企業買収(M&A)

ベンチャー・スタートアップの方へ

企業の成長において、自ら製品やサービスを研究・開発して、市場に出すことは、一般的かつ基本的な事業活動となりますが、既に市場に出ている製品やサービスに関する事業を獲得することや特定の技術、工場、顧客等を獲得するために、企業又は事業を買収するというのは企業の成長戦略にとって重要な選択肢となっています。

未上場企業においても、市場における自らのシェアを拡大するため、製品やサービスのラインナップを増やすためなどに企業買収を行うケースが多数あります。

企業や事業を買収する際には、その目的及び効果を検証し、ビジネス上の妥当性を確認することはとても重要なことですが、それと同時に、買収対象の企業等に法務又は会計上問題ないかをチェックすることもとても重要です。また、具体的なスケジュール、税務上の問題、取引先との関係などの諸要素を考慮して、いかなる買収スキームが最適であるかを検討する必要があります。買収スキームとしては、一般的には、株式取得、合併、会社分割、事業譲受、株式交換、株式移転などがあり、それぞれにメリット・デメリットがあります。さらに、買収価格を算定し、買収条件を交渉して、最終的にそれを契約にまとめ、買収のクロージングに向けての手続を行うことが必要となります。

AZXにおいては、買収にあたっての法務及び会計のデュー・ディリジェンス、株価や事業価値の算定、買収スキームの策定、金融商品取引法、独占禁止法等の手続の対応、買収に関する契約書の作成及び交渉、買収に付随する各種手続に関してサポートを行っております。特に、法務及び会計の両方についてアドバイスが可能であり、また、法務及び会計のデュー・ディリジェンスやスキームの検討で特許等の知的財産権関連事項や労務関連事項が生じた場合には、グループ内の弁理士、社労士等の他の専門家のサポートを受けることも可能です。

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  • M&Aによるエグジットが昨今増えてきていますが、M&Aのスキームにはどのようなものがあるのでしょうか。また、そのメリットとデメリットは?
    "M&Aの方式としては、大きく分類すると、①株式譲渡、②募集株式発行、③事業譲渡、④合併、⑤株式交換、⑥株式移転、⑦会社分割に分けられます。これらのスキームを組み合わせることも多くあり、どのようなスキームを選択するのがよいのかについては、各スキームのメリット、デメリットを踏まえ、弁護士や税理士、会計士などの専門家とも相談の上で、慎重に行う必要があります。法的な面では、(1)買収会社自体が買収対象事業を承継するのか、子会社として支配するのか、(2)債務を含めて事業全体を承継するのか、一定の権利義務関係のみを承継するのか、(3)取引の相手方の同意等をとらずに包括承継するのか、個別に同意を取得して譲り受けるのかの各点が、スキームを選択する上での基本的な考慮事項となります。詳しくは、メールマガジンのバックナンバーをご参照下さい。
  • 一部の事業を子会社に移転したいのですが、事業譲渡と会社分割のどちらが良いのでしょうか。
    譲渡当事者が実施する事前の手続は、いずれも原則として株主総会決議が必要ですが、会社分割は事前の労働者との協議、書類の備置き、債権者保護手続等も必要となり得る点で、事業譲渡より手続は複雑です。
    他方、契約関係を移転する場合、事業譲渡では契約相手方の個別同意が必要であるのに対し、会社分割では契約において別段の定めがない限りこのような同意は不要です。このため、移転すべき契約の多寡や、契約相手方の個別同意をスムーズに取得できそうか否かが、事業譲渡と会社分割の選択の重要な要素の一つになります。
  • ある会社の株式を取得して100%子会社にする方法として、株式譲渡と株式交換では、手続上はそれぞれどのような特徴がありますか。
    株式譲渡の場合、各株主と個別に交渉及び手続を行う必要がありますが、その他は会社法上必要とされる手続が簡易であることが特徴です。なお、株式の取得資金は必要となります。
    他方、株式交換は個々の株主の承諾を得ずに100%買収を強行できる手続であり、各株主との個別交渉が不要となる反面、株主総会や事前開示などの会社法上の手続が必要となります。なお、株式交換対価として自社株式を交付することが可能であり、その場合には買収資金が不要となります。また、株式交換無効の訴えについて規定があり、無効主張する方法、期間等が限定されるといった特徴があります。
  • 全部取得条項付株式を利用して、少数株主を排除する方法があると聞きましたが、どのような手続ですか。
    全部取得条項付株式を利用して少数株主を排除する方法とは、(i)定款変更により、普通株式以外の種類株式(仮に「A種株式」とします。)に関する定款規定を追加して、種類株式発行会社へ移行し、(ii)同じく定款変更により、発行済の普通株式の内容として、全部取得条項(株主総会決議により会社がA種株式と引換えに普通株式を全部取得できるという内容)を追加した上で、(iii)全部取得条項を発動するという流れで行われます。普通株式と引換えに少数株主に割り当てられるA種株式の数が1株未満となるよう割当比率を設定し、金銭で精算することで、少数株主を排除することができます。上記の定款変更等の株主総会決議は、特別決議で行うこととなります。なお、このような株主を強制的に締め出すスキームは「スクイーズ・アウト」と総称されます。
  • ベンチャーが組織再編手続のスケジュールを組むにあたり、会社法以外で留意しなければならない実務上のスケジュールは?決算公告をやっていない会社は、官報掲載申込にどのくらい時間がかかるのでしょうか?
    会社法以外に、金融商品取引法の規制、独占禁止法の規制を受けるかによって、スケジュールが大きく影響を受けますので、これらの法規制が適用されるかも検討すべきです。また、スケジュール設計時に盲点となりがちなのが、官報公告掲載の申込期間です。特に、公告において最終の貸借対照表等についての決算公告を引用すべき場合があり、決算公告を怠っている会社の場合、組織再編の公告時に決算公告もあわせて掲載する必要があり、通常よりも多くの公告スペースを要することとなるため、官報掲載の申込期間についても、より多くの時間を要することとなります。具体的な期間については、官報の申込みを取り扱う機関にご確認いただくこととなりますが、決算公告も一緒に掲載する場合は、3週間以上要する場合もありますので、ご注意ください。
  • 株式移転とはどのような手続ですか。
    既存会社が新会社を設立し、新会社へ既存会社の発行済株式全部を取得させるとともに、既存会社の株主へ新会社の株式を割り当てることによって、100%親子会社関係を創設する手続です。株式移転の結果、既存会社の株主は新会社の株主となり、既存会社は新会社の100%子会社となります。
    なお、「株式交換」も100%親子会社関係を創設する制度ですが、株式交換は既存会社同士で行われるものです。
  • 株式移転により、合同会社を完全親会社とすることはできますか。
    できません。株式移転において完全親会社として設立することができる会社は「株式会社」に限られます(会社法第2条第32号)。なお、株式交換の場合には合同会社を完全親会社とすることも可能です(会社法第2条第31号)。
  • 外国会社と合併することはできますか。
    学術的には議論のあるところですが、会社法は合併当事者である「会社」とは、「株式会社、合名会社、合資会社又は合同会社をいう」と定義しており(会社法第2条第1号)、外国会社が含まれていないこと、また、外国会社との合併登記は法務局に受理されないことなどから、実務上は外国会社と合併することはできません。
  • M&Aで独占禁止法が問題になるのは大まかにどのようなケースでしょうか。
    株式買収、合併、共同新設分割、吸収分割、事業譲受等の企業結合の各類型について、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合には、その実施が禁止されます。競争制限があるかどうかは、個別の事案ごとの判断となりますが、規制の実効性確保のために、一定規模の企業結合については公正取引委員会への届出義務が課されており、この届出が必要になるかの判断が実務上重要となります。
    具体的な要件は企業結合の類型ごとに異なりますが、例えば合併の場合には、合併当事者のいずれかの会社及びその会社が属する企業結合集団の国内売上高合計額が200億円を超え、その他の合併当事者のいずれかの会社及びその会社が属する企業結合集団の国内売上高合計額が50億円を超える場合に、届出が必要となります。但し、全ての合併当事者が同一の企業結合集団に属する場合は届出不要となります。
  • 他社を株式取得によって買収する場合に、独占禁止法上の手続が必要となるのはどのような場合ですか。
    独占禁止法上、一定の取引分野の競争を実質的に制限するような株式保有等による企業結合は禁止されます。具体的には、(i)買収会社及びその属する企業結合集団の国内売上高の合計額が200億円を超え、(ii)被買収会社及びその子会社の国内売上高の合計額が50億円を超え、(iii)被買収会社における買収会社の買収後の議決権数と買収会社の属する企業結合集団の議決権数の合計割合(議決権保有割合)が新たに20%又は50%を超えることとなる場合には、公正取引委員会への事前届出が必要となります(独占禁止法第10条第2項)。なお、当該届出受理の日から30日を経過するまでは、当該届出に係る株式取得はできません(同条第8項)。
  • デューディリジェンスにおいて過去の株式の移動状況について質問を受け、あわせて株券の発行状況についても確認されました。当社は株券を発行した記憶がないのですが、問題があるのでしょうか。
    IPOや買収を受ける前提として、会社の株主が誰であるか、疑義なく確定していることは重要であり、その確認のために過去の譲渡の経緯が調査されます。 株券発行会社の場合、株式の譲渡は株券の交付が効力要件であるため、譲渡当事者間で株券の交付が行われていないと、過去の株式の譲渡が有効でなく、現在の株主が真実株主でないという問題が生じ得ます。また、株券発行会社が事実上株券不発行の状態になっている場合でも、会社から株券を発行した上で譲渡当事者間でその交付を行うことが必要となる点に注意が必要です。IPOやM&Aの間際でこのような問題が判明することのないよう、株式譲渡の手続について会社でもきちんと把握しておくことが重要です。
  • 吸収合併を行う場合、簡易合併の要件を満たすか否かの判断時期はいつですか。
    合併対価の合計額の存続会社の純資産額に対する割合が5分の1を超えないという簡易合併の要件(会社法第796条第3項)は、原則として合併契約締結時点で判断されます(会社法施行規則第196条)。
    他方で、上記の5分の1要件を満たす場合であっても、いわゆる合併差損が生じる場合には簡易合併によることはできません。この合併差損の有無については吸収合併の効力発生時を基準に判断されることとなります(会社法施行規則第195条)。したがって、合併差損が生じる可能性のある場合には、簡易合併によることができるかについては、合併契約締結時の数字のみでなく、その後合併の効力発生時までの変動も予測して検討する必要があります。
  • 債権者は存在しませんので、組織再編手続を行うにあたり、債権者保護手続は省略できると考えて良いでしょうか。
    債権者保護手続として、所定の事項を官報にて公告し、知れたる債権者へは個別催告を行う必要があります。個別催告については把握する債権者がいなければ省略可能ですが、官報公告については会社の把握していない債権者が存在する可能性もあるため省略することはできません。
  • 組織再編手続においては債権者保護手続が必要とされており、原則として「知れたる債権者」への個別催告が必要となっています。この場合の「知れたる債権者」とは具体的にどの範囲を指すのか。金額が少ない債権者は省略してもよいのでしょうか。
    個別催告の対象となる債権者については、金額的に重要か否かは特に問われていませんので、条文上は少額の債権者に対しても個別催告が必要であると考えられます。しかしながら、日常生活によって生ずるような軽微なものであれば、ことさらに知れたる債権者ということで各別に催告する必要はないと考える見解もあります。
    また、どの時点の債権者に対し個別催告書を送付するべきかについては、まずは個別催告書発送時の債権者に対して送付する必要があると考えますが、その後債権者となるような将来債権の債権者に対しても個別催告書を発送するべきかについては、見解が分かれています。大審院昭和10年2月1日判決は、知れたる債権者とは、債権者が何人であるか、また、その債権はいかなる原因に基づくいかなる請求権であるかの大体が会社に知れている者であって、金銭債権者のごとく、原因及び数額の確知された債権を有する者に限られない旨判示し、継続的供給契約上の将来の債権の債権者も対象となる旨述べていますが、将来の労働契約上の債権、継続的供給契約上の将来の債権等の債権者は対象とならないとする見解もあります。催告をしなかった債権者から異議等があった場合に弁済や担保提供を行うことで処理するという対応も考えられますが、債権者異議手続の懈怠を理由に組織再編行為の無効等を主張してきたような場合には、簡単に解決できなくなる可能性もあります。催告する債権者の範囲を限定すると、このようなリスクが生じる可能性があることも考慮のうえで、判断した方が良いと考えられます。
  • 株式交換手続において、公告及び個別催告といった債権者保護手続は必要ですか。
    原則不要ですが、以下の場合には必要となります。
    完全子会社においては、「株式交換契約新株予約権」(=完全子会社の新株予約権のうち、株式交換契約の定めに基づいて完全親会社の新株予約権が代替交付されるもの)が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合には、当該新株予約権付社債についての社債権者は異議を述べることができるため(会社法第789条第1項第3号)、この場合には、完全子会社において債権者保護手続が必要となります。
    完全親会社においては、(i)株式交換対価として完全親株式会社の株式以外の金銭等を交付する場合(当該金銭等の、株式交換対価の総額に対する割合が20分の1以上となる場合に限る。)、又は(ii)「株式交換契約新株予約権」が新株予約権付社債に付された新株予約権である場合(=上記完全子会社の要件ご参照)には、完全親会社の債権者は異議を述べることができるため(会社法第799条第1項第3号)、この場合には完全親会社において債権者保護手続が必要となります。
  • 株式交換手続においては、完全子会社の発行している新株予約権付社債はどのように処理されますか。
    完全子会社の新株予約権付社債は債務の一種であり、株式交換によって当然に完全親会社に承継されません。しかし、完全子会社に残したままでは、株式交換後に新株予約権が行使され100%親子会社関係が崩れてしまう可能性があります。
    そこで、会社法では、完全親会社の新株予約権を代替交付する定めを株式交換契約に規定することにより、効力発生日に完全子会社の新株予約権を消滅させ、代わりに完全親会社の新株予約権を交付することで、実質的に新株予約権を完全親会社に承継することができるとしています(社債部分についても、これとあわせて株式交換契約に規定することにより、当該社債に関する債務を完全親会社が承継することが認められています。)。
    なお、一定の場合には、新株予約権付社債について買取請求権が生じる場合があります。
  • 子会社に事業の一部を分割するのですが、その事業に従事する従業員(子会社に転籍予定)に付与していた当社の新株予約権はどうなるのでしょうか。
    会社分割の場合、分割契約に特に定めなければ、分割会社の新株予約権はそのままになりますので、ご質問のケースでは子会社に転籍した従業員が貴社の新株予約権を保有することになります。但し、分割契約において、貴社の新株予約権の代わりに子会社の新株予約権を転籍する従業員に交付する旨定めることも可能であり、この場合は子会社の新株予約権を保有することになります。
  • 譲渡を受ける事業に従事する労働者について、譲渡会社において未払賃金があった場合はどうなるのでしょうか。
    事業譲渡の場合、事業譲渡契約で譲渡対象と記載されない債務は移転しないため、譲渡会社の未払賃金債務は引き継がないのが原則ですが、誤解によりトラブルになるリスクは考えられます。移転する従業員からは、雇用主の変更について同意を取得することになりますが、このようなトラブルを避けるため、その同意書面において譲受会社は未払賃金を承継しない旨を明記しておく方が安全です。
  • 事業を譲り受ける場合に、譲渡人のサービス名を継承すると何かリスクがあるのでしょうか。
    譲渡会社の商号を譲受会社が継続使用する場合、譲受会社が遅滞なく責任を負わない旨の登記又は通知をしない限り、譲受会社は譲渡会社の債務を弁済する責任を負います(会社法第22条)。このルールが、会員制ゴルフクラブの名称にも類推適用されるという判例があるため、商号のみならず屋号やサービス名を継続使用する場合にも債務弁済責任のリスクがあります。
  • 組織再編税制の対象となっている行為にはどのようなものがありますか。
    組織再編税制の対象となっている行為は、合併、会社分割、株式交換、株式移転、現物出資及び現物分配です。事業譲渡については、組織再編税制の対象外となっており、通常の取引として時価課税されることとなります。組織再編税制は、適格組織再編に該当する場合と非適格組織再編に該当する場合で税法上の取扱いが異なります。
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