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会社法下における株主総会手続について

2008/05/23

~ AZX Coffee Break Vol.11 〜

株主総会手続について、会社法は、旧商法下で定められていた規定を踏襲している一方で、旧商法下において生じていた解釈上の問題点の解消や体系的整合性を図るため、旧商法とは異なった規定を設けている。本稿では、旧商法と異なるものとして留意しておいた方がよい主要な点について説明する。なお、会社法では、機関設計によって手続が異なる場合があるため、本稿は、一般的な取締役会設置会社を対象としている。

(1)招集手続について
①招集通知の発送について 旧商法では、原則として総会の日より2週間前に招集通知を発送する必要があり、例外的に譲渡制限会社が定款により1週間を下限として当該期間を短縮することができた(旧商法第232条第1項)。会社法では、原則2週間との規定は変わっていないものの、公開会社でない会社(会社法第2条第5号参照。全部の株式に譲渡制限が付されている会社を指す。)は、会社、株主間の関係の緊密さに鑑みて、1週間前までに発送すべき旨が規定され、定款の規定は不要となった(会社法第299条第1項)。但し、書面又は電磁的方法による議決権行使ができる旨を定めた場合、原則どおり2週間前となることに注意する必要がある(会社法第299条第1項、第298条第1項第3号、第4号)。
②招集通知の記載事項について 旧商法では、原則として会議の目的事項(議題)を記載又は記録し(旧商法第232条第3項)、例外的に一定の重要事項について議案の要領の記載が必要とされていた(旧商法第210条第6項等)。この点、会社法も同様に議題及び一定事項について議案の概要を必要としているが(会社法第298条第1項第2号及び第5号、施行規則第63条第7号)、旧商法下では議題のみでよかったものが、会社法においては議案の概要まで必要とされているものがあることに注意する必要がある(例えば、役員等の選任、報酬等の議案等)。なお、書面又は電磁的方法による議決権行使を認める場合には、株主総会参考書類の作成が必要となり、その記載事項は別途詳細に法定されている(本稿では株主総会参考書類の説明は割愛する。)。また、招集通知に添付される計算書類及び事業報告の内容について、招集通知発送から定時総会の前日までの間に修正すべき事項が生じた場合、旧商法では特に手当がされていなかった。しかし、招集通知の再交付に要する費用や招集通知を発送する時期との関係で問題が生じるため、会社法では、取締役は、事業報告の内容を修正する可能性があることを見越して、修正後の事項を株主に周知させる方法を招集通知と併せて通知することができるとされた(施行規則第133条第6項、計算規則第161条第7項、第162条第7項)。招集通知に周知方法を記載しておくことにより、実際に修正の必要が生じた場合は、会社のホームページにおいて公表することや公告に用いている時事を掲載する日刊新聞紙や官報に掲載して周知させることが考えられる。但し、当該規定がどの程度の修正内容を許容しているかは条文上明らかでなく、今後の実務の動向を見る必要がある。
③招集手続の省略について 招集手続は株主の準備の機会を保障するためのものであるため、株主の全員の同意があれば省略可能であることについては、旧商法でも会社法でも特に変わりはない(旧商法第236条、会社法第300条)。但し、会社法は、招集を決定する取締役会において株主が書面又は電磁的方法によって議決権を行使することができる旨を定めた場合、当該株主の準備の機会を保障するため、招集手続の省略ができないことを明確にした(会社法第300条但書)。当該規定に関連し、旧商法では、書面投票制度の適用対象を、議決権を有する株主数が1000人以上である大会社としていたのに対し(旧株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律(旧商法特例法)第21条の3第1項)、会社法は、議決権を有する株主数が1000人以上の会社全てに拡大しており(会社法第298条第2項)、大会社でなくとも、書面投票制度の適用対象となることに注意を要する。なお、上記規定に基づいて省略できる範囲について、会社法が「前条(会社法第299条)の規定にかかわらず」と規定していることから、招集通知並びに通知に際して提供が要求されている計算書類及び事業報告に限定されるというのが立法担当者の見解であるため、この点留意しておく必要がある。

(2)開催場所について 株主総会の開催場所に関し、旧商法は原則として本店所在地又は隣接地で招集しなければならないと定め、定款における別段の定めによりその他の場所で招集することを許容するに過ぎなかった(旧商法第233条)。これに対し会社法では、かかる制限が廃止され、本店所在地又は隣接地以外を招集地とすることが可能となった。但し、招集の場所として株主にとって不利益な地を選定した場合は、招集手続が著しく不公正な場合として総会決議取消事由となる可能性があるため(会社法第831条第1項第1号)、この点に留意する必要がある。また、過去に開催した株主総会のいずれの場所とも著しく離れた場所を招集地と決定した場合には、原則として、その理由を明らかにして、招集通知に記載する必要がある点にも注意する必要がある(施行規則第63条第2号)。

(3)計算書類と定時株主総会日程について (1)①の招集通知の期限に加え、定時株主総会では、計算書類に関するスケジュールを念頭に置いておく必要がある。すなわち、定時株主総会では、計算書類の承認決議をする必要があり(会社法第438条第2項。但し、会計監査人設置会社において一定の要件を満たす場合は、会社法第439条によって報告事項とされる。)、当該計算書類は監査役の監査を受けた後(会社法第436条第1項)、取締役会の承認を経て株主総会に提出される(会社法第436条第3項)。旧商法では、取締役が作成した計算書類を取締役会で承認し、その後監査役の監査を受けるという順序となっており(旧商法第281条第1項及び第4項)、また、監査役への計算書類の提出は定時総会の7週間前までとされていた(旧商法第281条ノ2第1項。但し、旧商法における大会社及び小会社については、旧商法特例法による特例がある。)。しかし、会社法は、監査意見を参照した上で取締役会の承認がなされる方が適当であるとして、監査後の計算書類に対する取締役会承認を要すると規定し、また、旧商法における監査役に対する提出期限に従うと、監査が早く終了した場合等に総会の開催時期を早められないという弊害があったため、かかる提出期限の定めは廃止された。但し、会社は、定時株主総会の日の2週間前の日から5年間、監査済の計算書類等を本店に備え置かねばならず(会社法第442条第1項第1号)、定時株主総会の日の2週間前の日までに計算書類を承認する旨の取締役会決議が必要となるため、株主総会の開催スケジュールを決めるにあたってはこの点も考慮する必要がある。

(4)決議の省略について 株主総会の決議事項につき、会議を省略して書面又は電磁的記録をもって総株主が提案内容に賛成の意思を表示した場合、旧商法及び会社法のいずれにおいても株主総会決議があったものとみなす旨の規定があるが(旧商法第253条、会社法第319条)、旧商法では、決議の省略をした場合であっても、定時株主総会における事業報告書の報告のように報告事項がある場合には、その報告のために総会を開く必要があるのかが解釈上問題となっていたため、会社法では、取締役が株主の全員に対して株主総会に報告すべき事項を通知した場合において、当該事項を株主総会に報告することを要しないことにつき株主の全員が書面又は電磁的記録により同意の意思表示をしたときは、当該事項について株主総会への報告があったものとみなす旨の規定が設けられた(会社法第320条)。

(5)議事録の作成について 旧商法においては、議事録が書面をもって作成された場合、議長及び出席取締役の署名が必要だった(旧商法第244条第3項)。しかし、株主総会議事録は、取締役会議事録のように議事録に異議をとどめない者はその決議に賛成したものと推定されること(会社法第369条第5項)等の特別の法的効果が生ずるわけではなく、単なる記録、証拠の意味を有するにとどまるため、会社法は、出席者、議長及び議事録作成者の記載があれば足りるとし(会社法第318条第1項、施行規則第72条第3項)、署名義務に関する規定を廃止した。但し、会社法が出席取締役の署名義務を廃止したとしても、会社の定款において出席取締役の署名が必要であると規定されていることがあるため、この点を確認しておく必要がある。

(6)その他 上記事項の他、会社が種類株式を発行している場合、一定の事項については種類株主総会の決議が要件とされている。旧商法下では、種類株主総会決議を必要とする場合を規定していたが(旧商法第345条、第346条)、定款変更の際に「或種類ノ株主ニ損害ヲ及ボスベキトキ」に決議を要する等と不明確な規定が置かれていたことから、実際に種類株主総会決議を必要とする場合であるかの判断で混乱が生じていた。これに対し会社法は、種類株主総会決議が必要な場合を、会社法に規定する事項及び定款で定めた事項に限定する旨を明確にした(会社法第321条)。なお、会社法第322条第1項は種類株主総会の決議を要する場合を具体的に列挙しているが、これらの事項以外にも、個別の規定において、種類株式総会の決議がなければ効力を生じない旨を定めている場合があることに注意が必要である(種類株式発行会社が譲渡制限株式を発行する場合(会社法第199条第4項)等)。

以 上

 

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