IoT(Internet of Things)の法務 (1)~IoTベンチャーが知っておくべき10の法規制(前編)~

投稿日:2016/04/15

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img_up_htk-2弁護士の濱本です。ベンチャー業界に限らず、近頃ますますIoTというキーワードが注目されています。メーカー企業に勤務している父親の影響もあり、私は日本の「モノづくり」は世界に誇れる文化であると思っています。日本の企業にはこのような「モノづくり」の力を活かせるIoTの分野で広く活躍して欲しいと思っています。

さて、IoTの分野において、企業は、(i)インターネットを利用したモノの製造・販売をするだけでなく、(ii)モノから取得できる情報等を利用したサービスを併せて提供することが考えられます。したがって、IoTベンチャーとしては「モノの製造・販売」と「サービスの提供」の両面の法規制について把握しておく必要があると考えられます。

そこで、今回は「IoTベンチャーが知っておくべき10の法規制」をテーマに、(i)前編として「モノを製造・販売するにあたり知っておくべき法規制」を、(ii)後編として「インターネットを利用したサービスを提供するにあたり知っておくべき法規制」を、それぞれ解説していきます。前編において解説する法規制は、以下の5つです。

①電気用品安全法、②電波法、③家庭用品品質表示法、④知的財産に関する法律(特許法、実用新案法、商標法、意匠法、著作権法)、⑤製造物責任法

 

(1)    電気用品安全法[i]

安全性の確保が求められる製品については、法律が製品を指定して、危害の発生を防止するために必要な技術的な基準等を定めている場合があります[ii]。特にIoTに関する製品において問題になるのは、電気用品安全法です。電気用品安全法は、457品目の電気用品(特定電気用品116品目、特定電気用品以外の電気用品341品目)を適用対象としており、コンセントに接続するような多くの家電製品がその適用を受けます。適用対象となる電気用品を製造・輸入する場合の手続の概要は、以下のとおりです。

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上記のように電気用品安全法の適用対象となる電気用品を製造・輸入する場合、国から認証等を受ける必要があるというわけではありません。事業者は、国に製造・輸入の事業の届出をしたうえで、みずから技術基準に適合する電気用品の製造・輸入、自主検査[iii]、検査記録の作成・保存、PSEマークの表示等をすることが求められます[iv]。また、感電・火災等の危害が発生するおそれが特に高い「特定電気用品」については、登録検査機関[v]による検査を受けることが義務付けられます。

電気用品が満たす必要のある「技術基準」については、「電気用品の技術上の基準を定める省令」が抽象的な性能(例:感電のおそれがないこと)を定め、さらに経済産業省の「電気用品の技術上の基準を定める法令の解釈について」という通達[vi]が、電気用品の種類等に応じた具体的な材料、数値、試験方法等を定めています。特にIoTベンチャーが製造するような従来にない種類の製品については、具体的にどの技術基準が適用されるのかの判断が困難な場合もあるため、慎重な検討が必要です。

 

(2)    電波法[vii]

IoTベンチャーとしては、無線LANやBluetoothなど電波を発する製品を販売することも考えられます。このような電波を発する製品を日本国内で使用する場合、本来はその使用者が電波法に基づく免許等を取得することが必要となります[viii]。しかし、製品を購入した個々の使用者に免許等の取得を求めることは、現実的ではありません。

そこで、国の登録を受けた登録証明機関[ix]等から下記の「技術基準適合証明」や「工事設計認証」を取得して、一定の様式の表示(いわゆる技適マーク無題)を付することにより、特例として利用者が免許等を取得することなく日本国内で電波を発する製品を利用できるようになります。一般的に、量産化前の段階では「技術基準適合証明」の利用が、量産化に至る段階では「工事設計認証」の利用が適しているといわれます。

技術基準適合証明(電波法第38条の6) 小規模な無線局に使用するための無線設備であって総務省令で定めるもの(特定無線設備)について、登録証明機関が電波法に定める技術基準に適合しているか否かの判定を特定無線設備1台ごとに行う制度。
工事設計認証(電波法第38条の24) 無線設備が技術基準に適合しているか否かの判定を、その設計図(工事設計)及び品質管理方法を対象として登録証明機関が行う認証。認証を受けた工事設計に基づく無線設備は、技術基準適合証明を受けた設備とみなされる。

なお、無線設備のモジュール化が進み、現在では技術基準適合証明等を受けたモジュールも数多く販売されているため、IoTベンチャーとしてはこのような無線モジュールを利用して製品を製造することも考えられます。この場合、製品の外からでも利用者が技適マークを確認できるように、モジュールに表示されている技適マークを製品本体に転記することが可能とされています(電波法第38条の7)。

 

(3)    家庭用品品質表示法[x]

家庭用品品質表示法は、一般消費者が日常的に使用する家庭用品の品質を正しく認識することができように、一定の家庭用品について表示すべき事項やその表示方法等を定めています。現在、①繊維製品について35品目、②合成樹脂加工品について8品目、③電気機械器具について17品目、④雑貨工業品について30品目が対象品目として指定されています。IoTにおいては、家庭用品とインターネットを融合した製品も多いため、家庭用品品質表示法の対象品目に該当しないかを慎重に確認し、該当する場合には同法に従った表示をする必要があります。

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(4)    知的財産に関する法律(特許法、実用新案法、商標法、意匠法、著作権法)[xi]

IoTの製品を製造・販売するにあたっては、他者の知的財産権を侵害しないように注意する必要があります。知的財産権を侵害している製品を製造・販売してしまうと、製造・販売の中止や製品の廃棄、あるいは損害賠償請求にまで発展するおそれがあります。特に、モノの製造・販売においては、特許権、実用新案権、意匠権、商標権及び著作権を侵害しないように注意が必要です。それぞれの権利の保護対象は以下のとおりです。

権利 何を保護するものか
特許権 産業上利用できる技術思想(発明)
実用新案権 物品の構造、形状に係る考案
意匠権 物品のデザイン
商標権 商品やサービスに使用するマーク(文字、図形等[xii]
著作権 文化的創作活動により産み出された表現(著作物)

他者がどのような特許権、実用新案権、意匠権及び商標権を有しているかについては、特許情報プラットフォーム「J-PlatPat」などを利用して誰でも検索することができます。もっとも、侵害の有無の判断は簡単ではない場合も多いため、必要に応じて弁理士等の専門家に調査を依頼した方が安全です。

一方、著作権は、著作物を産み出した時点で自動的に権利が発生し、登録等の手続が必要ないため、これを網羅したデータベースは存在しません。もっとも、著作権の場合には、独自に産み出した著作物が偶然誰かの著作物と類似していても権利侵害にはなりません。したがって、他人の著作物を全く参照していないのであれば、誰かの著作物と偶然類似してしまっていないかの調査をする必要はありません。

 

(5)    製造物責任法

製造物責任法は、被害者保護を目的とした法律であり、製造物の「欠陥」により人の生命、身体又は財産に被害が生じた場合には「製造業者等」が損害賠償責任を負うこと等を規定しています。その概要は、以下の通りです。

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上記のように「欠陥」には、設計や製造に欠陥がある場合のみならず、適切な指示・警告を欠いているという「指示・警告上の欠陥」も含まれます。すなわち、事業者には、安全な設計をすること、設計どおりに製造することだけではなく、取扱説明書や警告ラベルにより利用者が製品を安全に取扱うための情報を提供することが求められるため注意が必要です。

また、事業者としては、製造物責任が生じてしまった場合に備えて、製造物責任保険への加入を検討しておく必要があります。その際、実際に製造物を製造・加工した者だけでなく、製造物を輸入した者や自ら製造業者又は実質的な製造業者と認められる氏名を表示した者等も製造物責任を負うという点に注意が必要です。海外の工場等から製品を輸入する場合やいわゆるOEM製品を自社ブランドで販売するような場合には、製造・加工をしていなくとも製造物責任保険への加入を検討することが必要になります。

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執筆者によるコメント

AZX Professionals Group
AZX総合法律事務所
弁護士 濱本 健一

「モノを製造・販売するにあたり知っておくべき法規制」、いかがだったでしょうか。次回は、「IoT(Internet of Things)の法務」後編として、「インターネットを利用したサービスを提供するにあたり知っておくべき法規制」を解説する予定です。


♦ 脚注

[i]電気用品安全法について知るためには、経済産業省のホームページが参考になります。特に、製造・輸入事業者ガイドは、電気用品安全法の概要を知るために有用です。

[ii]電気用品安全法の他にも、「消費生活用製品安全法」、「ガス事業法」、「液化石油ガスの保安の確保及び取引の適正化に関する法律」がこのような規制をしており、「電気用品安全法」と併せて製品安全4法と呼ばれます。さらに、「医療機器」については「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」の規制対象となるといったように特殊な製品については個別の法律が規制を設けている場合があります。

[iii]「自主検査」の方法については、「電気用品安全法施行規則」に定められており、特定電気用品以外の電気用品については、原則として、外観、絶縁耐力、通電について、全数(一品ごと)の検査が必要とされています。

[iv]具体的な検査等を行う主体は試験機関や外国製造業者(輸入事業者の場合)等に委託することが可能です。ただし、この場合でも事業者自身の責任のもとに行われる必要がある点に注意が必要です。

[v]現在、登録されている検査機関数は、国内5機関、海外6機関です。詳細については、登録検査機関一覧表を参照ください。

[vi]こちらのページにおける「通達」の項目から「電気用品の技術上の基準を定める法令の解釈について」を参照することができます。

[vii]電波法について知るためには、総務省の電波利用ホームページが参考になります。

[viii]製品無線設備から3メートルの距離での電界強度(電波の強さ)が、一定のレベルより低いものなど「発射する電波が著しく微弱な無線局」として総務省令で定めるものについては、免許を受けることなく開設することができます(電波法第4条第1号、同法施行規則第6条)。例えば、自動車のキーレスエントリー、ワイヤレスマイク、おもちゃのラジコンやトランシーバーなどにおいて、この微弱電波が利用されています。具体的な制度の内容については、総務省のホームページをご参照下さい。

[ix]現在、14法人が登録証明機関として登録を受けています。具体的な登録証明機関については、総務省の電波利用ホームページをご参照下さい。

[x] 家庭用品品質表示法について知るためには、消費者庁のホームページが参考になります。特に、「家庭用品品質表示法ガイドブック」は、家庭用品品質表示法の規制の内容を知るために有用です。

[xi] 特許法、実用新案法、意匠法、商標法等の概要を知るためには、特許庁のホームページからダウンロードできる「知的財産権制度説明会(初心者向け)テキスト」が有用です。また、著作権法の概要を知るためには、文化庁のホームページからダウンロードできる「著作権テキスト」が有用です。

[xii]商標には、文字、図形、記号、立体的形状やこれらを組み合わせたものなどのタイプがあります。また、平成27年4月から、動き商標、ホログラム商標、色彩のみからなる商標、音商標及び位置商標についても、商標登録ができるようになりました。


投稿日:2016/04/15