期間を考慮し、改正法交付日から3年6ヶ月を超えない範囲において施行日が指定されることとなっており(改正附則第1条但書)、実際に制度が利用できるのはもうしばらく先となります。

1-2 株主提案権の濫用制限

株主総会では通常、会社側が提案した決議事項が審議、決議されますが、法律上、一定の要件のもとで、株主の方から決議事項を提案することが可能です。今回の改正では、株主総会で株主から100件の議案が提出されたなどの事例も踏まえ、円滑な株主総会運営のため株主の権利の濫用を抑制するべく、株主の議案の提案権に数量制限が加えられます。

現行法上、株主(取締役会設置会社の場合、一定の持株比率等の要件を満たす株主)は、自己が株主総会に提出しようとする議案の要領を、予め招集通知に記載して各株主に通知するよう、会社に請求することができますが、今回の改正で、1回の株主総会についてこの請求をできる議案数が10個までとされます(改正法第305条第4項)。

なお、株主総会の決議事項は、定款変更、取締役3名選任といった決議のテーマを示す「議題」と、定款の新旧対照表や取締役候補者といった具体的な決議内容を意味する「議案」から構成されます。株主には、「議題」を提案する権利(会社法第303条)、株主総会の会場で動議として「議案」を提案する権利(同第304条)、提案しようとする「議案」を予め招集通知に記載請求する権利(同第305条)がありますが、今回の数量制限は、最後の権利のみを制限するものとなります。

本改正は、取締役会設置会社のみに適用され、株主によるガバナンスが重視される取締役会非設置会社には適用されません。また実務的には、非上場会社では株主が議案を提案すること自体稀ですので、主に改正の影響を受けるのは上場会社と思われます。

その他、改正法には、10個の具体的なカウントの仕方や、10を超過した場合にどの議案を採用するかに関するルールなどが定められています。

2.取締役の規律

2-1 取締役の報酬関係

近時、上場会社を中心にリストリクテッドストックなどの株式インセンティブが普及している一方、業績に連動した報酬の付与に対する会社法の規律にはやや曖昧な部分がありました。規律を透明化して株式報酬等を適正、円滑に付与することを企図して、取締役の報酬について以下のような改正がされています。

(1)取締役の報酬決定方針の開示

上場会社等の一定の会社は、定款又は株主総会の決議で取締役の個人別報酬を具体的に定めている場合を除いて、報酬内容についての決定に関する方針(報酬決定方針)を取締役会で定め、開示することが必要となります(改正法第361条第7項。方針の具体的内容について改正施行規則第98条の5、開示方法が事業報告への記載となることについて同第121条第6号)。この制度の適用対象は、①有価証券報告書提出会社(公開会社である大会社に限る)、②監査等委員会設置会社、のみとなりますので、上場会社及び一定範囲の上場準備中企業にのみ関係する改正となります。

(2)株主総会の報酬決議

取締役の報酬は、その上限額等を株主総会で決議する必要があります。新株予約権や株式のインセンティブを付与する場合にも、報酬の一形態として決議を得る必要があり
、会社法(現行法第361条第3号)の定めに従って「報酬等のうち金銭でないもの」として、「その具体的な内容」を決議することになりますが、具体的なインセンティブスキームに応じて、どのように内容を特定して決議するかは解釈の余地がありました。

今回の改正で、報酬として株式又は新株予約権を付与する場合には、その上限等を決議すべきものとされました(改正法第361条第1項第3号、第4号)。また、実務上利用されている金銭報酬を介した現物出資又は相殺方式による株式又は新株予約権についても同様の規律を及ぼすべく、株式又は新株予約権の払込にあてるための金銭報酬を付与する場合にも、同様に付与上限数等を決議すべきものとされています(同第5号)。具体的な決議項目は、改正施行規則(第98条の2~第98条の4)に規定されます。

また、現行法では、不確定額の報酬又は非金銭報酬の場合について、株主の判断に資するために、その相当性に関する株主総会における説明義務が取締役に課されていましたが、今回の改正において、確定額の金銭報酬についても説明義務が課されることになります(改正法第361条第4項)。

(3)報酬としての株式、新株予約権の特則

取締役に報酬として株式を発行する場合、無償での新株発行はできないこと等から、時価で株式を発行しつつその払込金相当額を現金報酬として付与する方法などがとられ、新株予約権については行使価額をゼロにできないことからこれを1円とする1円オプションなどの技巧的なスキームが用いられてきました。今回、株式発行手続に関する会社法の規定を一部改正し、上場会社の取締役に対して報酬の目的で発行する株式については端的に払込金額をなし(0円)とし(改正法第202条の2)、新株予約権については行使時に払込を要しない(行使価額0円)ものとすること(改正法第236条第3項)ができるようになります。これによって、上記のような技巧的な方法を利用せずとも、ダイレクトに株式や新株予約権という有価証券を報酬として取締役に発行できる形になります。

この制度は、上場会社のみに適用されます。市場価格のある上場会社の場合、取締役に付与された株式等の価値が算定可能であり一定のガバナンスが期待できますが、非上場会社の場合は経営者の支配助長のため濫用されるおそれがあるとの懸念から、このようになっています。また、取締役のみが対象であり、監査役や従業員などは対象外となります。

(4)事業報告の記載充実

上記改正を踏まえ、公開会社の事業報告について、(1)で述べた報酬決定方針のほか、業績連動報酬に関する事項や、報酬として交付した株式等に関する事項などが、事業報告の記載事項として追加されます(改正施行規則第121条、第122条)。「公開会社」(株式の譲渡制限を外している会社)に関する変更ですので、主に上場会社に関する改正となります。

2-2 役員の責任の補償等に関する規律整備

優秀な役員の人材を確保し、役員の職務執行の過度の萎縮を避けるため、会社が役員との契約によって、責任追及の訴えの対応費用等を補償することを約したり、会社が保険料を負担して役員賠償責任保険に加入することが実務上行われています。これらについては、会社と取締役の利益が相反する側面もあり、利益相反取引の規律を適用すべきでないか等、会社法上の位置づけがクリアでありませんでした 。

今回の改正で、従前の利益相反取引の規制とは別枠で、上記の会社補償や役員賠償責任保険について、利益相反取引に準じて取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)の承認を要する等の規定が新設され、規律が明確化されます。

(1)会社補償の規律整備

新たな規律の対象となる「補償契約」とは、会社が役員に以下の金額の全部又は一部を補償する契約となります(改正法第430条の2第1項)。


  1. 職務執行に関し、法令違反を疑われ、又は責任追及の請求を受けた場合における、その対応費用(弁護士費用など)
  2. 職務執行に関し、第三者に生じた損害を賠償する責任を負う場合において、役員が支払う賠償金及び和解金

後述のとおり、「補償契約」に該当する場合、「利益相反」の規制は適用されない建付となっていることから、「補償契約」の範囲は役員を過剰に利さない一定の類型のものに限られます。例えば、上記2.では、「会社に生じた損害」を賠償する責任を負う場合は含まれていません。これを含めてしまうと、補償契約のスキームを利用して役員の会社に対する賠償責任を事実上免除することが可能になってしまい、会社法の別の条文で責任免除に厳格な要件を置いている意味がなくなってしまうためです。

補償契約を締結する場合、その内容について取締役会(取締役会非設置会社では株主総会)で承認を得る必要があります。一方で、補償契約については会社法の利益相反の規律(会社法第356条第1項、第365条第2項)は適用されません(改正法第430条の2第6項)。もし利益相反が適用されてしまうと、それに関連して生じた会社の損害について、利益相反取引の当事者である役員が自己の無過失を主張できない(会社法第428条第1項)、責任の一部免除や責任限定契約の適用を受けられない(同条第2項)といった厳しい規律を受けることになってしまうため、適用除外を明確化したものです。

制度の濫用を防ぐため、補償契約を締結しても、以下の金額については役員に補償することはできないものとされます(改正法第430条の2第2項)。2.については、損害を受けた第三者に対しては役員と会社が連帯して賠償責任を負うが、100%役員の職務懈怠に起因する問題であるため役員と会社との内部関係では役員が100%会社に対して責任を負うようなケースで、役員が第三者に賠償金を支払った後で補償契約によりそれを会社が補填してしまうのは、制度趣旨を逸脱してしまうため禁止されていると考えられます。


  1. 通常要する費用の額を超える対応費用(不当に高額な弁護士費用など)
  2. 会社が第三者に損害賠償した場合に、役員が責任を負うべき分として会社から役員に求償できる部分の金額
  3. 役員の悪意又は重大な過失により役員が第三者に対して負う賠償金及び和解金

また、補償契約に基づき紛争対応費用を補償した会社が、役員が自己若しくは第三者の不正な利益を図り、又は当該会社に損害を加える目的で職務を執行したことを知ったときは、役員に対し、補償した金額に相当する金銭を返還することを請求することができるものとされます(改正法第430条の2第3項)。上述のとおり、役員の重過失等がある事案での賠償金・和解金は、そもそも補償できないとされていますが、対応費用に関しては、第三者との紛争開始時から発生するもので、紛争が終わってみないと役員に重過失等があったかかどうか判断が難しいことから、さしあたりその点は問わずに対応費用を補償することはOKとしつつ、事後的に役員の悪質性が判明した場合には、補償した金額の返還を請求できるという建付になっています。

公開会社については、補償契約に関する一定の事項が事業報告の記載事項となります(改正施行規則第121条第3号の2)。

(2)役員賠償責任保険の規律整備

会社役員賠償責任保険(D&O保険)は、優秀な人材を確保し、役員が過度の萎縮なく職務遂行するための保険として、広く普及していますが、役員の利益となる保険の保険料を会社が負担することが利益相反取引にならないかなど、会社法上の位置づけが明確でない部分がありました。このため、今回の改正でルールの明確化が図られました(改正法第430条の3)。

具体的には、役員等賠償責任保険契約の内容を決定するのに、株主総会(取締役会設置会社の場合は取締役会)の決議が必要とされました。なお、「役員等賠償責任保険契約」は、以下のように定義されており、括弧内の法務省令では、PL保険や企業総合賠償責任保険といったタイプの保険(主に法人に生じる損害を填補する保険で役員は付随的に被保険者になっている性質のもの)、自動車賠償責任保険や海外旅行保険といったタイプの保険(役員自身に生じる損害を填補するものだが、役員の職務執行の適正性が阻害される懸念が小さいもの)が指定されています(具体的な規定は改正施行規則第115条の2)。このような法務省令の除外規定によって、D&O保険に相当するものが「役員等賠償責任保険契約」に該当するという条文上の建付になっています。

【改正法第430条の3第1項抜粋】
保険者との間で締結する保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの(当該保険契約を締結することにより被保険者である役員等の職務の執行の適正性が著しく損なわれるおそれがないものとして法務省令で定めるものを除く。第三項ただし書において「役員等賠償責任保険契約」という。)

 

また、「保険契約のうち役員等がその職務の執行に関し責任を負うこと又は当該責任の追及に係る請求を受けることによって生ずることのある損害を保険者が塡補することを約するものであって、役員等を被保険者とするもの」については、利益相反の規制は適用しないののとされました。新たな規律の対象となった「役員等賠償責任保険契約」のみならず、法務省令でその定義から除外されるPL保険なども、利益相反の規制の対象外となります。前者については新たな規律でカバーされますし、後者については類型的な利益相反性の低さや実務上の煩雑さの回避を考慮して、規制対象外であることが明記されました。

公開会社については、役員等賠償責任保険契約に関する一定の事項が事業報告の記載事項となります(改正施行規則第119条第2号の2、第121条の2)。

2-3 社外取締役関係の改正

(1)社外取締役選任の義務づけ

現行法では、会社法上「上場会社等」に該当する会社(事業年度末日時点で監査役会設置会社、公開会社かつ大会社であり、有価証券報告書提出義務を負う会社)が社外取締役を置かない場合には、定時総会で社外取締役を置くことが相当でない理由の説明を求められており、社外取締役の選任を直接義務づける形でなく、間接的に選任を促す規律となっています。

他方で、証券取引所の規程などでは、独立役員の確保が義務づけられるなどコーポーレートガバナンスの取組が進んでおり、上場会社においては殆どの会社が社外取締役を選任している状況となっています。

このような状況も踏まえ、今回の改正において、上場会社等は社外取締役を置くべき旨が会社法上定められました(改正法第327条の2)。非上場会社が「上場会社等」に該当するケースは稀ですので、この改正は事実上上場会社にかかわる改正となります。

(2)社外取締役への業務執行委託

社外取締役の要件のひとつとして、会社又は子会社の業務を執行しないことが求められます。一方で、マネジメント・バイアウトや親子会社間の取引のように、会社と取締役の利益が相反したり、支配株主と少数株主の利益が相反するようなケースで、公正担保措置として、社外取締役が経営陣から独立した立場で会社のために交渉などの行為を担う場合があり、このような対応は実務上妥当なものとして認められています。今回の改正で、このような行為によって、社外取締役の要件を満たさないことにならないようにするための規律が明記されました(改正法第348条の2)。

具体的には、「会社と取締役との利益が相反する状況にあるとき、その他取締役が当該株式会社の業務を執行することにより株主の利益を損なうおそれがあるとき」は、その都度、取締役の決定(取締役会設置会社の場合は取締役会の決議)によって、会社の業務を執行することを社外取締役に委託することができるものとされ、かかる委託によりなされた業務の執行は、その業務執行が業務執行取締役の指揮命令によりなされた場合を除き、社外取締役の要件を定める会社法第2条第15号イの「業務の執行」に該当しないものとされました(執行役が業務執行を担う指名委員会等設置会社に関しては、条文上の文言が微調整されています。)。

この改正は、社外取締役を置くことが法令上求められる会社や、株主利益を考慮した公正担保のために社外取締役への業務委託が必要になるケースで問題となる事項であるため、主に上場会社に関係する改正と考えられます。

(後半に続く)

執筆者

 

AZX Professionals Group
AZX総合法律事務所
パートナー Founder
弁護士・弁理士
林 賢治

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投稿日:2021/01/27