AZXブログ

ベンチャーにおける商標の重要性

2013/07/05

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皆さんこんにちは。AZXブログ初登場の弁護士(弁理士)の林です。
先週は株主総会シーズンで業務が多く更新できなかったため、2週間ぶりのブログとなります。この間に、「ネット選挙のビジネスチャンス」を書いた菅原弁護士が、TBS「みのもんたの朝ズバッ!」(7/3)、テレビ朝日「モーニングバード」(7/4)で、「ネット選挙に詳しい弁護士」としてコメントしました。

さて、AZXはワンストップサービスとして弁理士の業務も提供していますが、中でも商標は頻繁に相談を受けるベンチャー企業共通の関心事項です。商標については、菅原弁護士の「マカンコウサッポウって使っていいの!?」でも話題が出てきましたが、今回は基礎的なトピックとして、

1 商標出願の必要性~他社にとられるとどうなる?

2 どんな名称でもいいか~「GEORGIA」って商標?

を取り上げたいと思います。

 

1 商標出願の必要性~他社にとられるとどうなる?

皆さんご存知のとおり、商標は特許庁に商品名・サービス名を出願して、登録されたらそれを独占使用でき、他社の類似商標の使用を禁止できる制度です。商標権のことを考えずに漫然とネーミングして使用していると、他社が同一又は類似のサービスで同一又は類似の商標を出願・登録した場合、その名称を使用できなくなります。

「問題があれば変えれば良い」と思われるかも知れませんが、サービスが成功してブランド価値が高まっていれば、名称の変更は将来の収益への打撃となりかねず、サービス名が記載された各種資料・媒体等の変更コスト、それまで名称浸透に費やしてきた販促費の損失など、多大な損害が生じる可能性があります。また、名称を変えてもそれまでの商標侵害による損害賠償義務は免れません。

特に、このような問題がIPO直前に判明した場合には、会社の抱える賠償責任の潜在リスクや、将来への売上予想への影響などから、上場スケジュールの見直しとなってしまうことも考えられます。

なお、「先使用権」という制度をご存知の方も多いと思います。先に使い始めていれば、後から商標をとられても大丈夫・・・と勘違いされていることがありますが、使用する名称が自己の商品・サービスの名称として「需要者に広く認識されている」という要件(周知性)をみたさないと、先使用権は認められません(商標法32条)。周知性の細かい説明は省きますが、少なくとも単に長期間使っている等の理由では先使用権は認められません。また、先使用権は名称が周知性を獲得している商品・サービスだけに認められ、今提供しているサービスで先使用権が認められた場合でも、同じ名称を別種の新規サービスで使用するのは、出願・登録された他社の商標権に対する侵害ということになってしまいます。

このように、商標侵害は結構インパクトのある問題になってしまいますし、先使用権による救済もあまり期待できないので、他社に先にとられてしまわないよう、サービス名、商品名については早めの出願を検討することが重要です。

 

2 どんな名称でもいいか~「GEORGIA」って商標?

商標出願の必要性が分かったところで、どんな名前でも商標になるのでしょうか。「TANAKA」(社長の苗字)、「吟醸」といった名前は登録できるでしょうか?

お察しのとおり、どんな名前でも商標登録できるわけではありません。細かいルールは色々あるのですが、主なものを挙げると、

(1) 商品・サービスの普通名称(例:おまんじゅうに「まんじゅう」という名称を付ける)、

(2) 産地・品質等を普通に表示するもの(記述的商標)

(3) ありふれた氏

は、いわゆる識別力を欠くものとして、原則登録不可です(商標法3条1項)。「TANAKA」や「吟醸」は、基本的に商標登録は難しいということになります。

もちろん、例外はあります。

缶コーヒーの「GEORGIA」は有名ですが、昭和61年の最高裁判決で、「GEORGIA」は産地(米ジョージア州)を表示する記述的商標として、識別力を欠くと判断されています。しかし、IPDL(特許庁の電子図書館)の商標検索で調べると、現在コカコーラさんが「コーヒー、ココア」の指定商品で商標登録されています。

記述的商標であっても、長年の使用実績により誰の商品名か特定できるようになった場合には、識別力を獲得したものとして、商標登録が可能になります(商標法3条2項)。「GEORGIA」は当初、コーヒーとココアのほか「紅茶」も指定商品に入れて出願しており、紅茶についてはこの識別力獲得が認められなかったようですが、コーヒーとココアに商品を絞った出願では既に有名になっていることで識別力獲得が認められ、最終的には登録に至っているようです。

なおご参考までに、「正露丸」の商標については、同名商品の普及によりクレオソートを成分とする整腸剤を指す一般名称になった(普通名称化した)ということで、商標の効力が否定された裁判事例があります。これは、普及し過ぎて逆に識別力がなくなってしまったという意味では、GEORGIAとは逆のケースと言えそうです。

実践的なお話に戻りますと、「TANAKA」とか、「吟醸」でも、前後に何か言葉を足したり、ロゴーマーク化して出願するといったことで、識別力が認められる場合があります。ただこの場合は、他人の類似名称使用を禁止できる権利範囲も狭くなりますので、そのあたりのバランスを弁理士に相談した方が良いと思います。

ちょっと内部のお話になりますが、AZXのサービス形態であるOne Stop Serviceも、以前ダメ元で出願したら、サービスの質等を普通に表示する記述的商標であるとして、拒絶されてしまいました。ただこれも無意味ではなく、他社が同様にOne Stop Serviceを出願しても商標はとれない(よって商標侵害は生じない)ことが確認できます。したがって、商標がとれるか不明だが、安心して使用継続したいという場合に、あえて出願してみるという対応も実務的には行われています。

以上のように、具体的な名称によって商標をとれるかどうかも変わってきますので、サービス・商品名決定の段階から、商標戦略を弁理士に積極的に相談した方が良いということになります。

執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー Founder
林 賢治
Hayashi, Kenji

今回は、基礎的でありながら、案外誤解されていることも多い事項を、簡単に説明させていただきました。

商標は意外に奥が深いところがあり、出願の仕方で結果が大きく変わってきますので、AZXにお気軽にご相談下さい。

商標の問題は他にも色々ありますので、また別の回でご説明の機会を設けたいと思います。

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弁護士 マネージングパートナー COO
菅原 稔
Sugawara, Minoru
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濱本 健一
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