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「お金を支払ってくれない…」相手の銀行口座を突き止めて差し押さえる方法

2026/07/16

こんにちは。筋肉系ワイン弁護士の小澤です。

ビジネス上の取引において、「裁判で勝ったのに相手がお金を払ってくれない」「借用書や契約書があるのに、相手が『お金がない』と言い張って応じない」といったトラブルに直面したことはありませんか?

相手から強制的に資金を回収する(差し押さえる)ためには、まず「相手がどこの銀行の、どの支店に口座を持っていて、いくら残高があるか」を特定する必要があり、仮に裁判に勝訴した場合であっても、銀行口座を特定できず、資金を回収できなければせっかく裁判を起こした意味も減退してしまいます。

今回は、債権回収の鍵を握る「相手の銀行口座の調査方法」について、【債務名義】の有無による違いを踏まえながら、分かりやすく解説します!

そもそも「債務名義」とは:

口座の調べ方を解説する前に、超重要となるキーワードが「債務名義」です。

債務名義とは、講学上は、強制力によって実現されるべき給付請求権(執行債権)の存在と内容を明らかにし、それを基本として強制執行をすることを法律が認めた一定の格式を有する文書を指します(中野貞一郎ほか「民事執行法(改訂版)」161頁)。

要するに、債務名義なく、強制執行(銀行口座の差押え等)はなしえません。

債務名義は民事執行法第22条に列記されていますが、代表的なものには以下があります。

  • 裁判所の判決(同法第22条第1号、2号)、和解調書(7号)
  • 支払督促(4号)
  • 公証役場で作った「公正証書」(強制執行を認める文言が入ったもの)(5号)

手元にこの債務名義が「あるか」「ないか」で、取れる手段の強力さが180度変わります。

1.債務名義が【ない】場合:

まだ裁判を起こしていない、あるいは普通の借用書や契約書しかない状態(債務名義がない状態)では、そもそも強制執行や強制力を伴う財産調査はできません。もっとも、預金口座の仮差押を行う場合には、預金口座の特定が必要であり、以下のようなアプローチによることが考えられます。

①過去の取引履歴のチェック:
過去に1度でも相手から振り込みがあった場合、通帳等に「銀行名・支店名・口座番号」が残っている可能性があります。まずはこれを徹底的に探します。

②契約書の確認:
過去のやり取りの中や契約書面、請求書(相手方に別件で発注した際に相手方が発行した請求書等)で、相手が振込先として指定してきた口座情報がないかを確認します。

③弁護士会照会(23条照会):
「手元に口座情報が全くないけれど、どうしても裁判前に口座を特定したい」という場合、弁護士に依頼することで「弁護士会照会(弁護士法第23条の2に基づく情報照会制度)」というツールを使えるケースがあります。

③は、弁護士が弁護士会を通じて銀行に対し「口座情報を開示してください」と照会をかける仕組みとなります。

ただし、弁護士会照会が任意の回答を求める照会制度であるが故に、以下の点に留意が必要です。

(1)「銀行名」と「支店名」の特定が必要

後述する裁判所上の手続きとは異なり、弁護士会照会では「銀行名」だけでなく「〇〇銀行 〇〇支店」までピンポイントで指定しないと、銀行側は原則として調べてくれません。(「日本全国の全支店を探してください」という、いわゆる全店照会には応じてもらえません。)

(2)銀行が回答を拒否するケースが多い

プライバシー保護の観点等から、裁判所の命令(債務名義など)がない段階での照会に対しては、「顧客の守秘義務」等を理由に回答を拒否する銀行が非常に多いのが実情です。

2.債務名義が【ある】場合:裁判所を通じた調査

手元に「債務名義」がある場合は、民事執行法に基づいた非常に強力な以下の2つの調査手続が使えるようになります。

①第三者からの情報取得手続(民事執行法第207条)

裁判所を通じて、銀行の本店に対して「この債務者の口座はありますか?残高はいくらですか?」と直接照会をかけることができます。
この手続を使えば、銀行名(例:三菱UFJ銀行など)さえ指定すれば、本店が全支店を検索して回答してくれます。また預貯金残高情報も取得可能です(民事執行規則第191条第1項)。

但し、以下の点について注意が必要です。

注意点:

(ア)弁護士会照会による情報取得は債務者に通知される必要がないのに対し、第三者情報取得手続によるときは、第三者から情報が提供されたことが債務者に事後通知されます。その限りで民事執行の密航性は失われてしまうため、債権者としては、第三者情報取得手続後、速やかに強制執行を行う必要があります。

(イ)執行裁判所の情報提供命令を受けた第三者は、所要の情報提供をなすべき公法上の義務を負いますが、この義務に違反した場合の固有の法的制裁はありません。

(ウ)預貯金の情報取得の場合は、不要となりますが、不動産情報の取得手続及び給与債権等の情報取得手続に関しては、次に説明する「財産開示手続」を過去3年以内に行っていることが条件となります(民事執行法第205条第2項、第206条第2項)。

 

②財産開示手続(民事執行法第197条・199条)

債務者本人に財産目録を提出させるほか(民事執行規則第183条第3項)、債務者本人を裁判所に強制的に呼び出し、自分の口座や不動産、勤務先などを「嘘偽りなく白状させる」手続となります。
開示の範囲は、申立人の債権額にかかわらず、債務者の積極財産の全部となり、また裁判所及び債権者は債務者に質問することが可能です。

★嘘をついたら罰則(陳述等拒絶罪)があります(民事執行法第213条第1項第5号・6号):

債務者は、正当理由なく呼び出しを無視したり、宣誓を拒絶したり、又は宣誓後に正当な理由なく何も回答しなかったり、嘘を言ったりした場合、「6ヶ月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金」という重い刑事罰(前科)が科せられます。「正当理由」は、故意によらない重篤な傷病や災害による交通の途絶、債務者がその陳述により刑事訴追を受けるおそれがあること等が考えられます。

上記の通り、「正当理由」の範囲は限定的なので、②の財産開示手続について、相手への心理的プレッシャーは絶大になっています。

但し、②の方法による場合以下の点について注意が必要です。

注意点:

(ア)②の申立が認められるためには以下のいずれかの要件を満たす必要があります(通常は(b)の要件を満たすよう申立てを行うことになります。)。

(a) 先行の強制執行・担保執行における配当等の手続(申立の日より6ヶ月以上前に終了したものを除く)において、申立債権者がその金銭債権の完全な弁済を得ることができなかったとき(民事執行法第197条第1項第1号・第2項第1号)

(b) 知れたる財産に対する強制執行・担保執行の実施が債権者に完全な弁済を与えないことの疎明があったとき(民事執行法第197条第1項第2号・第2項第2号)

(イ)債務者に対する倒産(破産)開始決定がなされた場合、開示手続はできません。

(ウ)開示手続申立ての日に先立つ3年以内に財産開示期日において債務者がその財産について陳述したものであるときは、原則として、財産開示手続を実施することはできません(民事執行法第197条第3項本文)。

(エ)債権者が本来の目的以外の目的のために取得情報を利用・提供した場合には、30万円以下の過料の制裁があります(民事執行法第202条・同法第214条第1項)。

 

AZX総合法律事務所では、債務名義を武器にした相手の預貯金口座の特定、及び迅速な差し押さえの実行までトータルでサポート可能です。

また債務名義がない状態であっても、「これから裁判を起こして回収に動くべきか」「公正証書を作る交渉をするべきか」など、弁護士が介入することで一気に事態が動き出すケースは多々あります。

「相手が支払いに応じず、どこに口座があるかも分からない」とお悩みの経営者の皆様、手遅れ(相手が口座を空っぽにして逃げてしまうなど)になる前に、ぜひ一度、AZX総合法律事務所へご相談ください!


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執筆者
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