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スタートアップだからこそ、資本政策を知ろう!!

昨年秋から何度か関西・九州に出張がありました。いつものオフィスと違った環境で働くのも、気持ちがリフレッシュされていいものですね。なんだかクリエイティブな面が刺激される感じです。

出張先ではスタートアップのベンチャー企業経営陣の方々と会う機会も多かったのですが、創業から早い段階で資金調達を成功させている会社も少なくないようです。でも詳しく話を聞いてみると、本当にそれで大丈夫なのかな?と心配な面もありました…

1.資本政策って何だ?

ベンチャー企業の資本政策は、IPOまでに行う(1)事業計画に沿った資金調達と(2)創業者や経営陣の持株比率の維持という2つの要素を最適化するための施策方針ともいえます。

(1)事業計画に沿った資金調達

仮にIPOを前提としていなくても、会社として成長を指向している限り、収益見通しや研究開発計画、人員計画を経営の一環として立案するものです。こうした事業計画等を実現するためには会社のキャッシュフローと適切に連動している必要がありますから、「いつ」「いくら」調達するかを考えておくことは、会社経営を行う上で必要であることは言うまでもありません。

(2)創業者や経営陣の持株比率の維持

新株発行による資金調達の都度、創業メンバー以外の外部株主の議決権割合が高まります。自分たちのシェア低下をコントロールしておかないと、影響力を持った外部株主と意見衝突したり、敵対的な要求をされたりと、自主的な経営が制約される可能性があります。

したがって、一定の協調をして頂ける信頼感ある安定株主作りも重要となります。つまり、持株比率の維持を検討することは、「誰から」「どのような方法で」ファイナンスするかを考えるということでもあります。

ちなみに、持株比率は株主総会決議での経営への影響度が一つの基準(議決権の3分の2以上で特別決議、2分の1超で普通決議が可決)となり、例えば役員の選任や報酬に関しては普通決議になりますので、少なくとも経営陣で過半数のシェアがないと自分達での落ち着いた長期経営が阻害されるといったケースも出てきます。(もちろん3分の2以上を維持できればベターですが。)

話は戻ってスタートアップのお話ですが…

創業してすぐのタイミングで好条件のファイナンスの提案が舞い込むことがあるかもしれません。

例えば、億単位の出資を打診されたら、

→資金そのものは多いに越したことはありませんが、当面必要のない金額を得ることによって、不必要に持株比率を落とさないか、もう一度確認してみてください!

また、例えば、企業価値を自分たちが考えている以上に評価されたら、

→不相応に高い株価でファイナンスをすると、持株比率の維持にはプラスですが、その次以降のファイナンスでは逆に高株価のトラックレコードが制約になることも多く、余計な交渉が発生したりとタイミングを逃してしまうケースもあります。慎重に適正株価について検討してみてください!

2.その他の留意事項

(1)ストックオプション

IPOを目指す企業においては、役員や従業員のインセンティブを目的としてストックオプションを活用する方法が一般的です。資本政策上も現物株式とは別に、将来現物株式となり得る潜在株式としてその異動を考慮しておきます。

ストックオプションは、経営者の持株比率の維持にも貢献しますが、逆に特定の者に集中した付与は不公平感を醸成しますし、潜在株式の比率が10%を超えると上場審査上も支障が出る可能性があるので、資本政策上で十分に考慮しておく必要があります。

(2)増資の引受先

ベンチャーキャピタル(VC)は、投資した株式を売却して自己の収益を得るビジネスモデルですから、IPO後はVCからの株式売却が生じて株価に影響することについては頭の片隅に入れておくことが必要です。

また、VCによって、投資先への関与の方針が大きく異なるため、単に資金面だけでなく、VCからの各種サポートなども考慮して、自社の方針や希望に合致するVCを選択することが重要です。自社にあったベンチャー・キャピタリストからの投資を受けると、資金面以外でのサポートも受けられて会社が飛躍的に発展することがあります。

逆に、個別の会社やファンドを通して間接的に反社会的勢力に関連したところが割当先となってしまった場合は、IPOそのものが出来なくなってしまいますので、増資時には引受先についてリスクを検討しましょう。

(3)税務対応

税務上は原則として時価での取引が要求されており、例えば時価と異なる価額で増資や株式譲渡が行われたり、ストックオプションの権利行使価額が時価よりも低い価額で設定されると、後日に全く想定していなかった多大な課税が生じる可能性があります。したがって、常に時価を意識した資本政策の策定が必要になります。


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