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ベンチャー交渉術 その3 交渉に判定負けはない!-声の大きな交渉相手はラッキー!-

2014/01/24

GK

世の中、インフルエンザ等がはやり始めていますが、皆様体調大丈夫でしょうか。

契助」なら万一体調不良の場合でも自宅で契約書等を作成できますので、是非使ってみてください!

 

今回は趣向を変えて、私の体験談から話してみたいと思います。

今までAZXブログで体験談的なものはなく、ブログに統一感がないですが、たまには“息抜き”ということで。

私は弁護士として、契約や紛争などについて日常的に「交渉」の対応をしていますが、実は、弁護士になる前のコンサルティング会社勤務時代から「交渉」の連続でした。

私は司法試験合格後、一度きちんと会社に入って修行を積みたいと考えてコンサルティング会社に入りました。修行のために入ることを、採用の最終面接で正直に説明したところ、「皆そんな感じで入ってくるから、全く問題ない!」と言われ、幸運にも採用していただけました。いまだにとても感謝しています。

1. 初めての交渉

そして、運よく経営戦略チームに配属され、社会人として最初の仕事として、ある日本企業の海外工場の組織改革のプロジェクトにアサインされました。

私がアサインされた段階で、プロジェクトは大荒れの状況でした(そのように新人の私の目には映りました。)。海外工場からすれば、自分たちの組織のことについて本社が外部のコンサル企業を入れて、変革を迫ってきて、場合によっては降格させる人も出ることは到底容認したがたく、当然反発されます。交渉に行くプロジェクトメンバーも、海外工場に行ったら、後ろから鉄パイプで殴られるかもと、半分冗談、半分本気で言っていました。

新人の私は当然本社のプロジェクトルームでバックオフィスを担当していたのですが、プロジェクトの各地で局地戦等が勃発し、その火消しに各メンバーがアサインされていく中、人手が不足したためか、まだ社会人になって6ヶ月くらいしか経っていない私に向かて、「カツ、A国の工場にいって交渉してきて。」と命じられました。

えっ、僕?いきなり?

何かまずいことしゃべっちゃうかもよ?!

実は、私がこのプロジェクトにアサインされて1ヶ月ほど経ったとき、やっとプロジェクトの状況が分かってきたなといい気になって、クライアントとのミーティングで「このプロジェクトの○○の点改善した方がいいんじゃないでしょうか。」と生意気にいろいろ話していたら、上司から

「おまえは黙ってろ!しばらく“地蔵”だ!」

と一喝されてしまいました。

そのため、しばらくミーティングでは命令通り不本意にも「地蔵」を貫いていたら、ある時上司から「あれ、おまえ何でこの頃急に何にも言わなくなったの?」と言われ、

「え、だって、地蔵してろって、言われたので。。。」と答えたところ、

「あ、そうだっけ?!よく覚えてないけど、『地蔵』解除する。」

と言われて、晴れてプロジェクトで発言できるようになりました。

話は戻りますが、地蔵解除からそれほど時間の経っていない自分が(しかもまだ新人ですけど)、一人で交渉に行くのですか?!大丈夫かな?とさすがに自分でも思い、

上司にもう少し詳しい指示を求めたところ、

「おまえは、ただ、ひたすら説明してこい。何も決めるな。」

という骨太の指示をもらいました。

胆力のある頼もしい上司でした。(とても尊敬しています。)

それにしても、3日も交渉日程があるのに、ひたすら交渉して、何も決めるなとは、ある意味、“忍”の一文字で修行僧のようだな。。。と思いつつ、A国に向かいました。

交渉初日、いきなりA国側のトップ・スリーほか担当者10人ほどに囲まれ、「この若者、何しに来たんだ。すぐ叩きだしている。」と言わんばかりに詰め寄られてしまいました。

2. ザ・マシンガン

しかし、やるしかない。

ひたすらプロジェクト側の改革案と理由を説明し、それに対して、あれこれ質問の矢が飛んできて、それを受けたり、かわしたり、かわし切れずに刺されたりしながら、ヘロヘロになりつつ交渉を続けました。

その中で、No.3の人が、とても声の大きいマシンガンタイプで、「それはおかしい」「今がベスト!」と連呼されて、いろいろと責め立てられました。

「今がベスト!」はプロジェクトを通じて100回くらい聞いた感じがします。(今では良い思い出として一生忘れないと思います。)

しかし、私には決定権限がないのでひたすら聞き、反論するしかありません。ザ・No.3からあれこれ責められているうちに、だんだんA国側の事情等もよく分かってきます。相手が何を気にして反対しているのか、根本的には何が問題なのか、何を望んでいるのか、等々いろいろな情報が私の頭に入ってきます。

「まあ、すごい剣幕で責め立てられているけど、別に殴られるわけではないし。腕力ならこっちの方が自信あるし。あ、でも、10人は無理かも。でも、乱闘はないよね?!」などと思いつつ、交渉を続けているうちに、一つのことに気付きました。

相手は、声が大きく僕を攻めたてているけど、別に審判がいるわけではなく、交渉経過の優劣で判定負けということはないよね。

つまり、僕が「イエス」と首を縦に振らない限り、負けはないということだ。

だから、どんなに責め立てられても、ある意味ノー・プロブレムじゃん!

相手は、こちらが「イエス」と言わないから、あの手この手で攻撃してくるけど、それに合わせて、相手方の情報が少しずつ洩れてて、これって情報のダダ漏れ状態では?

もちろん、重要なことは言わないように配慮しているつもりだろうけど、こちらが知らなかったことを教えてくれるだけでもとってもラッキーな状況では?!

じゃ、ますます頑張ってもらいましょう!

その方が上司に報告するネタも増えるし!

ということで、責め立てられることにすっかり慣れてきた私は、顔は真剣にしつつも、内心「お、また来たねー!それいただき!」と情報収集に努めて、第1回目の交渉の役目を果たしました。

3. 黙っている人は手強い

その後プロジェクトもなんとか進展してきて、今度は私がA国の人々を「説得」しなければならないフェーズに来ました。

初回は「ただ説明してこい」という指令だったのですが、プロジェクト成功のためには最終的には説得して組織改革に対して相手に「イエス」と言ってもらわなければなりません。

つまり、今度は逆の立場で、こちらがどう優勢的な状況で説明して、相手の反論を撃墜しても、相手が「イエス」と言わない限り、優勢勝ちはなく、目的が達成されないのです。

この段階に至って、自分にとって非常に困った状況に一つ気付きました。

それは、いつも激しく攻防している相手のNo.3の人には決定権がなく、彼は「イエス」という権限がないのです。つまり、彼をいくら打ち負かしても「イエス」は獲得できないといことになります。

じゃ、相手にするべきなのは誰?

それはNo.2の人だと分かってきました。彼は現場からの信頼がとても厚く、彼が「イエス」と言えば周囲も納得するが、彼が「ノー」と言えば絶対に妥結できないキー・パーソンだと分かってきました。

ところが、ザ・No.2は、何も言わない。。。。

いつも交渉の場にはいるのですが、ムスッと話を聞いて、No.3と私の攻防を見ていて何も言わない。。。

うーん、これでは、No.2は、私の言っていることに少しは納得してくれているのか、いまだに全く反対なのか、それすら分からない。。。

このままのペースで交渉を進めていれば「イエス」にたどり着けるのか、または全く方向性を変えないと「イエス」にたどり着かないのか、全く見えない。

ことここに至り、私は、「何も言わないこと」それ自体も、交渉においてはとても有効な手段になるといことに思い至りました。

何も言わない相手に「イエス」と言わせることは至難の業です。

何も言ってくれないから、冗談で場を和ませようとしても、一人で滑ってしまうし。。。

「これ、どうですか?」と聞いても、ムッとしているから、賛成なのか、反対なのか分からないし。。。

黙っているから、情報を引き出せず、攻撃ポイントが分からないのです。

交渉の過程で、相手からの情報を収集し、分析することは極めて重要なことなのですが、それを全く封じられてしまうということです。

つまり、交渉妥結というゴールに対して、手ごわいのは、ガンガン大声で攻撃してくる人よりも、何も言わずに情報を出してこない人だということです。

結局この件は、No.2から情報を引き出すことは難しいので、本社の人や交渉相手のA国の人との会話などから、No.2が実際には何を懸念しているのか、何を解決すれば「イエス」と言ってくるのかを分析、検討して、最終的には何とか首を縦に振ってもらうことができ、プロジェクトはめでたく完了しました。

4.  弾切れを待って交渉開始!

私の体験談が長くなってしまいましたが、今回のブログのテーマである「交渉に判定負けはない! - 声の大きな交渉相手はラッキー!-」という点は、上記の逸話からご理解いただけたのではないでしょうか。

ビジネス上の交渉では、審判がいない以上、相手が優勢であっても、自分が「イエス」と言わなければ、判定負けという事態はないのです。

相手がかさにかかって口先で攻め込んできて、脅し文句的なことを言ってきても、そのストレスに負けて「イエス」と言ってしまうことがなければ、負けることはないのです。

優勢に攻撃している相手は、あの手この手で攻め方を変えて、感情的に攻撃してきます。

しかし、あの手この手を出すためには、新たな情報を提供していることになるので、その情報を有り難くいただきましょう!

攻撃を受けるのは精神的には大変なことです。

しかし、気持ちを切り替えて、「判定負けはないからね。」「あ、また教えてくれた。ラッキー!」と思えると、多少はストレスも和らぎます。

相手にとっても攻撃する手は実はそれほどないことが多く、交渉の過程で何度も同じことのリピートになってきます。

「それ、前も聞きましたよ。」

と少し冷たくと切り返してみましょう。

相手が攻撃型のマシンガンタイプの場合、こちらも大きな声で反論すると戦闘が無意味に激化してしまいます。

大声でガンガン攻撃してくる相手も言い尽くして最終的には攻撃のネタがなくなります。

そして、弾を撃ち尽くして必ず最終的にはこう聞いてきます。

「で、どうしたいの?」

さあ、ここからあなたの真の交渉がやっと始まるのです!

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 マネージングパートナー CEO
後藤 勝也
Gotoh, Katsunari

契約や紛争の交渉において、勢いよくまくし立てられるケースがあります。

しかし、「勢い」に圧倒される必要は全くないのです。

契約交渉に審判はおらず、判定負けはありません。

冷静に対処して、粘り強く交渉し、目標を達成しましょう!

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