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新株予約権付社債について(2)

2008/02/22

~ AZX Coffee Break Vol.7 〜

前回は、新株予約権付社債の概要について説明をしてきたが、今回は新株予約権付社債のうち、いわゆる転換社債型といわれる新株予約権付社債について説明する。

(1)従来の転換社債と転換社債型の新株予約権付社債の違い 平成14年4月施行の商法改正以前においては、旧商法第341条ノ2以下に「転換社債」についての規定があり、新株引受権付社債と分けて規定されていたが、同商法改正以後においては、「新株予約権付社債」に全て統一されたため、従来の転換社債に近い形で設計するには、新株予約権付社債において、代用払込すなわち新株予約権の行使においては社債の償還に代えてのみ行うことを規定する方法をとり、これを転換社債型新株予約権付社債と呼ぶとすることについては前回説明したとおりである。もっとも、従来の転換社債に関する考え方をそのまま適用することができない面もあるため、以下に転換社債型新株予約権付社債の設計上の留意点を説明する。

(2)新株予約権付社債の有利発行についての考え方 従来の転換社債においては、旧商法第341条ノ2第2項により譲渡制限会社が第三者割当の方法により発行する場合や転換の条件が有利である場合を除いては取締役会決議のみで転換社債を発行することができるのが原則であった。しかしながら、転換社債型新株予約権付社債を発行しようとする場合において、従来の転換社債に近い形で新株予約権の発行価額を無償として発行しようとすると特に有利なる条件の新株予約権が付された有利発行にあたり商法第341条ノ3第3項の準用する商法第280条ノ21により株主総会の特別決議が必要であると解されてしまうのではないかが議論となっている。

この点、商法改正後においてはオプション権の経済価値が把握できることが前提となっており、一般の新株予約権に関する規定の考え方と整合性をとり、有利か否かは新株予約権自体の価値を基準として判断するのが妥当であるという立場にたてば、新株予約権付社債に付されたなんらかの価値を有する新株予約権の発行価額を無償とすることは常に有利発行に該当すると考えられることとなる。これに対して、新株予約権付社債が有利発行にあたるか否かの判断にあたっては、新株予約権の価値と新株予約権の発行価額だけで決めるものではなく社債の利率等も考慮して定めるべきとの立場にたてば、新株予約権の発行価額が無償であっても直ちに有利発行にあたるものではないと考えられる。この考え方は、新株予約権部分を無償と決議した場合であっても、仮に社債部分の利率が同じ条件下の普通社債の利率と比べて低く設定されている場合等には、結局社債部分の経済価値とその発行価額との差が新株予約権部分の価値を補っているのであり、その場合には、新株予約権付社債発行の対価として発行会社に支払うべき正当な金額が全体的に見て会社に入っているのだから、「特に有利なる条件」でないということが根拠になっていると思われる。

ベンチャーにおいては、税務上の問題が生じる場合を除けば、商法第341条ノ5第1項但書により、多くの場合譲渡制限がついているために第三者割当の方法により発行する場合にはいずれにしても株主総会が必要であり、また、株主総会を開催すること自体がそれほど大変なことではないため有利発行にあたるとして発行していることが多いようである。しかしながら、上場会社においては従来の転換社債と比べ取締役会決議のみで発行できず、発行手続が厳格となることから資金調達活動の機動性が大きく損なわれるとして有利発行と捉えることに反対する意見もあり、有利発行にあたらないとして株主総会を経ずに新株予約権の発行価額を無償とする新株予約権付社債を発行する例もあるようである。
なお、有利発行にあたらない場合として取扱う場合には、商法第341条ノ15第4項の準用する商法第280条ノ23の定める新株予約権の発行事項の通知又は公告が必要となるところ、この公示の中に記載すべき「新株予約権を無償で発行する場合にはその理由」とある部分をどのように公示すべきであるのかという問題が次に生じる。例えばブラック・ショールズ・モデルを用いて新株予約権の理論価値を算出した場合には、その算出に使用したデータまで記載することが必要か否かという議論がある。また、そもそも公正価値を記載する必要もなく、普通社債との利率の比較や新株予約権と社債部分の一体性という特徴のみ記載すれば足りるとの見解もある。新株発行事項の公示を欠くことは新株発行の無効原因となり得るという判例があることから、これとパラレルに考えて、新株予約権付社債の発行についても発行事項の公示が適法でないことが無効原因となり得ると解される可能性が否定できないために、公示内容はどうあるべきかというのは重要な問題であるが、まだまだ議論が成熟しておらず、実務上の運用も統一されていないようである。

(3)代用払込の強制の定めの効果 転換社債型新株予約権付社債の場合、取締役会の発行決議に際して、商法第341条ノ3第1項第7号及び同項第8号の代用払込について定めるかを検討することとなる。この事項について決議した場合には、社債の発行価額と新株予約権の行使により払い込むべき額は同額でなければならず(商法第341条ノ3第2項)、また、新株予約権付社債申込証及び新株予約権付社債券に、新株予約権の行使の際に払込を取扱うべき銀行又は信託会社及びその取扱いの場所を記載しなくてよい(商法第341条ノ6第2項第3号但書及び第341条ノ8第2項第5項但書)という効果がある。さらに、新株予約権の行使の際に銀行等への払込という行為が必要ないことに伴い、払込金保管証明を登記書類として添付する必要はなく、代わりに代用払込による権利行使であることを証する書面又は代用払込に関する事項を定めた取締役会議事録を添付することとなる(商業登記法第82条の2)。

(4)一括法か区分法か 上記代用払込の強制について決議している場合で、かつ、要項に以下のいずれかの事項を記載している場合には、新株予約権付社債の会計処理について一括法を用いることができる(「新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(平成14年3月29日 企業会計基準委員会4頁))ので、一括法を用いることを希望する場合は、下記の要件も満たすような形で設計する必要がある(詳細は弁護士や会計士に相談されたい)。
A) 新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めてないこと。
B) 新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること。

(5)新株予約権の消却条件 転換社債型新株予約権付社債を発行する場合には、社債が償還されると代用払込ができなくなるが、実務的には商品性の混乱を避けるべく、社債が償還された場合には新株予約権部分も当然に消滅することを何らかの形で明記しておいた方が無難であろう。例えば新株予約権付社債の発行要項において、「新株予約権付社債の償還が行われた場合は、その社債に付された新株予約権は当然に消滅するものとし、何らかの事由により新株予約権のみが存続することとなった場合であっても、会社はこれを無償で消却することができるものとする」と規定する例もある。また、これに関連して、同様の理由により社債が、繰上償還、買入消却、期限の利益の喪失による償還を含め何らかの理由により期限前に償還された場合に新株予約権が存続しているか否かが理論上明確でないところもあるため、かかる場合には以後新株予約権は行使できない旨を新株予約権の行使の条件として定めたうえ、かかる場合が新株予約権の消却事由となる旨を明確にしておいた方がよいであろう。

(6)端数償還金の取扱について 転換型新株予約権付社債は行使に際して代用払込が強制されるものであり、①新株予約権の行使があったときは、新株予約権に付された社債の全額の償還に代えて払込金額全額の払込があるものとされることになること、及び②社債の発行価額と行使に際して払込みをなすべき額は同額であることが要求されていることから、発行株数の計算の結果、1株未満の端数が生じても、これに相当する現金償還がなし得ないと解される(「商事法務No.1646」21頁)。この点は従来の転換社債と異なるところであるので、特に注意されたい。

(7)転換社債型新株予約権付社債の新株式の効力発生時期 転換社債型新株予約権付社債の場合、新株予約権を行使しようとする者の請求があったときは、払込金額全額の払込があったものとみなされることとなり、この場合は従来の転換社債と同様、払込取扱銀行を経由しないで、直接発行会社に対し新株の発行請求を行うことができると解されることとなる。したがって、新株の効力発生は、請求受付場所である発行会社または名義書換代理人に書類等が到達した時期に発生することとなると考えられる。この点を明確にするべく新株予約権付社債の発行要項において「新株予約権の行使の効力は、会社の指定する場所にて新株予約権行使請求書に新株予約権付社債券を添付して会社に提出したときにこれを生じるものとする」旨を規定しておいた方がよいであろう。

(文責:弁護士 雨宮 美季)

 

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