各種契約書の作成、レビュー及び交渉

上場企業の方へ

企業においては、開発段階、製造段階、販売段階いずれのステージにおいても何らかの契約を締結して事業を進めていくこととなります。

契約においては、自己に有利な条件を獲得するべく交渉することは重要なことですが、確定した取引条件について、後の紛争を避けるために明確に文書で定めておくことも同じくらいに重要です。交渉において有利な条件を獲得できたと思っても、契約書の文面がそのようになっていないこともあり、それでは将来ビジネスが発展した段階で思わぬトラブルが生じる可能性もあります。

AZXではクライアントの皆様のご要望に応じて、各種契約の作成やレビューを行います。また、必要に応じて契約交渉に同席し、契約の成立に向けてクライアントの皆様をサポートいたします。もちろん、取引上の契約のみならず、役職員との契約等企業内の契約についてもサポートいたします。

関連するナレッジ
  • 秘密保持の条項において、秘密情報の定義につき、秘密であることを明示した情報のみとするものと、開示された相手方の一切の情報とするものとを見掛けますが、いずれの方が有利なのでしょうか。
    一方的に秘密保持義務を負うような場合には、秘密情報とは、秘密であることを明示した情報のみであるというように、秘密情報の範囲を狭くして、秘密保持義務の範囲も狭める方がよいと考えられます。他方、こちらの秘密情報を保護し、相手方に厳格な秘密保持義務を負わせるという観点からは、秘密情報とは、開示された相手方の一切の情報であるというように、秘密情報の範囲を広くして、秘密保持義務の範囲も広くする方がよいと考えられます。
  • NDAを締結する前に当社の情報を取引先に開示したところ、その情報を当社の競合に開示されてしまいました。法的に何らかの主張をすることはできますか。
    営業秘密を保有する事業者(保有者)からその営業秘密を示された場合において、不正の利益を得る目的で、又はその保有者に損害を加える目的で、その営業秘密を使用し、又は開示する行為は、不正競争防止法上の「不正競争」に該当し、保有者は差止請求や損害賠償請求を行うことができます。但し、営業秘密とは、「秘密として管理されている生産方法、販売方法その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報であって、公然と知られていないもの」をいい、この要件を満たすためには、当該情報にアクセスできる者が制限され、かつ当該情報にアクセスした者に当該情報が営業秘密であることが認識できるようにされていること(秘密管理性)が必要とされているため、同法に基づく請求は必ずしも容易ではありません。不法行為による損害賠償請求も実務上は損害の立証等が難しい場合が多いため、重要な情報の提供の前にきちんとNDAを締結するようにすることがやはり必要です。
  • システム開発を外注する際に、納入物をどの程度特定すべきなのでしょうか。
    納入物の内容は外注先の開発義務を確定する事項ですので、できる限り明確、詳細に定めることが望まれます。しかし、実務では契約締結段階で完成品の詳細な仕様等が確定できないケースも多く、作業を進める中で特定されていく部分があることも否めません。その点を考慮して、開発を仕様確定、中間成果物、最終成果物等の数段階に分け、代金もそれぞれに分けて規定することで、各段階の開始時において当段階の成果物を特定できるようにする場合があります。
  • 社内の人員でシステム開発業務が間に合わないため、外部にシステム開発支援を委託しますが、業務内容や代金という基本的な条件のほかに、特に注意することはありますか。
    このような開発支援委託では、外注先が一定の成果物の完成を約束する請負契約ではなく、一定のマンパワーを提供して一定期間業務を支援する契約形態が想定されます。このような契約では、外注先は基本的には請負契約のような完成物についての瑕疵担保の責任を負いません(但し、善管注意義務違反等の責任を負う可能性はあります。)。実質的に外注先が殆どの業務を行い、それなりの代金も支払うというケースであれば、このような業務支援でなく、システム開発契約(請負の形態)の形をとるべきでないかを検討する余地があります。
    また、業務支援契約の場合でも、業務の過程で知的財産権が発生すると考えられるため、システム開発契約と同様に知的財産権の帰属に関する定めをおく必要があると考えられます。
  • システム開発を外注する際の知的財産権に関する取り決めについて注意すべき点を教えてください。
    想定している成果物の利用のために必要な知的財産権を取得することが重要です。著作権その他の知的財産権は、その著作等を行った者に原始的には帰属するのが原則ですので、契約書において自社への知的財産権の移転を明記しておく必要があります。またこの際、著作権法第27条及び第28条の権利(翻案権及び二次的著作物の利用に関する原著作者の権利)は、著作権法上、譲渡する旨明記しないと権利移転の対象外と推定されてしまうため、それらの譲渡についても明記しておく必要があります。また、著作物には著作権のほか、著作者人格権(公表権、氏名表示権及び同一性保持権)があり、これは法律上譲渡できないため、外注先が著作者人格権を行使しない旨を規定しておくことも必要となります。
  • システム開発の外注先から、成果物に関する知的財産権を譲渡したくないと言われているのですが、どのように対応すべきでしょうか。
    権利の譲渡が難しい場合には、想定する成果物の利用に必要な使用の許諾を受けることになります。設問のケースとして典型的なのは、外注先が従前から保有している知的財産権の場合ですが、これについてはやむを得ない面があるため、成果物の利用に必要な範囲での使用許諾を認めてもらうのが通常の対応です。開発過程で生じた知的財産権については、基本的に譲渡してもらうべきところですが、貴社が一定期間成果物を使用するだけである場合には、当該使用に必要な使用許諾を受けるという選択もあり得ます。このほか、システムに組み込まれているルーチン、モジュール類を他にも流用するために外注先において権利留保を主張するケース等があり、ケースに応じて合理的に対応していくことになります。
  • 外注先に作成してもらったシステムに欠陥がある場合、外注先に対応してもらえるのでしょうか。
    契約書において瑕疵担保の定めがある場合はそれに従うことになります。定めがない場合、原則として請負契約に関する民法の定めに従い、成果物の引渡時から1年間、瑕疵修補の請求を行うことができます。
  • 共同研究・開発契約によって生じた発明の帰属については、どのような定めをおくことが多いでしょうか。
    研究開発における各当事者の寄与度等に応じて適切に定めるべき事項ですが、双方相応の寄与が想定されるケースでは、共有とする例が多くなります。共有の場合、持分割合を定めておくことが望ましく、均等とするケースも多いようです。また、出願やその費用負担に関する取り決め、一方に出願の意思や費用負担能力がなくなった場合の措置なども定めておくことが望まれます。更に、共有の特許について自ら実施又は第三者に実施許諾する場合のルールについても明確にしておくことが望ましいと考えられます。
  • 受託したシステム開発業務を下請に出すのですが、どのような場合に下請法が適用されるのでしょうか。
    下請法は、下請取引の種類及び自社と下請先の資本金の額に応じて適用関係が決まります。一般的なシステム開発の委託は、プログラムの作成委託に該当すると考えられますが、プログラムの作成委託については、(1)資本金3億円超の事業者が個人又は資本金3億円以下の事業者に対して委託する場合、(2)資本金1000万円超3億円未満の事業者が個人又は資本金1000万円以下の事業者に対して委託する場合に下請法が適用されることになります。
  • 下請法が適用される場合に、下請先との契約書作成にあたり注意すべき点は何でしょうか。
    下請先に対して法定の事項を記載した書面を交付する必要があるため、契約書において当該事項を記載する必要があります。具体的には、下請先から受ける給付の内容、給付を受領する日、給付内容を検査する場合の検査完了期日、代金額及び支払期日その他一定の事項を記載する必要があります。通常の契約書であれば網羅される場合が多いですが、検査完了期日は記載されないケースも多いため注意が必要です。
    また、代金の支払期日は給付の受領日から60日以内とする必要がある点にも注意が必要です。
  • 下請法に違反するとどうなりますか。
    下請先の申告等により、公正取引委員会からの立入調査等を受ける可能性があります。調査の結果、勧告や指導がなされる可能性があり、勧告は原則として公表されます。勧告に従わない場合には独禁法に基づく排除措置命令や課徴金納付命令に発展する可能性があります。
    また、発注に際しての書面交付義務違反等については刑事罰が規定されます。
    そのほか、下請法が義務づける給付受領後60日以内の代金支払を履行しない場合には、14.6%の遅延損害金が発生します。
  • 当社の研究に興味のある大手企業から資金の提供を受けて、実用化に向けた共同研究・開発契約を締結する予定です。交渉すべき基本的な条件を教えてください。
    基本的な条件として、(1)自社から提供するノウハウや特許の有無や範囲、(2)自社の研究負担の範囲(従事する人員や時間等)(3)各当事者の研究費負担の設定、(4)研究開発期間の設定、(5)成果物の権利帰属が挙げられます。特に、成果物の権利帰属については、研究開発終了後のビジネスの内容に影響するため、慎重な検討が必要です。
  • 当社の商品の拡販のため、取引先に販売代理店になってもらおうと思います。代理店契約書を作成するにあたって、まず気をつけるべきことは何でしょうか。
    販売代理店の形態は、大きく分けて売買型と仲介型に区別されるため、そのいずれとするかを決める必要があります。売買型は、商品の供給者が販売代理店に対して商品を販売し、販売代理店がその購入した商品等を顧客に販売するという形態です。仲介型は、販売代理店が開拓した顧客を商品の供給者に紹介し、供給者が顧客と契約を締結して商品を販売し、販売代理店に対して手数料を支払うものです。販売代理店契約を作成するにあたっては、根本的な事項として、上記いずれの形態とするのかをまず決める必要があります。当事者間では、マージン率などの経済的な条件は必然的に交渉されますが、基本的な契約関係として上記いずれの形態とするのかが話し合われていないケースも見受けられるため、注意が必要です。
  • 販売代理店契約における売買型と仲介型の選択はどのような観点ですれば良いでしょうか。
    売買型と仲介型の内容はQ00200にあるとおりですが、代理店側から見た大きな相違点としては、売買型では顧客に対する売主としての責任を伴い、仲介型では単なる仲介者に過ぎないこと、売買型では基本的に顧客に対する販売額が売上となるのに対し、仲介型では手数料分のみが売上となることが挙げられ、代理店がどのような希望を有するのかに応じて形態を検討することになります。商品の供給者側の立場としては、売掛先(信用の供与先)が売買型では代理店、仲介型では顧客となり、また顧客との取引関係は売買型では代理店側に形成されることになり、それらの点を考慮して検討することになります。
  • ソフトウェア製品の販売代理店契約を締結する際に、特に留意すべき点はあるでしょうか。
    ソフトウェア製品の利用にはライセンスを伴うため、そのライセンスの契約当事者をどうするかを決めておく必要があります。売買型の販売代理店の場合、ソフトウェアを格納したCD等の製品自体は、供給者→販売代理店→顧客と売却されていくことになりますが、ソフトウェアのライセンスについては、供給者から直接顧客に対して許諾するケースが多くなっており、市販のパッケージソフトウェアも通常そのようになっています。もっとも、ビジネスの内容によっては、供給者から販売代理店にライセンスを許諾し、販売代理店から顧客にサブライセンスという形でライセンスを許諾する形態が良い場合もあるため、想定する事業の内容を踏まえて検討する必要があります。
  • 販売代理店契約で独占禁止法に気をつける必要があると聞いたのですが、どのような点でしょうか。
    再販価格の拘束と販売地域の制限が問題になりやすい点となります。
    代理店の再販価格を拘束することは、不公正な取引方法として基本的に禁止されるため、何らかのコントロールをしたいとしても、参考価格を提示する等に留める方が安全です。
    販売地域の制限については、市場において一定のシェアを持つメーカー等が特定の地域外への販売を厳格に禁止する場合や、販売地域の制限が商品価格の維持につながるような場合に、不公正な取引方法に該当するものと解されています。
    詳細については、公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」が参考になります。
  • ソフトウェアを当社の製品に組み込むことについて、ソフトウェアメーカーとライセンス契約の交渉を行います。基本的な条件としてまず注意すべき重要なポイントは何でしょうか。
    基本的な条件として、(1)利用態様(使用、複製、改変、送信等、ソースコード利用の有無等)、(2)独占・非独占の別、(3)再許諾(サブライセンス)の可否、(4)ライセンス期間の設定が重要です。製品への組込に際して当該ソフトウェアをどのように利用し、組み込まれた製品をどのように利用や販売するのかを考慮して、これらの条件を設定することが必要です。また、販売した製品がライセンス期間終了後も顧客に使用されるようなものであれば、そのような使用を可能とする規定を入れておくことも重要です。なお、ライセンス料については別のQ&Aで解説する予定です。
  • ライセンス料はどのような条件とすることが多いでしょうか。
    主要な形態として、契約締結時の一括払いの実施料などの定額ライセンス料の形態、一定期間ごとに収益に応じたロイヤリティを支払う形態、ライセンスを利用した事業の段階等により設定されたマイルストーン支払の形態などがあり、これらを折衷したものや、最低実施料などの条件が組み合わされる場合などがあります。いずれが良いかは、見込まれる収益や具体的な金額及びロイヤリティ率等に応じて個別に判断することになります。なお、長期間分のライセンス料をまとめて前払いするケースでは、期間途中でライセンスが終了した場合の返金の有無等の取扱いを明確にしておく必要性が高くなります。
  • 特許のライセンス契約で、ライセンシーが開発した改良技術を無償で当社に譲渡させる旨を規定したいのですが、問題ないでしょうか。
    独禁法上問題となる可能性があります。独禁法上、いわゆる拘束条件付取引(相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること)は不公正な取引方法として禁止されます。ライセンシーに改良技術の無償譲渡義務を課すことは、技術市場又は製品市場におけるライセンサーの地位を強化し、また、ライセンシーの研究開発意欲を損なうものであり、また、通常、このような制限を課す合理的理由があるとは認められないので、原則として不公正な取引方法に該当するものと解されています。特許権の実施や許諾は原則として特許権者が自由に行えるものですが、取引条件によっては独禁法に違反することに注意が必要です。詳しくは、公正取引委員会の「知的財産の利用に関する独占禁止法上の指針」をご参照下さい。
  • システム開発に関して知見を有する知り合いから、コンサルティングという形で助言を受けるつもりなのですが、この場合のコンサルティング契約について気をつける点は何でしょうか。
    コンサルティング契約は、業務の内容が不明確となりやすく、代金に見合っているのか問題になる場合があるため、業務内容をできるだけ明確にすることが望まれます。とはいえ、明確化にも限界があることから、必要性が低下した場合には契約を終了できるように、中途解約の権利を定めておくことも考えられます。また、提供を受けたアイデア等に関して後でもめないよう、知的財産権の帰属や使用許諾についても定めておくことが望ましいと考えられます。
  • 建物を賃貸するにあたり、賃貸期間が終了したら必ず目的物を返還して欲しい場合には、定期建物賃貸借契約を締結するといいと聞きましたが、どのような制度なのでしょうか。
    借家借家法の適用のある通常の建物賃貸借においては、期間満了時の更新拒絶、あるいは解約申入れの際に正当事由の有無が問題となります(借地借家法第28条)。しかし、定期建物賃貸借においては、「契約の更新がないこととする旨」を定めることができるとされており、上記のような正当事由条項の適用を排除することが認められています(借地借家法第38条第1項)。従って、賃貸人は、契約で定めた期間の満了により確定的に契約を終了させ、目的物の返還を請求することが可能となります。
    そして、このような定期建物賃貸借契約を締結しようとする場合には、公正証書による等書面によって契約をする必要があり(借地借家法第38条第1項)、かつ、あらかじめ、建物の賃借人に対し、契約の更新がなく、期間の満了により建物賃貸借が終了することについて、その旨を記載した書面を交付して説明しなければなりません(借地借家法第38条第2項)。また、契約期間が1年以上である場合には、建物の賃貸人は、期間の満了の1年前から6ヶ月までの間に、建物賃借人に対し、期間の満了により建物賃貸借が終了する旨の通知をしなければ、その終了を建物賃借人に対抗することができないものとされているため留意が必要です(借地借家法第38条第4項本文)。
  • 建物賃貸借において、賃料の減額をしない旨を規定することにより賃借人の賃料減額請求権を排除することは可能でしょうか。
    借地借家法第32条は、建物の賃料が、租税その他の負担の増減、土地・建物の価格の上下、その他の経済事情の変動により、または相場の変動により近隣の同種の建物の賃料に比べて著しく不相当となったときは、賃料増減請求権が認められるものとしています。そして、かかる規定は借地借家法第37条の片面的強行法規規定としては列挙されていませんが、「契約の条件にかかわらず」認められるものとされているため、強行法規的性格を有するものと解されています。従って、賃料の減額をしない旨を規定しても、そのような特約により賃借人の賃料減額請求権を排除することはできないと考えられます。

    他方、賃料の増額請求権については、一定期間賃料の増額をしない旨の特約がある場合には、その期間中は、賃料増額請求権を排除することが法律上認められています(借地借家法第32条第1項但書)。また、定期借家契約においては、契約中に「借賃の改定に関する特約」が設けられている場合には、賃料増額・減額請求権は認められないこととされています(借地借家法第38条第7項)。
  • 賃貸借契約に定めがないにも関わらず賃貸人が更新料を請求してきた場合、賃借人は更新料を支払わなければ更新を主張することはできないのでしょうか。
    更新料とは、賃貸借契約が更新される際に、更新の対価として支払わる一時金のことをいいますが、民法も借地借家法も更新に際して賃借人が更新料を支払わなければならない旨の規定を定めているわけではありません。また、判例も、賃借人が当然に更新料を支払わなければならない旨の慣習法又は事実たる慣習は存在しないとしています(最判昭和51・10・1)。従って、賃貸借契約において更新料支払の規定がない場合には、賃借人は更新料を支払うことなく更新を主張することが可能であると考えられます。
  • フランチャイズ契約に記載すべき事項について、法令上のルールはあるのでしょうか。
    FC契約に関係する主たる法律としては、中小小売商業振興法と独占禁止法があります。中小小売商業振興法は、小売商業におけるフランチャイズ・システムについて、契約締結時における本部の加盟店に対する書面交付による説明義務を規定しています。また、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(公正取引委員会)により、不公正な取引方法として独占禁止法違反となる場合が示されているほか、本部の加盟店に対する情報開示についての考え方が示されています。フランチャイズ契約は、これらの法令上説明義務が課される事項を含める形で作成するのが通常です。
  • 法令上フランチャイザーに説明すべき事項をフランチャイズ契約に記載した方が良いということですが、中小小売商業振興法ではどのような事項が説明義務の対象となっているのでしょうか。
    中小小売商業振興法第11条は、次のような事項について書面による説明義務を規定しています。
    (1)加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
    (2)加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
    (3)経営の指導に関する事事項
    (4)使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
    (5)契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
    (6)前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項
    上記(6)の事項として、中小小売商業振興法施行規則10条では、フランチャイザーに関する事項や金銭の授受等の契約条件などに関する17の項目が規定されており、同規則11条で具体的な記載方法が詳細に指定されています。
    したがって、上記各説明事項を網羅する形で説明書面を作成し、そのうち契約条件になる事項についてフランチャイズ契約に網羅的に記載することになると考えられます。
  • 独占禁止法上は、どのような事項をフランチャイザーに対して説明するものとされているのでしょうか。
    また「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」(公正取引委員会)は、次のような事項について開示が的確に実施されることが望ましいとしています。
    (1)加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
    (2)加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
    (3)加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件
    (4)加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
    (5)本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
    (6)事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容
    (7)契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項
    (8)加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容
  • 個人ユーザー向けサービスの利用規約について、当社の損害賠償責任を免責する条項を入れたいのですが、問題はないでしょうか。
    利用規約での免責条項はよく見受けられますが、個人ユーザーとの契約関係は消費者契約法が定める消費者契約に該当する場合が多く、その場合には損害賠償の免責条項は制限を受けます。大まかに言うと、事業者の一切の賠償責任を免責する完全免責条項は無効となり、一部の賠償責任を免責する条項は、事業者に故意又は重過失がある場合に無効(=軽過失に留まる場合には有効)となります。したがって、消費者契約に該当する利用規約では、単に賠償責任を負わない旨を定めるのでなく、一部免責条項として賠償額の上限や賠償する損害の範囲の制限を規定しておくのが一般的な対応となります。
  • コミュニティサイトの利用規約について、不正な投稿等に対する対応に関してはどのような定めをおいておけば良いでしょうか。
    違法な情報、他人の権利を侵害する情報、サービスの運営を妨害する情報などの投稿については禁止とし、それに反した場合には投稿の削除やユーザー登録取消等の措置を講じることができる旨定めておくのが通常です。なお、実際に問題となる投稿がなされ、ユーザー間でのトラブル等が生じた場合には、いずれのユーザーに非があるのか判然としないことも多く、サイト運営会社としては板挟みの状況になる懸念もあります。かかる場合の具体的な対応については個別の状況に応じて適切に判断する必要がありますが、少なくとも利用規約において禁止行為の類型を詳細に定めておくことで、利用規約違反による削除等の対処をとりやすくなるというメリットが生じます。
  • ウェブ上のサービスの利用規約を変更したいのですが、サイト上に変更した旨を掲示すれば足りるでしょうか。
    利用規約はユーザーに承認されることによって事業者とユーザーとの契約内容となります。契約の変更は原則として双方当事者の合意が必要であるため、一方的にサイトに変更を告知しただけで変更できるというものではありません。もっとも、ユーザーが変更を認識し、実体としてそれに同意したというプロセスがあれば、変更したものと評価することは可能であるため、例えば、登録メールアドレスに変更を告知するメールを送信し、①変更内容を記載するかそれを確認できるURLを表示し、②一定期間内に異議の申出又は退会しない場合には変更に同意したものとみなす旨を記載することが考えられます。この通知後一定期間内に異議を述べずにサービス利用を継続するユーザーについては、少なくとも黙示的に変更に対する同意があったものと考える余地があります。もっとも、突然このようなメールを送信されたユーザーにとってはやや唐突であり、変更の有効性を争われるリスクもあることから、予め利用規約において上記のようなプロセスによる規約変更権の規定を設けておくべきであり、それによって変更の有効性を争われる可能性を低くすることが考えられます。
  • インターネットサービス等における海外の利用者との契約関係において日本の法律が適用されるのでしょうか。
    海外に居住する消費者との間の契約において、どの国の法規が適用されるかという問題については、法の適用に関する通則法(以下「通則法」といいます。)が、以下のようなルールを定めています。①契約において準拠法の選択がない場合には、原則として「消費者の常居所地法」を適用する(通則法第11条第2項)。②契約において準拠法の選択がある場合には、選択した地の法の適用が認められる(通則法第7条)。但し、「消費者がその常居所地法中の特定の強行規定を適用すべき旨の意思を事業者に対し表示したとき」は、その強行規定をも適用する(通則法第11条第1項)。従って、例えばインターネットサービス等において海外のA国に居住する者がサービスを利用した場合、利用規約に準拠法の定めがない場合には、当該利用者との間ではA国の法規が適用されることになります。一方、利用規約において準拠法を日本とする旨の規定を設けた場合には、当該利用者との間でも原則として日本法が適用されることになりますが、当該利用者はA国の消費者保護法規中の特定の強行規定の適用を主張して、その強行法規による保護も受けることができることになります。
    但し、上記の説明は日本の裁判所に提訴された場合を前提としています。外国において提訴された場合には、原則として当該国のルールに従って処理されることになるため、最終的には当該国の法律の専門家のアドバイスを受けることが必要となります。
  • 売買契約書を作成するにあたって、対象物の所有権の移転時期についてどのように定めればよいでしょうか。
    所有権の移転時期については民法上の原則的ルールがありますが、疑義を避けるために契約書で明確にしておくことが望ましいと考えられます。一般的には、自己が所有権を譲り受ける側である場合には、対象物の納入時など早い段階で所有権を移転させる方がよく、自己が所有権を譲り渡す側である場合には、対象物の検収が完了し、対価の支払いを受けたときのように遅い段階で所有権を移転させる方がよいと考えられます。
  • 契約において損害賠償の範囲についてはどのような規定を設ければいいでしょうか。
    賠償すべき損害の範囲と金額的な上限の設定がポイントとなります。例えば、開発業務の受託者側のように、相手方よりも自己の方が損害賠償請求される可能性が高い場合や賠償額が高額になる可能性が高い場合には、①賠償の範囲を通常かつ直接の損害に限定すること、②賠償額の上限を委託代金額にすることなどが考えられます。他方、自己が相手方に対し損害賠償請求する可能性の方が高いような場合や大きな損害発生の可能性があるような場合には、直接的損害及び通常損害のみならず、逸失利益、事業機会の喪失、データの喪失、事業の中断、その他の間接的、特別的、派生的又は付随的損害も含めて賠償する旨を規定しておくことが考えられます。
  • 契約の相手方から反社会的勢力の排除に関する契約条項の追記を求められるケースがありますが、これはどのような趣旨なのでしょうか。
    反社会的勢力との関与による不祥事の多発を受けて、証券取引所の規則において、上場会社の反社会的勢力の関与禁止が規定されるようになりました。上場審査においても、「新規上場申請者の企業グループが反社会的勢力による経営活動への関与を防止するための社内体制を整備し、当該関与の防止に努めていること及びその実態が公益又は投資者保護の観点から適当と認められること」が審査されることになっています(上場審査等に関するガイドラインⅡ6)。
    また、近時施行された東京都暴力団排除条例は、暴力団と交際すること自体を禁止する内容となっており、契約書に一定の暴力団排除条項を記載することが努力義務とされています。
  • 東京都暴力団排除条例では、契約書に暴力団排除の条項を記載するよう規定されていると聞いたのですが、どのような内容なのでしょうか。
    以下のような内容を契約書に定めるよう努めるものとされています。努力義務であり、罰則があるものではありませんが、これに沿った内容を規定しておくことが望ましいと考えられます。
    (1) 契約の相手方又は代理若しくは媒介する者が暴力団関係者であることが判明した場合には、無催告で契約を解除できること
    (2) 相手方の下請人など相手方が締結する関連契約の相手先等が暴力団関係者であることが判明した場合には、関連契約の解除等の措置を相手方に求めることができること
    (3) (2)の求めを正当な理由なく拒否した場合は、契約を解除できること。
  • 契約書や規約において裁判管轄についての規定を設けることにはどのような意味があるのでしょうか。
    契約で裁判管轄の定めがない場合には、民事訴訟法の定める法定管轄に従うことととなり、例えば、法人に対する財産権上の訴えは、被告である法人の主たる事務所又は営業所を管轄する裁判所(民事訴訟法第4条第1項、第4項)又は義務履行地を管轄する裁判所(民事訴訟法第5条第1号。金銭債務の場合、原則として債権者の住所となります。)に提起することになります。契約当事者の所在地が離れている場合、契約内容や訴えの内容によって、相手方の所在地に法定管轄が認められ、そちらの裁判所に提訴される可能性があります。そのような事態を避けるため、できるだけ契約において自己に便利な場所の裁判所を管轄裁判所として定めることが望まれます。
  • 契約書や規約において東京地方裁判所を管轄裁判所として規定する場合、書き方について注意する点はありますか。
    管轄の合意には、特定の裁判所だけを管轄裁判所とし、法定管轄を排除する合意である専属的合意と、法定管轄の他に更に管轄裁判所を付け加える合意である付加的合意の2種類があります。よって、東京地方裁判所以外への提訴は認めたくないのであれば、東京地方裁判所が専属的管轄裁判所である旨を明記する必要があります。
  • 契約書に目的物の引渡費用の負担について記載がない場合には誰が負担することになるのでしょうか。
    民法は、不特定物の引渡しは債権者の現在の住所においてしなければならないと定めており(民法第484条)、また弁済の費用は原則として債務者の負担となることを定めています(民法第485条)。従って、売買契約等において目的物の引渡場所や運搬費用についての定めを置かない場合、売主は買主の所在地において目的物を提供しなければならず、その運搬費用も売主の負担となる可能性が高くなります。運搬費用を買主に負担してもらいたいと考える場合には、その旨を契約書において明確に規定しておく必要があるため注意が必要です。
  • 契約書に代表取締役ではなくて部長がサインをしても大丈夫でしょうか。
    会社が当事者となる契約を締結する場合には、会社を代表して契約書にサインをする者が契約締結権限を有するのかが重要になります。この点、会社の代表取締役には法により会社を代表する権限が与えられているため(会社法第349条第3項)、多くの場合は代表取締役のサインをもらうのが安全であるといえます。
    もっとも、部長や課長といった会社の使用人も会社からの委任等により契約締結権限を与えられていることがあります(会社法第14条第1項)。但し、このような契約締結権限が与えられているかは外部の人間は通常知ることができないため、部長や課長といった会社の使用人にサインをしてもらう場合、重要な契約であれば委任状等により契約締結権限を慎重に確認した方が安全と考えられます。
  • 「○○○は両者の協議により定める」といった条項を設けることになにか問題があるでしょうか。
    契約書において「○○○は両者の協議により定める」といった条項が設けられていることがありますが、このような条項は、協議をしたが合意に至らない場合にどのように取り扱うことになるのかが不明確になる懸念があります。業務提携の初期段階において締結される覚書等のように、未確定の事項が多い段階においてこのような協議条項を設けるのはやむ得ない面がありますが、具体的な取引条件が確定した段階で締結される契約において、このような協議条項が混入しているような場合には、本来定めるべき重要な事項について法律関係が不明確になってしまうことや、自社に不利な部分だけが確定していて、有利に働く部分については協議が必要になってしまうということも懸念されます。協議条項はそのようなリスクを考慮の上で検討するべきと考えられます。
  • 契約書で代金について記載する場合、税込税別の表示をする必要があるでしょうか。
    消費税法上、消費者にして価格表示をするときは総額表示が義務付けられていますが、事業者間で締結される取引については総額表示義務の対象にはなりません。従って、事業者間で締結される契約書の代金表示に消費税等の表示が記載されていないと、後に税込表示なのか税別表示なのかで紛争が生じる可能性があります。このような紛争を防止するため、契約において代金について記載する場合には、税込表示なのか税別表示なのかを明記した方が良いと考えます。
  • 契約書に契約当事者でない者の義務を記載した場合にその者に義務は生じるでしょうか。
    契約書において契約の当事者となっていない者の義務に関する条項が設けられていることがあります。しかし、契約により義務が生じる根拠は、契約の当事者として契約締結の意思表示をしたことに求められますので、契約当事者以外の者がこのような条項により義務を負うものではありません。例えば、A社とB社が締結した契約書に、「B社が債務を支払わないときは、C社が債務を支払う」といった条項がある場合、たとえC社がB社の子会社であったとしても、それだけでC社に義務が生じることにはなりません。C社に義務を生じさせたいのであれば、ABCの3者を当事者とする契約書を作成する必要があると考えます。
    なお、A社とB社との契約において、C社に一定の義務の引受を条件に一定の権利を付与する旨を規定した場合に、C社が後日これを受け入れる意思表示をした場合には、いわゆる第三者のためにする契約としてC社が有効に権利義務を取得する可能性があります(民法537条)。
  • まだ契約を締結していない準備段階において、交渉を一方的に破棄することに何か責任が生じることがあるでしょうか。
    まだ契約を締結していない段階においても、契約締結の準備段階に入った当事者は、相手方に対し損害を被らせないようにする信義則上の義務を負い、これに違反して相手方に損害を負わせた場合には、その賠償責任を負う場合があるものと解されています。これを契約締結上の過失責任といいます。従って、まだ契約締結を締結していない準備段階であったとしても、交渉が一定程度進み、契約成立への期待と信頼をもとに相手方が取引実施の準備をしているような段階において、契約交渉を一方的に破棄した場合等には、これにより相手方に生じた損害を賠償する責任が発生することがあるので注意が必要です。
  • 免責の定めは無効になる場合があるそうですが、それはどのような場合ですか。
    消費者と事業者との間で締結される消費者契約においては(消費者契約法第2条第3項)、以下に挙げる条項は無効となります(消費者契約法第8条)。
    ①債務不履行により生じた損害につき、責任の全部を免除する条項(第1号)。
    ②故意又は重大な過失による債務不履行により生じた損害につき、責任の一部を免除する条項(第2号)。
    ③不法行為により生じた損害につき、責任の全部を免除する条項(第3号)。
    ④故意又は重大な過失による不法行為により生じた損害につき、責任の一部を免除する条項(第4号)。
    消費者契約以外についても、免責の定めが強行法規に反する場合には無効となります。また、相手方に過度の負担を負わせ、あまりに酷な場合には、公序良俗違反等の一般条項により、免責の定めが無効となる可能性があります。
  • 契約書に「違約金」の定めがある場合、その額以上に損害賠償を請求することはできないでしょうか。
    契約において義務違反の場合には一定額の金銭を支払うことをあらかじめ約束することがあり、このような金銭を違約金といいます。違約金の性質は、賠償額の予定や違約罰など種々のものが考えられますが、民法は違約金を賠償額の予定と推定するものとしています(民法第420条第3項)。賠償額の予定においては、実際の損害額が予定額を上回ったとしても増額を請求することができないため、増額を請求する場合にはそう主張する者が当該違約金が賠償額の予定ではないことを主張・立証しなければなりません。従って、違約金でカバーされない実際の損害額を請求したいと考えるのであれば、契約書において「違約金の額を超える損害が発生したときは、その超過額を請求することができる」等と規定しておいた方が良いと考えられます。
  • 口約束はしたものの、契約書を締結していない場合には、契約は成立していないとの理解でよいでしょうか。
    日本においては、契約の成立要件は意思表示の合致であるため、書面のない口約束であっても、契約は成立します(但し、例外として、保証契約等書面での締結が要求されるものもあります。)。したがって、書面がないため契約不成立という主張は理論的には成り立ちません。とはいえ、紛争になった場合には、書面がなければ契約成立の事実や内容を証明することが困難になるため、実務的には契約書を交わしておくことが重要です。
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