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2号ファンド組成の論点(第1回)GPビークルの選択 ~同一LLPか、新規設立か~

2026/03/31

AZXの弁護士の杉山です。

私は、スタートアップの支援も行ってきた一方で、ベンチャーキャピタル(VC)のファンドの組成などの法務支援もAZX入所以来一貫して対応しています。

このような背景もあり、先日VCファンドの仕組みなどを解説するYouTube動画を配信しました。

私自身は割と多趣味な方でして、ワインのブラインドテイスティングのYouTube動画に出演をしたことはあったものの、弁護士としての動画の出演はこれが初めてになりまして、このブログなども含め、これまでの経験をいかして情報発信もしていきたいと考えています。

上記の動画は主に起業家向けのものでしたので、今回はVC向けのコンテンツになります。具体的には、2号ファンドを作る場合の留意点のうち、まずは「GPビークルの選択」について、法務面で論点となる事項を概観するものになります。ニッチな論点も多いかもしれませんが、実務的な内容も含みますのでぜひご覧下さい。

(1) 同一のLLPを使うべきか、ファンドごとに異なるLLPを使うべきか

VCファンドは、いわゆるGP-LLPスキームを用いることが一般的です。

詳細は割愛しますが、このスキームは、有限責任事業組合(LLP)を、投資事業有限責任組合(LPS)の無限責任組合員(GP)とするスキームになります(詳しくは、上記の動画も視聴いただければと思います。)

1号ファンドをGP-LLPスキームにより組成した場合においては、2号ファンドについても同様のスキームを選択することが一般的であり、その際に、新たにLLPを組成するのか、それとも1号ファンドのGPであるLLPを、そのまま2号ファンドのGPとして継続して利用するのかということを検討することになります。

(2) 検討ポイント

そもそも、同一のLLPを、複数の(LPSなどの)ファンドのGPとすることが可能かという点についてですが、VCファンドが順守する必要がある、金融商品取引法などの法令との関係では、この点について特段制約があるわけではありません。そのため、同一のLLPが複数ファンドのGPとなること自体は法的には可能になります。

他方で、2号ファンド以降の具体的な運用を考えた場合には、下記のとおり、いくつかの留意点があります。

① いわゆるキャリードインタレスト等のGP内の配分について

複数のパートナー(LLPの組合員)が運用にかかわっているファンドの場合は、ファンドの号数によって、各パートナーの関与度合い等が異なっていく可能性があります。この場合は、当該関与度合い等に応じて、いわゆるキャリードインタレスト(≒成功報酬)や、管理報酬などの報酬の、パートナー間の配分比率(分配比率)をファンドごとに変えるというケースがあり得ます。

上記について、LLPはその組合員間の分配の自由度が高いビークルです(有限責任事業組合契約に関する法律(LLP法)第33条)。そのため、上記のようにファンドごとに異なる分配比率を設定することが可能です。

但し、疑義が生じないように、分配のルールを正確に記述する必要がありますし、そのような分配となる理由についてLLPの組合契約内で明記する必要があります(同法施行規則第36条第3項第2号)。そして、このように出資比率と異なる分配の比率とする場合には、業務の関与度などに連動させることについて言及するなど、税務上も問題がない形とする必要がある点も留意する必要があります。

また、複数のパートナーがいる場合において、LLPを通じた、LPSなどのファンドに対する実質的な出資額がファンド間で異なる場合には、当該出資額に連動してファンドからLLPに分配されるべきキャピタルゲイン(≠キャリードインタレスト)の比率を、当該実質的な出資比率に合わせることが合理的です。

例えば、以下のような出資の経緯を辿った場合には、上記のキャピタルゲイン部分の配分についても、「(iii) LLPに対する出資総額(出資比率)」のままにせずに、各LPSに対する実質的な出資額(比率)である下記の(i)及び(ii)に応じて、配分することを検討することになります(当然のようにも思えますが、下記(iii)の出資比率と異なる分配とする以上、この点についてもLLPの組合契約上で明記する必要があるということになります。)。

  (i) 1号LPSへの出資額(比率) (ii) 2号LPSへの出資額(比率) (iii) LLPに対する出資総額(比率)
組合員A 100万円(50%) 300万円(75%) 400万円(66.6…%)
組合員B 100万円(50%) 100万円(25%) 200万円(33.3…%)

② 管理工数について

また、当然ながら、ファンドごとにLLPを組成する場合には、その管理工数が増えることになります。

具体的には、以下のような工数が増えてしまうことが懸念されます。

(i)     LLPの組成や解散・清算、事業年度ごとの決算などの一連の手続をLLPごとに行う必要が生じてしまう。

(ii)    LLPの登記の管理工数が増える。
※LLPは、事務所の所在場所や組合員の住所などを登記する必要があり、これが変更になった場合には、LLP単位でそれぞれ変更登記の対応をする必要があります。そして、LLPの数が増えてきてしまうと、LPSの登記とも相まって、オフィスの移転をするだけで複数回の登記申請が生じることにもなります。

(iii)  適格機関投資家等特例業務の届出及びその管理をLLPごとに行う必要が生じてしまう。
※VCファンドは、金融商品取引法上の適格機関投資家等特例業務の届出によりファンド運用をすることが一般的であるところ、当該届出はLLP単位で行う必要があります。また、事業年度ごとの財務局への事業報告や、届出事項が変更になった場合の変更届出などについて、LLP単位でそれぞれ行うことになります。

③ 将来的にGPを構成するパートナーの変動可能性について

上記を見てみると、ファンドごとにLLPを分けない方がよいようにも思われますが、実務上は、いくつかの観点から、ファンドごとに異なるLLPを用いるケースが比較的多い印象です。

まず、ファンドごとにパートナーの構成が変わりうることが想定される場合には、同じLLPを複数ファンドのGPとしている場合に問題が生じてしまいます。

具体的には、金融商品取引法上、LLPの運用にあたって、大要、以下のルールを遵守する必要があります。すなわち、LLPの組合員全員が、(i)LLPの業務執行の決定について、その意思表明が求められることになり(下記一)、かつ、(ii)業務に常に従事することが求められることになります(下記二のイ)。

(なお、上記(ii)については、下記二のロに依拠することもあり得ますが、「特に専門的な能力であつて出資対象事業の継続の上で欠くことができないもの」という要件の解釈に幅がありうる関係で、保守的には、上記の「従事すること」という要件に依拠する前提で整理したほうが安全です。)

【金融商品取引法施行令第1条の3の2】

一 出資対象事業(法第二条第二項第五号に規定する出資対象事業をいう。以下この条及び次条第四号において同じ。)に係る業務執行が全ての出資者(同項第五号に規定する出資者をいう。以下この条において同じ。)の同意を得て行われるものであること(全ての出資者の同意を要しない旨の合意がされている場合において、当該業務執行の決定について全ての出資者が同意をするか否かの意思を表示してその執行が行われるものであることを含む。)。

二 出資者の全てが次のいずれかに該当すること。

イ 出資対象事業に常時従事すること。

ロ 特に専門的な能力であつて出資対象事業の継続の上で欠くことができないものを発揮して当該出資対象事業に従事すること。

上記のとおりですので、同一のLLPを複数ファンドのGPとした場合において、例えば、2号ファンドについて事後的に、(i)パートナーを減らすことになると当該パートナーをLLPから脱退させることにならざるを得ず、これにより当該パートナーが1号ファンドのパートナー(GP-LLPの組合員)でもなくなってしまうことになり、また、(ii)パートナーを増やすことになると当該パートナーをLLPに加入させることにならざるを得ず、これにより当該パートナーが1号ファンドのパートナーにもなってしまうという問題が生じかねません。

④ 責任財産がファンド間で共通となることについて

さらに、同一のLLPを複数のファンドのGPとすることについて、有限責任組合員(LP)などのファンドの出資者から懸念を表明される可能性があります。

具体的には、LLP法第15条の定めにより、LLPは有限責任のビークルとされており、例えばファンドやLPからLLPに対して何らかの責任を追及するといった場面において、その対象とできる財産(責任財産)が、基本的には、当該LLP自体の資産に限られてしまうことになります。

そして、複数のファンドのGPが同一のLLPとなっている場合には、当該複数のファンドが、同一のLLPの資産を対象とした責任追及をすることになります。

特にファンド間のリターンに差があるといった場合、例えば、2号ファンドのキャリードインタレストが多額となっており、LLPの資産が2号ファンド由来であるにもかかわらず、1号ファンドの出資者及び2号ファンド出資者が、当該資産を念頭に同じタイミングで責任追及をするような場合には、共通の責任財産を取り合う形となり、1号ファンドと2号ファンドの出資者間で利害が対立する可能性があります。

このようなケースを避けるために、ファンドごとにLLPを分けることを要請される可能性があり、特に大口の機関投資家からは、このような懸念を示されることもあるため、想定しているファンドの出資候補者の属性を念頭に考慮いただく必要があるということになります。

(3) まとめ

様々な観点から、GPビークル選択にかかるプロコンを概観してきました。

基本的には、同一のLLPとした方が、GP側にはメリットがあるケースが多い印象ですので、上記③や④の点について、どの程度配慮すべきかどうかを踏まえて、GPビークルについて選択をしていただければと思います。

2号ファンド組成の論点(第2回)は、ファンド間の投資機会の配分などの留意点について実務感覚を踏まえながらお伝えできればと考えていますので、こちらもご覧いただければ幸いです。


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執筆者
AZX Professionals Group
弁護士 パートナー
杉山 友朔
Sugiyama, Yusaku
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小澤 雄輔
Ozawa, Yusuke
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