株式会社の定時株主総会の手続について

書式/雛型 - 定時株主総会

・株式会社の定時株主総会の手続について

 

定時株主総会の手続について

※本雛型は簡易版であり、あらゆるケースに対応したものではありません。ご利用にあたっては、適宜専門家にご相談頂くようお願いいたします。 株式会社を設立した後は、少なくとも年に1度は株主総会を開催しなければならず、毎事業年度の終了後一定の時期に開催されるものが 『定時株主総会』 となります。定時株主総会では、決算に関する手続が最低限必要です。また、原則として定時株主総会の終結の時が役員の任期満了の基準点となることから、役員の改選手続も行う場合があります。ここでは、一般的な小規模閉鎖会社の定時株主総会の手続をご紹介します。

 

■1.定時株主総会手続の概要と必要書類

定時株主総会を開催するために必要な手続は、機関構成、株主数、資本金額その他の事由によって異なります。以下は、(i)取締役会あり、(ii)監査役は1名、(iii)会計監査人なし、(iv)非公開会社、(v)大会社(資本金5億以上又は負債200億円以上)でない会社であって、(vi)役員全員が定時株主総会の終結の時をもって任期満了となり再選される場合における、一般的な手続等をまとめたものです。

 

手 続
必要書類
備 考
(1) 事業年度末日
 
・事業年度は通常定款に規定され ている。
・定款において、この日時点の株主 を定時株主総会において権利行使 できる株主と定めていることが通例。
(2) 計算書類等の作成
・計算書類 ・事業報告 ・附属明細書
 
(3) 監査役へ計算書類等を提出
・計算書類 ・事業報告 ・附属明細書
(5)の取締役会までに監査報告が 受領できるよう、提出時期につい ては適宜監査役に確認しておく。
(4) 監査役による監査報告の作成 (=監査役から監査報告の受領)
監査報告
 
(5) 取締役会
 
取締役会議事録
議案1:計算書類等の承認
議案2:取締役候補者の決定
議案3:監査役候補者の決定
議案4:定時株主総会の招集
・監査役の監査を受けた後の計算 書類等について承認する。
・その他に期末配当や定款変更 なども行う場合には、株主総会で 決議する内容を決定するための 議案を適宜追加する。
(6) 計算書類等の本店での備置開始
 
・計算書類 ・事業報告 ・附属明細書 ・監査報告
・備え置く計算書類等は、(5)の取 締役会で承認されたもの。
・備置期間は、定時株主総会の日 の2週間(中14日)前から5年間。
(7) 定時株主総会の招集通知発送
株主総会招集通知、委任状
通常は定時株主総会の日の1週間 (中7日)前まで。
(8) 株主へ計算書類等を提供
・計算書類 ・事業報告 ・監査報告
定時株主総会の招集の通知に際 して行う必要があり、実務上は招 集通知と同封する方法で株主へ 提供する。
(9) 定時株主総会
定時株主総会議事録
<報告事項>  
事業報告の内容報告
<決議事項>
議案1:計算書類の承認
議案2:取締役の選任
議案3:監査役の選任
・開催期限は定款の定めに従う。
・実務上は税務申告(事業年度 終了後2ヶ月以内が原則。 但し、申告期限の延長手続より 3ヶ月以内となる場合もある。) に間に合うように開催することと なる。
(10) 取締役会
取締役会議事録
議案1:代表取締役の選定
議案2:役付取締役の選定
代表取締役たる取締役が改選 された場合(再任の場合も含む) には、代表取締役を選定し直す 必要がある。
(11) 登記申請
株主リスト
登記申請書
役員変更(再任の場合も含む) によって登記事項に変更が生 じるため、変更日から2週間以 内に登記申請する必要がある。
(12) 決算公告(官報)
 
・定時株主総会後遅滞なく行う。
・官報の申込みは、掲載日の 3週間程度前に行う必要がある ところ、具体的な申込手続及び 申込期限は、官報販売所に要確認。
(13) 確定申告
 
具体的な手続等は税務顧問に要確認。

※非公開会社···· 発行する株式の全部の内容として、譲渡による取得について会社の承認を要する旨(=株式の譲渡制限)が定款に規定されている会社をいいます。証券市場へ株式公開していない会社(いわゆる非上場会社)とは異なります。

※計算書類······· 貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表の4つの書類をまとめて「計算書類」といいます。

 

<サンプル> 上記の表に従い、以下の前提で定時株主総会を開催する場合における①~⑥の書類の作成例(PDF)を当事務所ホームページにて掲載しておりますので、そちらをご参照の上、適宜ご作成下さい。
・事業年度は10月1日~翌年9月30日。
・定時株主総会の開催日は平成28年11月30日。
・取締役は3名で、うち1名が代表取締役社長。
・監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定する旨の定款規定はない。
・再選される役員は全員株主総会及び取締役会に出席し、席上で就任を承諾する。

 

■2.スケジュール作成のポイント

 

定時株主総会のスケジュールを作成するには、まず定時株主総会の日をいつにするかを決定します。そして、定時株主総会の日を基準に、各手続を実施する日を決めていきます。スケジュール作成の際には以下の点にお気をつけ下さい。

・法律上、「●日前」や「●週間前」とは、「中●日前」又は「中●週間前」という意味になりますので、スケジュール作成の際には注意が必要です。例えば、11月30日の2週間前の日は11月15日となります。

・「●日前」や「●週間前」の日が土日祝日に該当する場合には、その前の平日までに手続するべきと解されます。例えば、11月30日の2週間前の日である11月15日が日曜日の場合には、11月13日の金曜日を2週間前の日として考えます。

・「●日以内」や「●週間以内」とは、原則としてその日はカウントせず、翌日から数えて「●日」又は「●週間」の日までとなります。例えば、11月30日付で役員変更した場合、12月1日から数えて2週間目の日である12月14日までに変更登記を申請する必要があります。

 

■3.監査役の監査範囲の限定について

 

非公開会社であって、監査役会及び会計監査人を置かない会社は、定款に規定することで、監査役の監査の範囲を会計監査に限定することができます。監査範囲の限定の有無によって、以下のような点が異なります。また、監査役の権限を会計監査に限定した場合には、その旨を登記する必要があります。

 

 
監査範囲の限定なし
監査範囲の限定あり
取締役会への出席
出席義務あり。
出席義務なし。 なお、任意で出席することは可能。
事業報告に関する監査報告の内容
法令に定める事項を網羅する内容で作成する。
事業報告を監査する権限がないことを明らかにすれば足りる。
定時株主総会の招集通知に際して提供する監査報告
事業報告に関する監査報告と、計算書類に関する監査報告の双方を提供する。
計算書類に関する監査報告は提供するが、事業報告に関する監査報告の提供は不要。
株主総会に提出する議案等についての調査
調査対象となるのは、株主総会に提出される議案等の全て。
調査対象となるのは、株主総会に提出される議案等のうち会計に関するものなど、法令に定めるものに限定される。


■4.株主総会に出席できない株主の議決権の行使方法について


株主総会に出席できない株主が議決権を行使する方法としては、(i)代理人による行使、(ii)書面による行使、(iii)電磁的方法による行使があります。株主数が1,000人以上の会社を除いて、(ii)又は(iii)の方法を認めるかどうかは会社が自由に決められますが、認めた場合には、株主総会の招集期間が2週間となったり、議案の内容を詳細に説明する「株主総会参考書類」の作成が義務づけられたりと、会社の負担が大きくなりますので、小規模会社においては(ii)又は(iii)の方法は認めない方が良いでしょう。

なお、(i)の方法による場合には、「委任状」を株主総会の招集通知に同封する形で株主へ送付し、当該委任状に基づき代理人が議決権を行使することが一般的です(サンプルも(i)の方法を前提としています。)。


■5.決算公告について


決算公告は、原則として定款に定める公告方法にて行います。小規模会社の定款では、公告方法を官報としている例が多いことから、■1のスケジュール案では官報にて決算公告を行うことを前提としています。なお、定款上の公告方法が官報であっても、決算公告に限り自社のホームページにて行う方法もありますが、ここでは詳細は省略します。

以上